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「はっ……!」
目を開ける。起き上がって、きょろきょろとあたりを見渡す。
部屋着に着替えさせられている。侍女達が着替えさせてくれたのだろう。
パーティーに参加して、魅了の力が暴走して、フルダーナスが駆けつけてくれて。
それからどうなった……?
こうして自室で寝かされているということは、問題は片付いたのかしら。
……魅了の力はきちんと、制御出来ている。そのことにもほっとする。無差別に人々を魅了してしまったら、それこそ取り返しのつかないことになっていた。
「ヴィオミーリナ殿下!! お目覚めになられたのですね!! 良かった……」
侍女の一人が目を覚ました私に気づいて、そう言って駆け寄ってくる。あまり顔色は良くない。余程、心配をかけてしまったのだろう。
「心配をかけてしまってごめんなさいね。……私はどのくらい眠っていたのかしら」
「三日ほど」
「そんなに?」
驚いてしまった。
だってそんなに眠ってしまっていたなんて思ってもいなかった。
「はい。フルダーナス様のおかげもあってヴィオミーリナ殿下から放出されていた魅了の魔力はおさまっていたのですが、あれだけの魔力を振りまいていたのもあって疲労がたまっていたのかと思われます」
「……私の魅了は周りに悪影響を及ぼしていなかった?」
「一部の者に軽微な影響はありましたが、その程度です」
「あの場で思いっきり私が魅了してしまった侍女や騎士は?」
「彼らは現在処分待ちの状態です」
そう言われて、申し訳ない気持ちにはなった。とはいえ、仕えるべき主人である私を危険にさらしたという事実は変わらない。
少なくとも私に仕える者達は、基本的に私の力について把握したうえで付き従っていた者達ばかりだ。
魅了が使われたから仕方がないなどといって彼らの処罰を甘くするなんてことは出来ない。王族としてそのあたりはきちんとしておかなければならない。
……そもそもあれだけの強大な魅了を受けたのだから、しばらくは以前のように働くことも難しいだろう。
過去に私の魅了を受けて、取り返しのつかない暴走をしてしまった方はそれこそ王宮勤めは出来なくなった。
……長い間、魅了の影響を受けている者には王家から保証も出ていたぐらいだ。
私に宿る魅了は、それだけ強い力だった。その力を不本意に受けてしまうことになった彼等には、申し訳なく思う。
「……そう、なのね」
「ヴィオミーリナ殿下が気に病むことではありませんから、そのような表情はなさらないでください」
「うん、そうね。でもまさか、無理やり魅了の力を暴走させられるとは思っていなかった。もっとああいった強硬手段を取られることを考えた上で動くべきだったわ」
そのことは反省している。私に魅了の力があることは、当たり前のこと。この力と付き合って私は生きている。
でもああいった手段を取られるとは思っていなかった。私は王家の血を引く娘だから、そんな行動を起こす人なんてこれまであまりいなかったから。
油断してしまっていた面もあると思う。……なんだか少しだけ自己嫌悪してしまった。
だって私がもっと対策を練れていればこんなことにはならなかったのではないかと思ってしまった。
侍女や騎士達に迷惑をかけることもきっとなかったはず。
だから気に病んでしまう。
「まさかヴィオミーリナ殿下にあのような真似をするとは誰も想像が出来なかったので仕方がありませんよ。それにソシエア王国の方の一部があんなにも魅了の力に傾倒しているとは思ってもいませんでした」
「あの男性は?」
「元々魅了を扱う魔道具を所持しその影響を受けていたこと、ヴィオミーリナ殿下の魅了を正面から受けたことが原因で精神に異常をきたしている状態にあるようです。魅了の影響を常時受けていたようなので、あのような強行にでたのでしょう」
「そう、ソシエア王国への対応は?」
「それに関しては王太子殿下とフルダーナス様が動いておりますので安心してください。お二人ともヴィオミーリナ殿下が危険な目に遭ったことでお怒りなので」
「そうなのね……」
二人がそうして動いているのならば、何の問題もないだろうとほっとした。
「ヴィオミーリナ殿下はお姫様抱っこでフルダーナス様が運んでこられていたのですよ。あの方、ヴィオミーリナ殿下の魅了が効かないなんてやはり凄いですね」
「……お姫様抱っこ」
意識を失っている間、その体勢で運ばれていたのかと思うと恥ずかしくなった。
所謂、横抱きの運び方。女の子にとっては憧れとも言えるもの。私も小説を呼んで、素敵だなと思ったことはある。
「そうですよ。それはもう大切なものを運ぶようになされてました。本当にフルダーナス様は、ヴィオミーリナ殿下のことを大切に思っていらっしゃいますね」
「そう、ね……」
少なくとも、私が魅了の力を持つことも気にしていない様子だった。
人の感情を、行動を意図せぬように操ってしまうようなもの。それこそ、そこに自分の意思があるか不安に思う者もいるだろう。
――私の強すぎる魅了は、多くの人々に忌避されるものではあった。
「……それと今回の一件でヴィオミーリナ殿下の力について流石に周りに広まってしまっています」
次に言われた言葉に私は、ついにその時が来てしまったかと遠い目をしてしまった。




