ニコラとヒナタの試練
「では、次の試練を開始します」
無機質な声が響く。
先ほどまでのシューティングとは違い、今度の部屋には二つの大きなテーブルが用意されていた。
片方には、様々な素材や道具。
もう片方には、食材や調味料が並べられている。
「……なんだ、これ?」
ガレスが首を傾げる。
すると、正面の画面に映像が映し出された。
そこに現れたのは、ニコラだった。
「やっほ~」
いつもの調子で手を振っている。
「ニコラだよ~。今日は私の実験教室~」
「実験教室……?」
セリナが画面を見る。
「そうそう~。私と同じことをやってみてね~」
ニコラがテーブルの前に立つ。
「まずは材料を選ぶところからだよ~。ちゃんと見ててね~」
そう言うと、ニコラは並べられた材料を次々と手に取っていく。
「これと~、これと~、あとこれ~」
銀翼の五人は、必死に目で追った。
「……早くないか?」
クロードが呟く。
「え~?」
画面のニコラが首を傾げる。
「ゆっくりなんだけどなぁ~」
「いや、速い!」
ガレスが即答する。
「そうかなぁ~?」
ニコラは不思議そうな顔をした。
そして材料を並べ終えると、今度は作業に入る。
混ぜる。
削る。
組み合わせる。
魔力を流す。
その一連の動作が、あまりにも滑らかだった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
ヴァルトが声を上げる。
「今何をした!?」
「え~? これ?」
ニコラが手元を見せる。
「ここをこうして~、こうだよ~」
「分からん!」
ガレスが叫ぶ。
「ふふっ」
ニコラは楽しそうに笑った。
「じゃあ、もう一回やるね~」
今度は少しだけゆっくりと動かす。
……それでも速い。
「……」
銀翼の五人は無言になった。
「どう~?」
「全然分からん!」
「え~?」
ニコラは本気で不思議そうだった。
「ちゃんとゆっくりやったのに~」
「それでゆっくりなのかよ……」
クロードが頭を抱える。
「まあまあ~。じゃあ今度はみんなの番ね~」
画面のニコラが手を振る。
「材料はそっちにあるから、私と同じように作ってみて~」
銀翼は顔を見合わせた。
そして、それぞれ材料を手に取る。
「……これか?」
「たぶん……」
「いや、さっきニコラが持ってたのはこっちだ」
「待て、順番が違うぞ」
五人で相談しながら、なんとか作業を進めていく。
しばらくして――。
「完成!」
ガレスが掲げた。
画面のニコラがぱちぱちと拍手する。
「お~。できたね~」
「正解か!?」
「うん~。ちゃんとできてるよ~」
銀翼から安堵の息が漏れた。
「よし……!」
「じゃあ次は、お料理教室だよ~」
「……」
五人の動きが止まる。
「まだあるのか!?」
ガレスが叫ぶ。
画面が切り替わった。
今度はヒナタが映っている。
「こんにちは~」
ヒナタが笑顔で手を振った。
「次は、ヒナタのお料理教室でーす」
「料理か……」
セリナがテーブルを見る。
こちらには肉や野菜、それに様々な調味料が並んでいる。
「私と同じ料理を作ってみてくださいね」
ヒナタが料理を始める。
ニコラとは違い、こちらはかなり分かりやすい。
材料を切る。
火を通す。
調味料を加える。
混ぜる。
「こっちは普通だな」
ガレスが安心したように呟く。
するとヒナタが笑顔のまま言った。
「じゃあ、ここで問題です」
「……」
「一つだけ、食べられない物がありま~す」
銀翼の表情が固まった。
ヒナタは調味料の並んだテーブルを指差す。
「この中から選んでくださいね!」
「調味料の中から!?」
「はい~」
ガレスが調味料を見る。
「……どれも食べられそうだが」
「ちゃんと考えてくださいね~」
ヒナタはニコニコしている。
「見た目だけで選んじゃダメですよ~」
五人が調味料を一つずつ確認していく。
「これは……?」
「違うと思う」
「じゃあ、こっちは?」
「待て。料理に使うものなら食べられるんじゃないか?」
「それが罠なんじゃないのか?」
銀翼は完全に疑心暗鬼になっていた。
画面のヒナタは、その様子を楽しそうに眺めている。
「ふふっ。ちゃんと答えを見つけてくださいね~」
そして、最後の一人が答えを選ぶ。
「これだ!」
「……正解です~」
「よっしゃ!」
五人から歓声が上がる。
「よく分かったね~」
ヒナタが拍手する。
「これでお料理教室は終了です~」
画面のヒナタが手を振った。
「お疲れさまでした~」
画面が消える。
静かになった部屋で、銀翼の五人が顔を見合わせる。
「……」
「……次は何だ?」
誰も答えられなかった。
観覧室では、エキドナの面々が笑っていた。




