62
フルダーナスは私の言葉を聞いて満面の笑みを浮かべた。
「それは嬉しいな」
「……このくらいでそんなに喜ばないでよ」
「そうはいっても嬉しいのは本当のことだ。ヴィオと仲良くなれた気がする」
「まぁ、出会った頃よりはそうね」
私がそう言うと、フルダーナスはまた嬉しそうな表情をする。そこまで喜ばれると、こっぱずかしい。
……この人は、私と本当に仲良くしたいと思っているのだなと思うと胸がぽかぽかした気持ちにはなった。
「ところでお願いは?」
「……そうね、もしオーロの元夫の情報を入手することが出来たら報告はしてほしいわ」
期待したように言われた言葉に、私は結局そう言った。
だって他国の人間に対処までやってもらうわけにもいかないじゃない。フルダーナスは私に求婚しているし、本人が私のために行動をしたいってことは分かっているけれど――だからといって彼になんでもかんでも頼むわけにもいかない。
だからあくまでお願いだと、此処までの範囲だ。
「それと、そうね……。もし私やオーロが危険な目に遭った際にあなたが傍に居たら、守って欲しいわ」
付け加えるようにそうも言う。
「了解」
頷いたフルダーナスは、何かを求めてくることもない。あくまで私のお願いを、ただ叶えたいと思っているだけなのだろう。
「……もしお願いが成功した時は、ちゃんと報酬は渡すからね」
やってもらってばかりというのも、貸しを作るのも嫌だと思った。
だからついそう言った。どちらにしても何かしてもらうなら、こちらからも何かしてあげたいと思うのも当然のことよね。
私はそう思っているのだけど、フルダーナスは驚いた顔の後、嬉しそうに笑った。
「報酬をもらえるのか?」
「当然でしょう? ただ働きなんて、あなたにさせられないわ」
身内だったらそういうこともあるのだろうけれど、あくまで今は王女と他国の魔法師という立場でしかない。だから、ただ働きなんてさせないわよ。
「それなら――私がそのお願いを聞いた暁には、デートして」
軽い調子でそう言われる。予想外の言葉を言われてしまって、私は驚いた。
「デート?」
「そう。ほら、オウロイアも一緒におでかけはしたけれど、二人では出かけていないから。私が居たら護衛も要らないし。それにヴィオの可愛い恰好も見たい」
「そんなの見たいの?」
「もちろん」
良い笑顔でそう言い切られる。
……確かにデートだとおしゃれをするものだとは聞いている。王族や貴族とかだと平民のように気軽にそういったお出かけは出来ないだろうけれども、やっぱり好意的に見ている相手だと、そう言う恰好をしようと思うんだろうか。
「そのくらいなら、いいわよ。……ただデートなんてしたことないから、期待はしないで」
私がそう言ったら、楽しそうに微笑まれる。
そんなに見たいものなのかしら。
「私におしゃれをさせるなら、あなたも魔法師としてではなくきちんとした格好して」
私だけだと恥ずかしい。だって望まれたからといって、私だけ気合の入った格好ってなんというか……私だけ乗り気みたいにだもの。
そういう私の気持ちを理解しているのか、フルダーナスは凄く楽しそうだ。フルダーナスは着飾ったら凄く綺麗なんだろうな。それを見るのは少しだけ楽しいかも、なんて思った。
「私も気合を入れよう。楽しみだ」
「……なんでもうデート出来る気になっているのよ?」
「ヴィオのお願いを私が叶えられないとでも?」
うーん、不敵。自信満々過ぎてびっくりする。でも鼻に付くとかそういうことはなくて、あくまで自然体だ。
でもきっと彼は私のお願いを叶えることなんて簡単なんだろうな。それだけの力を持っている人だから。
そもそも出来ないことなら、出来ないっていうだろうし。それか素直に他の人の力をかりそう。目的のためならなんだってきっとしそう。
うん、そう言う一面も多分持ち合わせている。というかそうじゃないと、国で活躍する魔法師になんてなれない。
何も考えていないように見えて、おそらくちゃんと考えて行動している。
私への求婚なんかも、突発的に見えるけれどおそらく違うんだろうな。
「そうね。あなたならすぐに情報を入手することぐらい出来そうだわ」
「ははっ、期待に応えられるように頑張るつもりだ。早くヴィオとデートしたいしな」
デートのために頑張るなんて、はっきり言われた。
素直というかなんというか、少なくとも私に対してはフルダーナスは嘘は口にしていない。
必要であれば気持ちを偽ることぐらいは場合によってはあるだろうけれど、本心なんだなというのが分かった。
「そう、なら頑張って」
私がそう言ったら、フルダーナスは嬉しそうに笑った。
そのうちきっと、私に情報が集まったと報告しにくるんだろうな。




