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「ヴィオ、オウロイアの元夫の場所の目処が付いた」
私が本を執筆したり、王宮内の掃除をしたり、魔法の研究をしたりなどを続けている最中、フルダーナスがそう言ってやってきた。
とても楽しそうだった。
私とデート出来ると思って、こんな様子なんだろうなと思うと少しだけ照れくさい。
どれだけ、私のことが好きなのよ……。うん、そう実感すると思わず顔が赤くなりそうになる。
「そうなの? どこにいるのかしら?」
「場所は国境沿いの街だな。どこか苛立った様子と聞いている」
「へぇ? そうなの?」
「ああ。他国と内通しているのではないかとは思うが、まだ亡命出来ていないのだと思う」
「そうね。手土産がない状態だと亡命など難しいものね。何も持たない彼らのことを受け入れるメリットってないもの」
「そうだな。……そのせいでオウロイアが相変わらず狙われているんだろうが。それとヴィオの情報も探られているから気を付けてくれ」
「それは知っているわ。なぜだか、私の情報を探っているようなのよね。リュン兄様たちなら分かるのだけど……どうして私のことを調べているのかしらね?」
私は正直言って不思議で仕方がなかった。
だって嫁ぎ先も決まっていない第三王女で、基本的には表にもほとんど出てない存在なんて利用価値がそこまでない。
私の価値って、王族であること以外はそこまで高くない。
「理由は色々あると思うが」
「例えば?」
フルダーナスは私が魅了持ちであることを知っているかどうかは、私は把握していない。もしかしたら知っているかもしれないけれど……少なくともフルダーナスからそのことを告げられることは現状ない。
……魅了の力って、誤解されやすい力でもあるのよね。
フルダーナスから私が意図して魅了を使って、好き勝手しているって思われたら少し悲しいかもしれない。
場合によってはフルダーナスの私への好意も、魅了のせいかもって言い出す人も出てきそうよね。
そう考えると、この力って今の所何にも役立ってない。ただ生きにくいだけ。
……まぁ、時と場合によっては使い勝手があるんだろうとは知っているけれど。それでも使いにくい力だ。
「ヴィオは可愛いだろう」
「……可愛いから? そんな理由でわざわざ私の情報を集めるかしら」
「集めるだろう。見た目の良さというのはそれだけで十分に狙われる理由にはなり得るぞ」
「でも私よりも狙った方がいい存在は居るでしょう?」
「そんなことはない。それに魔法研究をしていることも知られているなら、そっち方面で調べている可能性もあるだろう」
「私の持っている情報なんて限られているけれど」
「あとは私がヴィオに求婚していることを知っているからというのもあるかもな」
「あー、それはそれであるかも? フルダーナスってそれだけ周辺諸国に名を馳せているものね。本当に凄いことだと思うわ」
フルダーナスは、我が国とグザックデーダ王国だけじゃなくて他の国々にも名が轟いている。
凄い人なのだ。当たり前みたいに私の元へやってきて、会話を交わしているけれども……。
本来なら私とこうして話すような人ではないんだよなと思ったりもする。
「私のせいで狙われているならすまない。ただどの場合でも必ず、ヴィオが危険な目には遭わないように守るから安心してくれ」
「ふふっ、あなたがそう言ってくれるならば安心ね?」
フルダーナスは凄い人だから、私はその言葉通りに守られるんだろうな。それが分かって私は思わず笑った。
「ところでオウロイアの元夫に関してだが、私が捕まえに行ってもいいか? その捕縛を手土産にヴィオとデートに行きたいんだが」
「それはお父様やリュン兄様たちに相談した上でね。でもあなたに動いてもらうのは、ちょっともったいない気もするけれど……」
他国の人間であるフルダーナスが勝手に捕縛しに行くわけにもいかない。
勝手に動かないあたりフルダーナスはその辺、しっかりしている。本能的に動くように見えて、そうではない。
それにしても“白炎の魔法師”がこの程度の事に動いていいのかしらとは思うけれど、本人がやる気満々だからいいのかしらね。
「フルケーヘン王国の国王陛下から許可が出たらいってきていいか?」
「ええ。それはもちろん。寧ろあなたが直接捕縛しにいってくれるなら必ず成功するだろうなという安心感はあるわ」
他の騎士や魔法師が動くよりも、彼が動いたらきっと何か予測不能な事態が起きても逃がすことはないだろうって信頼している。
私の言葉を聞いて、フルダーナスは「当たり前だろう?」と自信満々に笑った。
なんともまぁ、不敵。でもそれを出来るだけの実力が彼にはある。私はそのことを知っている。
――それからすぐにフルダーナスはお父様達に許可を取って、早速出かけて行った。




