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「そんなものかしら?」
「ええ。だって私も好きな人の前では良い姿を見せたいと思うもの。私はヴィオの前でもこれ以上情けない姿は見せたくないとも思うわ」
「私はオーロのどんな姿を見ても、友達で居ようとするわ」
オーロの言葉を聞いて私は少しだけ疑問に思った。だってどんな姿を見せられても私にとってはオーロは大事な友達だもの。
寧ろ普段とは違う姿を見せてくれたら、信頼されているのだなと嬉しくなる。
「ふふっ、そう言ってくれることは分かっているわ。でもね、やっぱり少しぐらい大人の余裕は見せたいと思ってしまうのよ。私はあなたよりも年上で、どちらかというと頼られる方がずっと嬉しい。人によってはそんなことを気にいなくていいと言われてしまうかもしれないけれど、私はヴィオの前で多少はかっこつけたいと思ってしまうからフルダーナスさんの気持ちも分かるわ」
オーロはそんなことを口にして、楽し気に笑っている。
フルダーナスもオーロも、私のことを好きでいてくれているからこそそういう感情を抱いているのだなと実感する。
そのことは素直に嬉しい。
ああ、でもそうか。私は末っ子で、自分より下の弟妹は居ないけれども……もし妹や弟が居たら確かに情けない姿なんて見せたくないと思ってしまうかもしれない。
そう言う考えに思い至っていなかったのは、私が産まれてからこの方、ずっと甘やかされている末っ子王女だからというのもあるんだろうな。
「そうなんだ」
「そうよ。私もフルダーナスさんも、あなたに頼られたり甘えられたりすると素直に嬉しいの。それこそどんな我儘だって叶えたくなるぐらいにね。まぁ、限度はもちろんあるけれど」
「そうなんだ? 甘えられすぎても人によっては嫌だと思うけれど?」
私も確かに可愛い身内の甘えたなら許せるだろう。それこそ目に入れても居たくないぐらい可愛いのならば別だけど。
……二人ともそんな風に私のことを思っていたりするのかな。
「私は幾らでも親しくしている人から甘えて欲しいと思うタイプだわ。それこそ恋人にもね」
「男の人にも甘えて欲しいの?」
「ええ。自分は弱い姿を見せたくないと思うけれど、人のことは散々甘やかしたいの。好意的に思う異性から甘えられたらきっとそれだけで楽しいわよ?」
くすくすと笑いながらオーロはそう言った。
オーロは好きな人が出来たら、その人を散々甘やかしたいらしい。私は人に甘やかされて可愛がられてばかりだけど、それを誰かに与えたら楽しいのかな?
男の人を甘やかすかぁ……。
あんまりぴんと来ないかもしれない。私の親しくしている異性って、リュン兄様とか家族しかいない。あとは同じく魔法研究をしている人達? でも同僚なだけであって、親しいかどうかでいうと微妙。
……そう、そうなんだよなぁ。
だから私、異性とのかかわり方は本当によく分からない。というか異性じゃなかったとしても、同性ともそこまで関わってこなかったから未だに学んでいる状況なんだもの。
「試しにヴィオもフルダーナスさんのことを甘やかしてみるといいわ。きっと楽しいわよ?」
「例えば……?」
「そうね。頭を撫でてみるとか、褒め倒してみるとか、やって欲しいと言われたことをなんでもやってあげるとか。ああ、でも上手く行ったらデートするって言っていたんだっけ。そのデートの時も、叶えられる範囲でフルダーナスさんの言う通りにやってみるといいわ」
「急にそんなことをするのっておかしくないかしら?」
「好きな子から甘やかされたらとっても嬉しくなると思うわ。小悪魔ヴィオの誕生ね。そんな姿を見たら楽しそう」
「小悪魔ヴィオ……?」
「そう、異性を翻弄する小悪魔ちゃんになったら、とても可愛いだろうなって」
オーロは悪戯な笑みを浮かべて、そう言って笑っている。
異性を翻弄するような存在……って、その言葉だけ受け取ると嫌な人に見えてしまうけれどそうじゃないのかな。
男性を翻弄するって、親しい異性を揶揄うってこと? そんなことをされて嬉しいんだろうかと私にはよく分からない。
「そんなことをされて嬉しいの?」
「男女の駆け引きというものよ。少なくとも私が見ている限り、フルダーナスさんはヴィオに翻弄されても喜ぶと思うわ」
男女の駆け引き……。うん、そうだよね、オーロはあんな結婚生活だったとはいえ、結婚経験があるのよね。
私は誰かとそう言う関係に一度もなったことがないけれど、オーロはそういう点私よりも大人なのだ。
ちょっとやってみてもいいかも? 私に翻弄されるフルダーナスなんて想像がつかないけれど、私ばっかり照れさせられている気がするから……やり返したい気持ちもある。
「フルダーナスが帰ってきたら、試してみるわ」
でも本気で嫌がられていたら、やめるけれど。
だって私はフルダーナスに嫌われたくないなとは思っているから。




