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「ヴィオ、手を」
「ええ」
フルダーナスに手を差し伸べられて、自分の手を重ねる。
フルダーナスにエスコートをされてパーティーに参加するなんて、出会ったばかりの頃は全く想像もしていなかった。
だから凄く不思議な感覚になっていた。
着飾っている彼は普段とは違う雰囲気で、素直にかっこいいなとは思う。見た目が整っているのもあって、余計になんというか他の女性陣が騒ぐのも無理はない。
「ヴィオ、綺麗だ」
「ありがとう。フルダーナスも、素敵な恰好をしているわね。フルダーナスのことを独り占めしているなんて周りから羨ましがられそうだわ」
「それを言うなら私もヴィオをエスコートしていることを羨ましがられるだろうな」
そんな会話を交わしながら、パーティーが始まるまでの時間を待つ。
パーティーが起こることに対する緊張は少なからずある。でもなんだろう、やっぱり楽しみだ。
フルダーナスと一緒に参加するパーティーが楽しそうだなってそういう気持ちでいっぱいなのだ。
彼も同じ気持ちを感じていそうで、それも嬉しかったりする。
うん、楽しいを共有できることってとても素敵なことだよね。なんて私は思う。
でもこう、私がフルダーナスにエスコートされていることをとても喜んでいるなんて、知られたら恥ずかしいから表情には出ないように気を付けてはいるけれど。
……フルダーナスが喜ぶのなら、それはそれでいいけれど。
でも流石に恥ずかしいじゃない!
「ヴィオ、不安か?」
「ソシエア王国のこと? そうね、不安はあるわ。だって彼らは何をやろうとしているのか全く分からないのだもの」
何を目的にしているかもっと明確に分かったのならば別だ。だけれども、そうじゃないからこそ余計に不安はある。折角のパーティーを思う存分楽しめた方が嬉しい。だから問題は早急に解決してくれた方がいい。
パーティーが何事もなく終わればいいな。
「ヴィオ、大丈夫だ。何かあったら私がどうにかする。ヴィオは私の傍を離れずにてくれればそれでいい」
「あら、私に傍に居て欲しいだけに聞こえるわよ?」
「それもある。着飾ったヴィオが一人で居たら、それだけ話しかけられる率も上がるだろう。折角これだけ仲良くなれたのに、他の男に取られるのだけは避けたい」
「私、そんなに軽くはないわ」
少し話しかけられた程度で靡くことはまずない。私は結構、警戒心の高い方の人間だと自分では思っている。
だからそういうことを何一つ心配する必要はないのだけれども、フルダーナスは私に好意を抱いているからこそそう言う心配をしているのだろう。
「心配はしているけれど、私、楽しみな気持ちの方が強いわ。起こるか分からないことで頭を悩ませるよりも楽しんだ方がきっといいもの」
こういう前向きな気持ちになれているのも、オーロとフルダーナスと一緒に過ごすようになったからなんだろうな。
そもそもそのきっかけがなければ私はこういったパーティーに参加しようとさえしなかっただろうから、やっぱりなんというか私はオーロやフルダーナスに出会えてよかったなとそう思った。
「それならいい。基本的に何か起こった際はすぐに対応する。他の何を差し置いてもヴィオのことを優先して守るから」
「それでいいの? 隣国の王宮魔法師さん?」
私のことを優先して守るなんて言われて、それでいいのだろうかと私は心配になる。だってフルダーナスは、仮にも王宮魔法師なのだもの。それなのに向こうからしてみれば他国の王族を優先するのなんて許せないのではないかと思った。
「大丈夫だ。こっちの国の陛下にはちゃんと許可をもらっている」
「そう、ならいいわ」
やっぱりフルダーナスって、ちゃっかりしているというかなんというか……周りへの根回しもしっかりしているのよね。
後から問題にならないようにって先を考えて行動をしている。……でも隣国の王族の方にも、躊躇せずに私のことを話しているのね。……照れくさい。
「私もお父様から何かあった際は魔法を使って大丈夫だって許可はもらっているから、なるべく自分のことは守るつもりよ」
守られっぱなしは、それはそれで嫌だなと思ったりもする。だって私だって魔法師なんだもの。
フルダーナスほど魔法を上手くは使えないけれども、それでも私だって国に仕える魔法師。
一緒に魔法書だって出したのだから、フルダーナスに寄りかかりすぎているなんて思われたくない。
……私がこれでフルダーナスを頼りっきりだったら、足手まといみたいに思われちゃう。
フルダーナスに寄生しているなんてそんな風に思われるのだけは絶対に嫌だもの。
そんなことを話していると、ようやくパーティー開始時間になった。




