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文通友達が大変そうなので、私、動きます!  作者: 池中織奈


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9/6 二話目

 好きだ、という気持ちを自覚してから落ち着かない。



 ふわふわした感覚で、私、変だ。

 早くフルダーナスに気持ちを返したいなと思うけれど、彼は後処理のために動いていて会えない。

 ……それが寂しいなと思う。





 会いたいな。

 でも会ったらなんて言おう?

 いきなり私が好意をもったなんていったら、驚くかな。

 私は誰かにそういう気持ちを伝えたことなんて一度もないから、緊張もする。



「ふふっ、ヴィオは本当に可愛いわ」


 ……ちなみにオーロはすぐさま私の心境の変化に気づいていた。


 恋というものを知ってぽわぽわしている私を見て、にこにこしていた。優しい目を向けられて、それもむず痒かった。





「……落ち着かないわ」

「そうよね。そう言う感情を自覚したら落ち着かないものよね」

「うん……。あと、なんか、私、おかしいの」

「おかしい?」

「初めて出会った時のこととか、彼がこれまでくれた言葉とか思い出してこう……なんか変な感覚だわ」

「思い出して照れてるのね? あー、もう本当に可愛らしいわ!」



 オーロは楽しそうに笑っている。

 なんだか私、そう言う気持ちを実感してから子供みたい。



 思い出されるのは、これまでのこと。最初に出会った時、いきなり求婚してきてびっくりした。本気じゃないだろうって思っていて、私は魅了持ちであることもあって、ずっとその気持ちを受け入れようとはしていなかった。

 それでもフルダーナスはずっと私に求婚していて、諦めたりなんかしなくて。



 好きだって気持ちを知ったからこそ、なんというか……私が連れない態度をしていてもずっと好意を示し続けたフルダーナスって凄いなと思った。

 私から気持ちが返ってくるかも分からないのに、私にいつも会いに来ていた。




「ええ。そうよ、思い出したらなんだか……嬉しいなって。フルダーナスはそれだけ私のことがその……す、好きなんだなって」

「そうよ。フルダーナスさんはヴィオのことをそれはもう大切になさっていて、好意を隠しもしないのだもの。今更照れているのね」

「だって、私……自分が魅了持ちだから余計に人との距離を置いてしまっていたのだもの」



 魅了を持つ私は、人と本当の意味で仲良くなることは難しい。

 どれだけ仲良くなったと思ったとしても、魅了持ちであることを知られたら離れていく人もいると知っている。

 そして今回の事件のように、何らかの要因があればその力が暴走することもあるって。




 産まれながらに私は生物を魅了してしまう力を持ち合わせていたから、その分、普通とは異なる。

 線を引いて、なるべく深く人付き合いをしないようにする。

 私にとってそれが当たり前だった。



「だからなんだろう……フルダーナスは、私が魅了持ちだと知っても、こうなんだなって。私のことが本当に大切で、好きでいてくれていて……魅了持ちでもそうじゃなくても、私自身を見てくれているんだなって」


 そう思ったら余計にこれまでの言葉を、かみしめてしまう。



「そうなのね」

「うん。でもなんだろう、こうしてフルダーナスへの気持ちを実感出来たのも、オーロと会って外との関わり合いを増やそうと思ったからなの。だから間接的にオーロのおかげだわ」

「そうかしら?」

「そうだよ。オーロはね、人と関わるのを躊躇していた私が外の世界に出るきっかけをくれたの」




 そう、オーロとは長い付き合いだ。


 オーロが嫁いでから三年間は手紙のやりとりがなかったけれど、五年もやり取りをしていたお友達。

 オーロと文通をして、そしてオーロが大好きだなと思ったから今の私がいる。

 大事なお友達であるオーロが居なかったら、私はフルダーナスへの気持ちに気づいても思いを伝えようと思わなかったかもしれない。

 魅了持ちの私が誰かと幸せになるなんて、想像も出来なかっただろうから。




「ねぇ、オーロ。好きって、どうやって伝えたらいいの?」

「素直にただ好きになったって、求婚を受け取るって言ったらいいの。そういえば陛下にはお伝えしたの?」

「……うん。恥ずかしかったけれど、お父様にはフルダーナスの求婚を受けたいとは伝えたわ。フルダーナスが帰ってきたら気持ちを返すから、報告しに行くねって」



 お父様は「そ、そうか」と少しだけ動揺していたっけ。


 フルダーナスが私に求婚していることも、私が事件が起きた時に助けてもらったことも……それを知っているから想像も出来ただろうに。やっぱり娘を持つ父親としては、複雑な気持ちでもあるのだろうか。

 私は王族だから、ただ好き嫌いだけで、結婚を決められるわけじゃない。

 幾らお父様達が私の意思を尊重してくれるとはいってもね。だから先に伝えてはおいた。



「そうなのね。反対されていないなら良かった」

「うん。家族は反対していないわ。これまで散々フルダーナスが私に求婚していたことも知っているしね。ただ……結婚したらどちらに住まうのかって聞かれたけれど」

「その問題も確かにあるわね」

「私、フルケーヘン王国が好きだから国外に出るなんて考えていなかったの。でもね、私はフルダーナスと一緒に居たいと思ったの。だから、もしかしたらグザックデーダ王国に住まうことになるのかもなって……」



 誰と結婚して、何処に住まうか。

 それって重要な問題だ。だって暮らしががらりと変わってしまうものだから。

 でもフルダーナスが好きだなと思ったから、隣国で暮らすこともありかなという心境になりつつある。



「そのあたりはフルダーナスさんと話し合いをしなければならないわね」

「うん、ちゃんと話す」



 私はオーロの言葉にそう答えた。




 早く、フルダーナスが帰ってこないかな。


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