同盟
ある日。
エキドナ邸に、銀翼の黎明の五人が呼ばれていた。
「わざわざ呼んで悪かったわね」
リゼットが五人を見回す。
「いえ、こちらこそお招きいただきありがとうございます」
ガレスが頭を下げる。
その隣では、セリナが少し緊張した様子で周囲を見回していた。
「それで、今日はどういったお話なんでしょうか?」
クロードが尋ねる。
「ええ」
リゼットが微笑む。
「あなたたちに、提案があるの」
「提案?」
「同盟よ」
「……同盟?」
五人が顔を見合わせる。
「そう」
リゼットは頷いた。
「私たちエキドナと、銀翼の黎明で正式に同盟を結ばない?」
「なるほど……」
ガレスが考え込む。
「具体的には、どういう形になるのでしょう?」
「あなたたちに給料を払うとか、そういう話ではないわ」
「では?」
「エキドナの施設を、あなたたちにも使ってもらうの」
リゼットが説明する。
「それから、あなたたち専用の装備をこちらで用意することもできるわ」
「専用装備……」
ヴァルトが反応する。
「必要なら、修理や改造も依頼していい」
「それはありがたいですね」
クロードが頷く。
「他にも、エキドナが持っている施設や設備を使ってもらって構わないわ」
「そこまで?」
ミレイユが驚く。
「ええ」
リゼットは続ける。
「それと、今までは本部を訪ねてもらうときには、基本的に事前にアポイントを取ってもらっていたでしょう?」
「はい」
「それも今日からなしでいいわ」
「……え?」
「この本部には、いつ来てもいい」
リゼットが笑う。
「依頼があれば、その場で相談してくれて構わないわ。装備のことでも、冒険のことでも、何か困ったことがあれば頼ってちょうだい」
「それは……」
ガレスが言葉を失う。
銀翼の黎明にとって、エキドナはすでに特別な存在だった。
装備の品質。
魔道具。
回復や補給。
そして、マドカたちとの関係。
それらを考えれば、今回の提案は想像以上のものだった。
「そりゃ、とんでもない条件だな」
ヴァルトが呟く。
「ええ! 最高じゃない!」
セリナがぱっと顔を明るくした。
「だって、マドカにいつでも会えるんでしょ?」
「そこかよ」
ガレスが苦笑する。
「でも、装備も依頼できるなら断る理由もねぇしな」
クロードも頷く。
「エキドナの施設を使わせてもらえるなら、冒険者としてもかなり助かります」
「もちろん、無理に受けてもらう必要はないわ」
リゼットが言う。
「ただ、私たちもあなたたちを信頼しているからこそ、こういう提案をしているの」
「……分かりました」
ガレスが立ち上がる。
「銀翼の黎明として、エキドナとの同盟を受けさせてください」
「ええ」
リゼットも笑った。
「これからもよろしくね」
「こちらこそ」
こうして。
エキドナと銀翼の黎明は、正式に同盟関係となった。
今までのように、依頼があるたびに訪ねるだけの関係ではない。
これからはエキドナの本部を、銀翼の黎明も自由に利用できる。
そして――。
「それじゃあ、もう一つ」
リゼットが言った。
「今回、あなたたちには会ってもらいたい人がいるの」
「会ってもらいたい人?」
「ええ」
「誰ですか?」
セリナが尋ねる。
リゼットは少しだけ意味ありげに笑った。
「エキドナのスポンサーみたいな人よ」
「スポンサー?」
「そうね」
マドカが横から口を挟む。
「正確には、スポンサーっていうより……」
「まぁ、似たようなものだな」
リゼットが苦笑する。
「とにかく、一度会っておいた方がいいわ」
「分かりました」
ガレスが頷く。
「では、その方のところへ?」
「そうよ」
リゼットが部屋の中央を見る。
そこには、一つの魔法陣が描かれていた。
「これを使うわ」
「転移陣……?」
「ええ」
リゼットが魔法陣の上に立つ。
「向こうにいるわ」
銀翼の黎明も続いて魔法陣へ入る。
「では、行きましょう」
魔法陣が淡く光った。




