↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落内円は落ちている  作者: 七風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
112/481

お前らのダンジョン

「それで、ゲンナイさん」


 リゼットが尋ねる。


「これから、このダンジョンはどうするんです?」


「どうするって?」


「今までのお話を聞く限り、ゲンナイさんはダンジョンマスターになってから、特に手を加えていないんですよね?」


「ああ。俺は基本的に見てるだけだ」


「では、今のダンジョンは……」


「三十階までだな」


「三十階?」


 マドカが聞き返す。


「ああ。前任の奴が作ったのがそこまでだ。俺は引き継いでから何もいじってねぇ」


「じゃあ、三十階が最後なんだ」


「そういうこと」


 マドカは少し考えた。


「じゃあ、私たちが三十階までクリアしたら?」


「…………」


 ゲンナイが黙った。


「その先はないんだよね?」


「ああ」


「じゃあ、クリアしたら帰ることになるのかな」


「…………帰んのか?」


「え?」


 マドカがゲンナイを見る。


「いや、だから……三十階クリアしたら、お前らもう来ねぇのか?」


「うーん……」


 マドカは少し考える。


「クリアしたら、もうないんでしょ?」


「…………」


「だから、別のところに行くんじゃないかな」


「…………帰んのかよ?」


 今度の声は、さっきより小さかった。


「……ゲンナイ?」


「いや」


 ゲンナイは視線を逸らす。


「別に、帰るなって言ってるわけじゃねぇぞ」


「…………」


 マドカは隣にいるリゼットを見る。


 リゼットも、ニコラを見る。


 ニコラも、エレノアを見る。


 なんとなく全員の視線が合った。


「……ねえ」


 マドカが小声で言う。


「この人、帰らせたくないんじゃない?」


「私も、そう思う~」


 ニコラも小声で返す。


「たぶん、そうでしょうね」


 リゼットが苦笑する。


「何だよ」


 ゲンナイが怪訝そうに見る。


「お前ら、何こそこそしてんだ?」


「なんでもないよ」


 マドカは笑った。


「じゃあさ」


「なんだ?」


「続き、作ればいいんじゃない?」


「…………」


 ゲンナイの目が少しだけ輝いた。


 だが、すぐにそっぽを向く。


「俺が作れねぇと思ってんのか?」


「いや、そんなこと言ってないけど」


「なら作れるぞ」


 ゲンナイは腕を組む。


「やろうと思えば、いくらでも作れる。もっと下にだって伸ばせるし、今ある階層だって好きに変えられる」


「でも、今まで作ってなかったんでしょ?」


「必要なかったからな」


「ふーん」


 マドカがニヤニヤする。


「じゃあ、作ってみる?」


「……お前らがやるならな」


「私たちが?」


「そうだ」


 ゲンナイは少し身を乗り出した。


「俺が作るだけじゃ面白くねぇだろ。お前らが冒険者なんだから、お前らが面白いと思うもんを考えてみろよ」


「なるほど~」


 ニコラが頷く。


「みんなで新しい階層を作るんだね」


「そういうことだ」


 ゲンナイは得意げに笑う。


「ただし、つまらねぇもん持ってきたら却下だからな」


「厳しいね~」


「当然だろ」


「じゃあ、どんなのならいいの?」


「俺が面白いと思った奴だ」


「基準がゲンナイさんなんですね」


 エレノアが苦笑する。


「当たり前だろ。ダンジョンマスターは俺なんだからな」


 そう言ったところで、マドカがふと尋ねる。


「じゃあ、ゲンナイが作ったらどんな階層になるの?」


「あ?」


「私たちより面白いんでしょ?」


「……そりゃそうだろ」


「地獄みたいな階層とか?」


「作れるぞ」


「本当に?」


「ああ。お前らが一歩も進めねぇような階層にすることだってできる」


「それ、面白いのかな~」


 ニコラが首を傾げる。


「クリアできなきゃ意味ないよね」


「…………」


 ゲンナイが少し黙った。


「じゃあ、どんなのなら面白いんだ?」


「それを今から考えるんじゃない?」


「…………なるほどな」


 ゲンナイは少し考える。


「じゃあ、お前らで考えてみろ」


「うん」


 マドカが頷いた。


「やってみよう」


「よし」


 ゲンナイは満足そうに笑った。


「だったら、次はお前らのダンジョンだ」


 その言葉に、エキドナの面々が顔を見合わせる。


 マドカは小さく笑った。


「……なんか嬉しそうじゃない?」


「うるせぇ!」


 ゲンナイが即座に怒鳴る。


「俺は別に、そんなつもりじゃねぇぞ!」


「はいはい」


「本当だぞ!」


「分かったって」


「…………」


 ゲンナイはそっぽを向く。


 けれど、その口元は少しだけ緩んでいた。


 それを見たリゼットが、また小さく笑う。


「ふふ」


「……なんだよ」


「別に?」


 こうしてエキドナは、ゲンナイの提案に乗ることになった。


 新しい階層を作る。


 どんなものにするのか。


 どうすれば冒険者が楽しめるのか。


 それをみんなで考える。


 それはダンジョンマスターと冒険者という関係から始まった、奇妙な共同作業だった。


 そしてゲンナイ自身も、まだ気づいていなかった。


 自分が欲しかったのは、新しい階層そのものではない。


 ただ、久しぶりにできた話し相手と、もう少し一緒にいたかっただけなのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。