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「そこの君は?」
ルンジャーは私たちが他の誰か――フルダーナスを連れてきたことに驚いた様子だった。それにしても流石にこんなところに隣国の英雄が居るとは思っていないみたいで、普通に話しかけている様子だ。
「私はフルダーナス。ヴィオ達の付き添いだ」
「俺はルンジャーだ。よろしく」
「よろしく頼む。……ヴィオ達とは親しくしているのか?」
そう言って探るようにルンジャーを見るフルダーナス。先ほどオーロから安心していいと言われたばかりなのに自分でも確認したいらしい。
私は呆れてしまった。
オーロはお酒を頼み、私は度数の低い飲みやすいものを頼んだ。あとはジュース。
「彼女たちがこの酒場を訪れた際は話をしているんだよ」
「そうか……。ヴィオには手を出そうとしないでもらえると助かる」
……なんで初対面なのに牽制しているの?
私は全くもう……という気持ちになった。
いわれたルンジャーも困っているじゃない! ルンジャーは驚いた顔をして、その後面白そうに笑った。
「なんだ、もしかしてヴィオを君は狙っているのか?」
「そうだといったら?」
「ははっ、面白いね。それでわざわざ俺を警戒しているのか。ヴィオは可愛らしい見た目をしているから酒場でも話しかけたそうにしている人は居るけれど、酔っ払いは俺や店員ではじいてはいる。あ、俺はそう言う感情はないから安心してくれ。君のような良い男と女性を取り合う気もないし」
ルンジャーはそう言って、敵対する意思はないとでもいうように朗らかに笑った。なんと言うか、ルンジャーは同性とも簡単に仲良くなれるタイプなんだなと思った。
私とオーロにも初対面からすぐに話しかけてきたし、人と話すのも得意なんだろうな。
そういうところは羨ましい。私はなかなか人付き合いは深くしてこなかったから。
「そうか。なら、良い」
「それにしても余程ヴィオに好意を抱いているのだね。もしかしてヴィオは中々靡いてくれないのかい?」
「そうだな。まだ頷いてもらえていない」
「ふぅん」
興味深そうに話を聞いているルンジャーは私の方を向く。
「見た限りフルダーナスはヴィオのことを真剣に好きなようだけど、何か不満なの?」
……本人にそんなことを聞くあたり、ルンジャーも良い性格しているわね。不満かぁ……。別に不満があるとか、そういうわけじゃない。
「フルダーナス自身に不満はないわ。ただ私が返事を待たせているだけ」
フルダーナス自身は、客観的に見ても良い男だとは思う。グザックデーダ王国で魔法師として活躍していて、見た目も良くて、悪い点は特にない。一部悪く言っている人はいるけれど、それは妬みなども向けられているからだろう。
フルダーナスは周りから慕われている方だろうけれども、敵がいないわけじゃない。そもそもどれだけ周りから好かれていたとしても全員から好印象を求められることはない。
「そうなんだ。あまり待たせると気持ちが冷めてしまったりもすると思うが……」
「その時はその時で構わないな」
ルンジャーは私のためを思ってそう言ってくれているというのは分かる。
フルダーナスが私を諦めた時に、私が彼に好意を持っていたらすれ違ってしまうから。
そういう悲恋をルンジャーは好きじゃないんだろうな。私もハッピーエンドの方が好き。世の中は綺麗事ばかりではなくて、悪いことだって当然起こりうる。ままならないことだって多くあって、どれだけ頑張ってもどうしようもないこともあったりする。
私は……フルダーナスのことを本当に思うのであればもっとはっきり断った方がいいのだろうか。
まぁ、今も断ってはいるけれども。
私は私の気持ちがこれからどんなふうに変わっていくかなど、さっぱり分からない。
「ルンジャー、余計なことは言わないでいい。それでヴィオが俺のことを完全に拒絶し始めたらどう責任を取る? 別に幾ら待たされても構わない」
「そうなのか。余計なことを言ってしまったな。二人が良いならいいが」
申し訳なそうな表情でルンジャーはそう言った。
それにしてもフルダーナスって私に対する気持ちを本当に全く隠そうともしないな。
落ち着いているのも私より年上だからこその余裕というべきか。
私だけが恥ずかしい思いをしているのは、面白くはない。
しかしフルダーナスを同じ目に合わせるとなると……うん、喜ぶだけな気がするわ。私は褒められすぎると凄く恥ずかしい気持ちにはなるし、そのくらいにして! という気持ちでいっぱいになる。
でも私がフルダーナスを褒めたら、彼は喜びそうだからな……。
「ところでルンジャーはそう言う相手は居ないの?」
私は話を変えるためにそう問いかけた。
私とフルダーナスの話ばかりされると、私がもっと恥ずかしくなるだけだわ!!
そういうわけでその日はなんとか話をそらしつつ、暗くなる前に王宮に帰ったのだった。




