カトリーヌの試練
次の部屋へ入ると、正面の壁に大きなスクリーンが現れた。
そこに映し出されたのは、カトリーヌだった。
『それでは、始めます』
いつものように淡々とした表情で告げる。
「……カトリーヌか」
ガレスがスクリーンを見上げる。
『この試練では、私が問題を出します。指名された方は答えてください』
「問題?」
『はい』
スクリーンのカトリーヌが少し間を置く。
『第一問。ガレスさん』
「おう」
『1+3は?』
「…………4」
『正解です』
「…………」
ガレスが黙る。
セリナたちも黙る。
『では、次。セリナさん』
「はい」
『12-5は?』
「7です」
『正解です』
また静寂が訪れる。
ガレスが隣を見る。
「……なあ」
「何?」
「俺たち、何やらされてんだ?」
セリナも困ったようにスクリーンを見る。
『次。クロードさん』
「はい」
『3×7は?』
「21」
『正解です』
『……次。ヴァルトさん』
「俺か」
『48÷6は?』
「8」
『正解です』
『次。ミレイユさん』
「はい」
『15+27は?』
「42です」
『正解です』
五人が顔を見合わせる。
全員、まだ余裕だった。
『……』
スクリーンのカトリーヌが少しだけ沈黙する。
『こんなの、出来て当然よね』
「おい」
ガレスが即座に反応した。
『では、続けます』
「無視かよ!」
カトリーヌは何事もなかったように次の問題を表示する。
『ガレスさん。24×13は?』
「……えーっと」
さっきまでとは明らかに違う空気になった。
「24×10が240で……残りが72だから……312!」
『正解です』
「よし!」
『次。セリナさん。125-78は?』
「……47」
『正解です』
『クロードさん。364÷14は?』
「……26」
『正解です』
『ヴァルトさん。17×18は?』
「306……いや、306だ」
『正解です』
少しずつ、全員の表情が真剣になっていく。
最初は余裕だった。
だが、問題が進むにつれて、考える時間が長くなっていた。
『次。ミレイユさん』
「はい」
『246-139は?』
「……107です」
『正解です』
「ふぅ……」
ミレイユが小さく息を吐く。
その様子を見て、ガレスが苦笑する。
「なんだよ。普通の算数じゃねぇか」
『そうですね』
「……ん?」
『ですが、ここから少し難しくなります』
カトリーヌの声は相変わらず真面目だった。
スクリーンに新しい問題が表示される。
『ガレスさん。375×24は?』
「…………」
「おい、ガレス」
「今やってる!」
ガレスは腕を組み、必死に頭の中で計算を始める。
「375×20が7500……残り1500……9000!」
『正解です』
「よっしゃ!」
『では、セリナさん』
「はい」
『846÷18は?』
「…………47?」
『正解です』
「よかった……」
次々と問題が出される。
誰かが答えれば、次の人が指名される。
間違えれば、その場で不合格というわけではない。
ただし、一定数の正解を出すまで先へ進めない。
そして問題は、少しずつ難しくなっていく。
『クロードさん。1575÷25は?』
「63……?」
『不正解です』
「えっ」
『正解は63です』
「……合ってるじゃねぇか!」
『失礼しました。正解です』
「おい!」
思わず全員から笑いが起こった。
スクリーンのカトリーヌは、いつも通り真面目な顔をしている。
『では、次の問題です』
「切り替え早ぇな!」
そんなやり取りを繰り返しながら、五人は一問ずつ問題を解いていく。
最初は誰も試練だと思っていなかった。
だが、気が付けば全員が真剣だった。
そして最後の問題。
『ミレイユさん』
「はい」
『最後の問題です』
表示された数字を見て、ミレイユが目を細める。
『3240÷36は?』
「…………」
少し考える。
「90……です」
『正解です』
スクリーンに、
『試練クリア』
の文字が表示された。
「終わった……」
ガレスがその場に座り込む。
「最初の1+3は何だったんだよ……」
『簡単な問題から始めただけです』
「いや、簡単すぎるだろ!」
『ですが、全員正解しました』
「そりゃそうだ!」
カトリーヌは少しだけ首を傾げる。
『では、次の部屋へ進んでください』
「お前、絶対楽しんでるだろ……」
『……?』
最後まで、カトリーヌは真面目な顔のままだった。




