ティニアの試練
「では、次の試練を開始します」
銀翼の五人が部屋へ入る。
今度の部屋は、とにかく広かった。
草の生えた場所もあれば、大きな岩もある。
木の根元や石の隙間まであり、見渡しただけでは何があるのか分からない。
「……何をするんだ?」
ガレスが周囲を見回す。
すると、正面の画面にティニアが映し出された。
「あんたたち!」
いきなりティニアが叫ぶ。
「私の指輪落としちゃったから探しなさい!」
「……指輪?」
「そうよ!」
ティニアが腕を組む。
「この中のどこかに落ちてるから、ちゃんと探して!」
「どのくらいの大きさだ?」
クロードが尋ねる。
ティニアは少し考えてから、
「これくらい」
画面の中で指先を合わせる。
「……小さくないか?」
「妖精の指輪なんだから当然でしょ!」
「いや、見つかるのかこれ……」
ガレスが呟く。
「見つけなさい!」
ティニアはそれだけ言うと、画面の端へ移動した。
「私は見てるから!」
「見てるだけかよ……」
「当たり前でしょ!」
銀翼は広い部屋へ散らばった。
草をかき分ける。
岩の周囲を調べる。
木の根元を見る。
「ないな……」
「こっちもない」
「この辺りは全部見たぞ」
それでも指輪は見つからない。
「あんたたち、ちゃんと探してる!?」
画面のティニアから声が飛ぶ。
「探してるよ!」
「じゃあ見つけなさい!」
「無茶言うな!」
ガレスが叫ぶ。
しばらくして、五人はかなりの範囲を調べ終えた。
「……見つからない」
クロードが呟く。
「まだ探してない場所がある」
セリナが指差す。
その先には大きな岩があった。
「行ってみよう」
五人が移動する。
ガレスが岩の周辺を調べる。
「ここもないな」
一歩後ろへ下がる。
その瞬間――。
**パキッ。**
「……?」
ガレスが止まった。
「今、何か踏んだか?」
「ガレス?」
全員が足元を見る。
ガレスがゆっくり足を上げる。
そこには――。
小さな指輪があった。
ただし。
ぺしゃんこだった。
「…………」
「…………」
画面のティニアも固まっている。
数秒の沈黙。
「あああああああああああああ!!」
「うわっ!?」
ティニアの絶叫が響いた。
「あんたらぁぁぁぁぁ!!」
「え、いや、待て!」
「私の指輪ぅぅぅぅ!!」
「見えなかったんだよ!」
「言い訳するなぁ!!」
ティニアが画面の中で頭を抱える。
「せっかく探させたのに!」
「いや、探してたからこうなったんだろ!」
「不合格!!」
「ええ!?」
「弁償しなさいよ!!」
「ダンジョンの試練で弁償ってあるのか!?」
ガレスが叫ぶ。
ティニアは怒ったまま腕を組む。
「知ったことじゃないわ!」
そして画面が消えた。
「……」
銀翼の五人は呆然と立ち尽くす。
しばらくして、無機質な声が響いた。
『再試行します』
「再試行!?」
ガレスが叫ぶ。
『指輪を探してください』
「今度こそ絶対踏まないぞ……」
五人が慎重に歩き始める。
今度は足元を確認しながら、一歩ずつ進む。
「ここにはない」
「岩の周辺も大丈夫」
「草の中は?」
「ゆっくり調べろ」
さっきとはまるで違う。
全員が、地面を凝視している。
「……あ」
セリナが声を上げた。
「どうした?」
「これ……」
草の隙間。
小さな光が見えた。
「指輪だ!」
全員が集まる。
だが、今度は誰も踏まない。
クロードが慎重に草をかき分ける。
「……これだ」
小さな指輪を拾い上げる。
その瞬間、画面にティニアが現れた。
「それよ!」
「よし!」
ガレスが拳を握る。
「今度は壊してないぞ!」
ティニアは指輪を確認するように画面越しに眺める。
「……ふん」
そして、
「合格!」
『――試練クリア』
「やった!」
銀翼の五人から歓声が上がる。
画面のティニアは満足そうに腕を組んだ。
「最初からそうやって探しなさいよね!」
「いや、最初は見えなかったんだって!」
「うるさいわね!」
ティニアはそう言って、画面の向こうへ消えていった。
観覧室では、エキドナの面々が笑っている。
「まさか本当に踏むとはね」
マドカも笑う。
「ティニア、めちゃくちゃ怒ってたね」
「当然でしょ!」
ティニアの声が、まだどこからか聞こえてきた。
「私の指輪よ!?」
「聞こえてるの!?」
ガレスが叫ぶ。
その声に、観覧室からさらに笑い声が響いた。




