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「なるほど、オウロイアの元夫が何かやらかそうとしているのか。話を聞けば聞くほど愚かだな」
「ええ。だからもしかしたらフルダーナスにも迷惑をかけてしまうかもしれないの。その時はごめんなさいね」
フルダーナスにもオーロの元夫とその幼なじみが逃げ出した話は共有しておいた。だって彼が王女である私に会いに来ていることは、それはもう周りに広まっていることだったりする。
フルダーナスって、有名な魔法師だからそれだけ周りから注目を浴びている。
王女である私も、一挙一動が噂になったりする。それこそあることないこと誇張されたことが広まることも珍しくはない。
――だからこそ、オーロの元夫たちは何かよからぬことを企んでフルダーナスに接触する可能性もあった。
「別に構いません。そのような連中から迷惑をかけられても対処するだけですから。ヴィオは早くその者をどうにかしたいですか?」
フルダーナスは、お忍びで私をヴィオと呼んでからこうして私的な場だと愛称呼びをしてくるようになった。
というか本人は私を「ヴィオミーリナ殿下」という距離のある呼び名じゃなくて、「ヴィオ」と呼びたいらしかった。
真正面からそう言われて普通に照れた。でもまぁ、たまにお忍びにこれからもついていってもらうかもしれないし私も……フルダーナスと仲良くなれることは嬉しいので断らなかった。
気持ちを返せるか分からないから、私って中途半端だなとは思う。
ただオーロと話していた時のことを思い出して、まぁ、いいかとも感じる。
だって私を好きなのはあくまでフルダーナスがそうしたいからしていること。だからゆっくり考える。
寧ろ私が焦って返事をする方が、彼は嫌がるだろうって分かっている。
「そうね。出来れば早く解決したいの。オーロが危険な目に遭うのは嫌だわ」
「それでしたら、私にご命令をくださいませんか?」
そんなことを言われて、目をぱちくりさせる。
「命令? あなたは私の配下でもなんでもないでしょう?」
不思議なことを言うものだなと思った。
「そうですけれど、私はあなたが望むならなんだってしますよ。友人思いのヴィオが悩んでいる顔を見るのが嫌だから」
「……あなたって、私と結婚したいのよね?」
「もちろん。その気持ちは変わりません」
「それなら、命令とかいうのはやめてくれるかしら? それって全く対等なものではないでしょう」
フルダーナスの言い回しが少しだけ気に食わなくて、冷たい口調にはなってしまったかもしれない。
だって、命令だなんて……なんだか、変じゃない。
フルダーナスが私の言葉に驚いた顔をした。
「私は結婚相手に配下になることなんて望まないわ。命令なんて下す関係になろうとは思わない」
王女と、他国の魔法師。
そう言う立場だから上下関係は当然あるし、王族の私の立場の方が上だ。私が何か我儘を言えば、国家関係を悪化させるわけにもいかないからフルダーナスは望みを叶えなければならなかったりするかもしれない。
ただし、私個人としてはフルダーナスに命令をしたいと思わない。というか、したくない。
素晴らしい魔法師として活躍する彼が、無理やりそういう命令に縛られて、自由を失う姿は見たくないなってそう思った。うん、私は魔法師としての、フルダーナスを尊敬しているのだ。
その実力を知れば知るほど、凄いなと感心している。眩しい人だなとも。
だから私はついこんなことを言ってしまったのだ。
フルダーナスは、私の言葉を聞いてそれはもうおかしそうに笑った。
「いいな」
「え?」
「私はヴィオの、そういうところが好きですよ」
はっきりとそう言われて、耳が赤くなるのが分かる。全く! 恥ずかしがりもせずにそういうことを言うのだから!!
「この私が何でもしてやるって言っているのに、断るなんて本当に面白い」
「命じた方がよかった?」
「命令されても喜んで聞いたけれど、対等がいいと言ってもらえた方が嬉しいですよ。じゃあ、命令じゃなくてお願いしてください。配下とかそういうのじゃなくて、ヴィオを好きな一人の男として、ただあなたの望みを叶えたいんですよ」
……言っていて恥ずかしくないのかしら? 言われている私の方が滅茶苦茶照れるのだけど。
「……お願いね。考えておくわ」
これで私が望みを口にしたらフルダーナスは全力で叶えるんだろうなと思って、少し自重した。だって他国の魔法師に、英雄に……軽い気持ちで何かをお願いするのってどうかと思うもの。
「分かりました。お願いされるのを楽しみにしています。それと、オウロイアがやっているように私も口調をくだけさせてもいいでしょうか?」
「口調を?」
「はい。ヴィオともっと仲良くなりたいので。駄目ですか?」
「……公の場以外なら、いいわよ」
期待したように見つめられて、私はそう答えてしまうのだった。




