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結婚したいと思うのは、どういう時なんだろうか。私にはぴんと来ない。
政略結婚は私には求められていない。そもそも魅了の力のある私はそういうものは難しい。
結婚するとしたら私自身が納得しての上になるだろうけれど、結婚をしている人達は皆、どういう風に婚姻を決めているんだろうか。
正直王族や貴族の婚姻って、自分で決めないことも多いだろう。逆に平民達だとそういうことを自分の意思で決めるのよね。それは凄いことだなと思ったりもする。
「ねぇ、オーロの結婚は政略的な一面もあったのよね?」
「そうね。家にとって都合が良かったからというのもあるわ。ただ求められて、私もすっかりその気になってしまったからね。……結婚後の生活が幸せになるとそう思い込んでいたのは自分でも考えなしに決めてしまったなと反省はしているの」
「オーロの元夫が悪いのだから、そう言う必要はないと思うけれど」
「でも事前に情報を集めていれば防げたことだったから」
パーティーの翌日、オーロと私はそんな会話を交わす。オーロは自分の意思で結婚をしたのよね。そこには政略的な一面もあったけれど最終的にそれを決めたのはオーロでもある。
そういう決定をすることはかなり悩むことだとは思う。私はそこまで大きな決断をしたことはあまりないかもしれない。
周りから流されてばかりなんてことはないと思いたい。ただ私は何だかんだ上手くいく選択肢を周りから与えられて生きてきたというか、お父様達が整えてくれていた道を歩いていることが多いだろう。
私が今、好きなように生きているのは家族がそれを許してくれているから。そして今の情勢が平和だから。
その状況に甘えているのは、人によっては良くないと言われるのかもな。
「ヴィオはフルダーナス様のことを考えているの?」
オーロは私がなぜ結婚のことを聞くのかなどは分かっているみたい。楽しそうに笑いながら、私を見ている。
「……うん。昨日のパーティーでも思ったけれど、フルダーナスを求めている人って多いんだなって。それにフルダーナスは私に会いに来るためによくこちらの国にやってきているでしょ。それってどうなんだろうと思ってしまって」
本人は問題ないとは言っているけれど、気軽に来すぎではないのだろうかと少しだけ心配にはなった。
グザックデーダ王国の他の人達と接したからというのもあるけれど……、本当に大丈夫なのだろうか。
私がもっとはっきり言って諦めてもらった方がフルダーナスのためになるのでは? とそんなことも思わなくもない。
「ヴィオ、そんなことは悩む必要ないわ。フルダーナス様は自分の意思であなたに求婚すると決めて、あなたに会いに来ているのだもの。それで何かあったとしても結局本人の責任だわ。フルダーナス様を求めている人は私達では想像出来ないぐらいいるでしょうけれど、フルダーナス様が結婚したいのはそういうその他大勢じゃなくてヴィオなんだもの」
「それもそうかもしれないけれど……私が待たせすぎているのかなって。本気で私と結婚したいと思っているのならばもっとちゃんと向き合った方がいいのかなと思っちゃって。パーティーでのフルダーナス、私の前にいる時と違ったし……」
「ふふっ、そうね。フルダーナス様、ヴィオに会いに来ている時の方がずっと楽しそうだったわ」
「うん。パーティーのフルダーナスはあんまり楽しそうじゃなかった」
なんていうか普段とは違う笑みを浮かべていたというかなんというか……うん、いつもと違った。
「私もそう思うわ。でも向き合わなければならないと思ったからといっても結果をすぐに出す必要って全くないのよ? 向こうが求婚してきているのだから、待たせるだけ待たせたらいいわ」
「そう?」
「ええ。私も結婚の時に嬉しくてすぐに返事をしてしまったけれど、結局ああだったわけでしょう? 求められたから嬉しくなって、プラド様のことを全部信じようって思っていた。妻は夫の言うことを聞いて、慎ましく生きるべきだって考え方があったのかも。私、決定権をゆだねてしまっていたのよ。それもあって上手くいかなくて、結局気づいたら悪妻として広まっていたわ。だからね、ゆっくりでいいの。そもそもあなたがこうしてフルダーナス様と向き合おうとしているだけで私は嬉しいわ」
オーロは優しい表情と声でそう言った。
オーロは私が会いにいった時と比べて凄く前向きになった。これが本来のオーロなのだなと私は嬉しい。
確かにオーロみたいな考え方もあるんだろうな。
「嬉しいの?」
「ええ。だってヴィオは……魅了の力のせいもあるだろうけれど、そういうことに消極的でしょう? 何かがあればすぐに向けられた想いから逃げそうだもの」
「……よく分かっているわね?」
オーロはよく私のことを分かっているなと驚いた。
うん、私はフルダーナスに何か気になることでもあったら、すぐにその気持ちと向き合おうとしなかったと思う。逃げただろう。
「分かるわよ。だからほら、フルダーナス様はあなたのお眼鏡にかなって、向き合ってもいいと思ってもらえたということでしょう? 凄く良いことだわ」
オーロはにこにこしながらそう言った。




