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フルダーナスは私の言葉に驚いた表情になった。変なことを言ってしまったかと不安になる。
「ごめんなさい。急にこんなことを言われたらフルダーナスは……」
「撫でてほしい」
食い気味にそう言われて、私は驚く。
いいの? と驚いたようにフルダーナスを見ると、それはもう期待したようにこちらを見ていた。
しかも私が撫でやすいように屈んでくれている。
これは撫でて言いということだろうか。
私は恐る恐る、その頭に手を伸ばす。人の頭を撫でることなんてなかなかしない。だからなんだか頭を撫でるだけで緊張してしまった。
とてもさらさらで、幾らでも撫でて撫でていたくなる。
どういった手入れをしているのかしら。やっぱり男性だと、あまり髪を気にしなかったりするのかな。
私は王族だから侍女がそれらの手入れをしてくれているのだけど、フルダーナスは侍女とかいるのかな? 考えてみると、私はフルダーナスの日常は分からないなと思いながらも、さわさわとずっと撫でてしまった。
「そんなに撫でたかったのか?」
フルダーナスから揶揄うようにそう言われて、私ははっとする。
「お、男の人の頭なんて撫でる機会ないから、それにフルダーナスの髪って凄く撫で心地がよくて……」
私が言い訳するかのようにそう言ったら、フルダーナスはおかしそうに笑う。
ああ、恥ずかしい!!
いえ、でもこう、大人しく撫でられているフルダーナスは確かに少しだけ可愛いと言えるのかも。男性に可愛いなんていうのは、彼からしてみると不本意なのかもしれないけれど。
「ヴィオの初めてをもらえるなんて、光栄だな」
「……もう、揶揄わないで。というかね、頭を撫でるだけじゃなくて、私にとってお兄様達以外でこんなに親しくしている男性なんてあなたが初めてなんだから……全部そうよ」
私がそう言ったら、フルダーナスは心から嬉しそうに笑っている。
ああ、もう、本当に嬉しそうなんだから。
「それは嬉しいけれど、ヴィオはルンジャーとも仲良しだろう?」
……フルダーナスってば、私がルンジャーと仲良くしていることをやっぱり少し面白く思っていないみたい。
オーロのこともきっと羨ましがるはずだって、そんな風にオーロは言っていたな。
……ルンジャーのことも、羨ましいと感じたりするんだろうか。そんな風に思う必要ないのに。
だってフルダーナスもオーロも、ルンジャーも全員違う人間なんだもの。
「オーロの方がルンジャーと仲良しだわ。それにフルダーナスとルンジャーでは、違うわよ。それにデートするのも、フルダーナスだけだし……」
うん、ルンジャーとは二人で出かけたりとかはしないと思う。想像も出来ない。出かけるなら皆でなになりそう。
そう考えると、私にとってある意味、フルダーナスって特別なのかな。自分でもわからないけれど。
「それならよかった。出来れば、いつまでも男と二人では出かけてほしくない」
……本当にはっきり言うわよね。恥ずかしくないのかしら?
「ところで、私もヴィオを撫でてもいいか?」
「……私、何も褒められるようなことをしていないけれど」
「しているだろう。魔法書の作業も進めていてくれていたし」
「それも、そうかも?」
言われてみれば確かに魔法書の執筆を進めたり、頑張っては居たのかもしれない。
私としてはそこまで褒められることではないと思っていたのだけど……。確かに褒められてもいいことではあるのかも。
撫でられるかぁ。
家族に撫でられるのと、男の人に撫でられるだとまた違う感覚になるんだろうか?
「じゃあ、撫でることは許可してあげる。でも……変なことをしたら怒るからね」
私がそう言うと、フルダーナスは笑って私の頭に手を伸ばした。凄く優しい手つきで撫でられる。
なんだかすごく、大切にされているようなそんな感覚になった。
うん、だって大切な異性相手じゃなかったらこんな風に優しくなでたりしないと思う。そもそもそういう好意が少なからずなければこんな風に接しようともしないとは思うし。
なんだか、照れくさい気持ちになる。
「ヴィオの紫色の髪は、凄く綺麗だな。私はヴィオの髪、好きだ」
「……そう? 私も自分の髪は好きだけど、もっと綺麗な髪の人なんて幾らでもいるでしょ。フルダーナスの髪も、凄く綺麗だし」
「やっぱり好きな子の髪だと特別なんだよ。こうやって撫でさせてくれて嬉しい」
「そ、そう」
私の髪だからこそ、綺麗だって思ってくれているんだろう。それが分かるからやっぱり恥ずかしい。
嫌な気持ちは全くないけれど。寧ろ嬉しいとさえ思ってしまう。
しばらく私はフルダーナスが満足するまで頭を撫でられるのであった。




