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私はすぐさま周りを確認する。どれだけの人間が魅了の影響を受けているかすぐさま確認する必要がある。
入口に立つ騎士達だけなら他の者達にどうとでもしてもらうことが出来る。
そう思っていたのだけど、中に居たはずの侍女や騎士に関してもはっとした表情のち、すぐさま雰囲気ががらりと変わった。
これは……休憩室の外に生物を魅了させるような効果のある何かが設置されている? どちらにしても王宮内でそんなものを紛れ込ませられているだけでも、遅れをとってしまっている。
――魅了の力を使っている者達の狙いは、私かしら。
パーティー会場内ではなく、わざわざ私の休んでいる休憩室でこういった行動を起こすだなんて、何を考えている?
まず、普通に考えて王族である私を狙うというだけでもリスクが高すぎる。
どういった目的で、何のために、こんなことをしようとしたのだろうか。
「ヴィオミーリナ殿下、来て、いただきます」
「あの方、およびです」
ああ、私はどこかに連れていかれようとしているらしい。
魅了の影響を受け、操られている彼らは私のことを連れて行こうとしている。
それに休憩室を出た先の通路も、驚くほどに人の気配を感じられない。
……余程強い魅了の力? それとも魔道具でも使っているのだろうか。それは定かではないけれど、私は明確な危機にある。
一先ず私がやらなければならないことは、この者達のことを振り切ってパーティー会場へと戻ること。
そうすれば、私の味方は幾らでもいる。
……でも、全員が魅了にかかっていたら? というその不安はある。けれども王族や高位貴族は魅了の力の影響を受けないように、道具を装着しているはずだし、それだけ大勢の者を魅了することはおそらく出来ないはず……!!
私はそんな風に結論づけ、私を連れていこうとする者達を魅了して大人しくさせることにした。
「私の言うことを聞きなさい。私を連行するのはあなたたちのやることではないわ」
――私の魅了の力の方が強いのであれば、これで問題がないはず。
……なんというか、意図的に人のことを魅了しなければならないなんて正直嫌な気持ちになる。
私は魅了の力があるから、昔から苦労してきた。この力も含めて、私であるとは言えるけれども……でも、誰かに意図的に使うつもりもなかった。そもそもこの力を受けた者達が、どれだけ身体や精神に悪影響を受けるかどうかも分からないのだから。
魅了の力を受けたからこそ、将来が変わってしまう人も当然いるわけで……私はこのような状況を生み出した人に対して不快感が増した。
魔法を使って、人を集めるのもいいかもしれない。
攻撃魔法で大きな音でも出せば、人が来てくれるはず。
などと、そんなことを思考しつつ、魔力を練る。
だけれども、私の魔法は完成しなかった。それが放出される前に別の魔力が私の魔法に干渉した。
「……はははっ、素晴らしい魅了の力だ」
そしてその場に声が響いた。いつの間にか一人の男性がそこにいる。楽し気な様子で、舐め回すように見つめられてぞくりっとした。
やっぱり、私が魅了の力を持つことを把握されてしまっているらしい。
ただ魅了の力に対しての忌避感などは一切ないようだった。寧ろ、その力に対して特別な感情でも抱いているようにさえ見えた。
「……あなたは、ソシエア王国の使者の一人ね? こんなことをしてただですむと思っているの?」
その男はソシエア王国の使者の一人だった。
ソシエア王国が何かを起こそうとしていることは分かっていた。だから警戒だってしていた。
それでも……直接的にこんなことを起こすと思っていなかった。
「ははっ、どうにでもなるに決まっている。ヴィオミーリナ殿下の魅了の力を手におさめられれば、あらゆるものを魅了してどうにでもなるだろう?」
……確かに私の魅了の力は、一般的なものに比べて強いものである。そのことは自覚している。
この力を思いっきり使ったことはない。だから自分の力がどれだけ高まっているのか、どれだけ人のことを操れるのかなどは把握していない。
……でも目の前の男は、私の魅了の力はそれだけ強いものだと確信しているらしかった。
私を手中におさめて、その魅了の力を使って、どうにでも都合の良いように世界を動かして行こうとそんな風に思っているらしい。
なんて、恐ろしいことを考えるのだろうか。
「私が、魅了の力をあなたたちのために使うとでも?」
そんなわけない。
無理やり私を従わせようとすることが出来るなんて思わないでほしい。
だけどそういった私に、目の前の男は笑った。
「無理やりにでも使ってもらうだけだ」
などとそう口にした男は、私に向かって何かを吹きかけた。
――魔力の籠った何か。
それを吹きかけられた瞬間、私の体内の魔力が熱を持った。




