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その給仕の女性に関して少なくとも私は見たことはなかった。私は王宮で働いている者達のことを全て把握しているわけではないけれども、おそらく見たことがない。
私は警戒心を持ちつつ、問いかける。
「何かあったのかしら?」
「不備が起きてしまい、ヴィオミーリナ殿下に来ていただきたいのです」
「あら、それは私の管轄ではないから別の方に伝えてもらえる?」
……それにしてもフルダーナスが私の傍を離れているタイミングで、このように接触してくる事態、とても怪しいわ。
私が十七歳の小娘だから、簡単に同行してくれるとでも思われているのかしら? 舐められたものだわ。
私はここ最近、活発に動いてはいる。
だけれどもその功績を全てお膳立てされたものだと、そう思っている人は居るだろう。
私の見た目も周りからしてみれば侮られる対象ではあるらしい。私は確かに世間知らずな人間ではあるけれども、だからといって王族として教育を受けた人間が簡単についていくわけがないのに。
でも世の中には、周りの言葉をなんでも信じ込んでしまうような高貴な女性というのはいるのかもしれない。
考えただけでも周りにとっては迷惑な存在だけど。
給仕の女性は一旦大人しく引き下がったので、すぐさま見知った護衛に声をかけて女性の報告をしておく。
どうやらこれまで真面目にお仕事を行っていたらしいのだが、このパーティーで急にそういった行動を行い始めたらしい。
フルダーナスはなるべく私の傍には居てくれているけれども、正直言ってずっと傍に居るのは難しい。
互いに別の相手と話したり、ダンスをしたりすることはあるから。
とはいえ、守られているなという感覚はある。
……やっぱり、むずむずする。パーティーだと色んな人と関わることになって……、だからこそ余計にフルダーナスは私のことを大切にしているんだなと実感する。
私に何かないように、心配をしてくれている。目をかけてくれている。
そのことは時折目が合うことからも確かなことである。
私は子供じゃなくて、自分一人でもどうにか出来るのになという気持ちはある。ただ周りがそうやって私のことを守ってくれようとしているからこそパーティーで何かあっても問題ないんだろうなという安心感はあった。
給仕の女性からの接触後は、そこまで大きな動きはない。
――あくまで私に対してはだけど。
リュン兄様たちは私以上に沢山の人達に話しかけられていた。
ただの王女という立場の私よりも、王太子であるリュン兄様の方が大変だ。それこそ私の知らない苦労も沢山してきているだろう。
お父様やお母様よりも、まだ若いリュン兄様のことをどうにでも出来るとそう思っているのかもしれなかった。
リュン兄様はそんなに甘い人じゃないのに。
私はそんなことを考えながら、パーティーで話しかけてくる人たちの対応を進めていく。
そうしているうちに少し疲れてしまったので、休むことにした。
パーティーが行われている広間のすぐ近くには王家の休憩室も設置されている。フルダーナス達に一言告げてそちらに向かう。
護衛や侍女達も一緒なので、危険はないはずなのに皆は過保護に私のことを心配する。
私は「大丈夫」と告げて、休憩室に向かった。というか、そもそも此処にまで他国の手が伸びていたらそれこそどんな守りを敷いていても突破されてしまうことだろうな。
……もし、そんなことが起きたらというたらればも考えておかないと。
侍女や騎士も控えている。それに長期間、休憩室に留まる予定はない。だから大丈夫なはずだけど、少しだけ心配になるのは……ソシエア王国の使者もパーティーに参加しているからかしら。
「ヴィオミーリナ殿下、こちらをどうぞ」
侍女から渡された飲み物を口にしつつ、ほっと一息を吐く。
事前に飲み物に何か不審なものが混入されていないかなどは、確認した上でだ。
今、休憩室には他の王族は居ない。貴族の使う別の休憩室は、離れたところから離れたところにあるので比較的静かだ。
休憩が終わったら、また多くの人達と会話を交わして、ダンスを踊ろう。そしてこの国にとって良い影響を与えるような繋がりを持てればそれが一番良い。
今まで魔法に関することでこの国に貢献は出来ていたけれども、別の方面でもフルケーヘン王国の為に何か出来るのは嬉しい。
私は、フルケーヘン王国が好きだ。
生まれ育ったこの国が好きで、大切だからこそ頑張りたいなとそう思ってならない。
「そろそろ戻るわ」
私はそう口にして立ち上がる。
あまりゆっくり休みすぎてもいけない。
そう思って動き出す中で、入り口に立っていた護衛騎士の様子がおかしい事に気づいた。
「ヴィオミーリナ殿下」
そう、私の名を呼ぶ騎士の目が虚ろだった。
――その目を私はよく知っている。おそらく、魅了の力の影響を受けている。




