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新刊コーナーを見て回ると、思わず口元を緩めてしまう。だって私がよく読んでいる魔法使いの方が書いたものもあったの!!
魔法書って専門的なものだから常に出版されるわけでもないのよね。この魔法使いの方の書いたものも久しぶりに出たものだわ。
というか、魔法使いの中でも本を出さない方って結構いるの。実際に魔法を使ったりすることばかりに熱心で、そういう技術を誰かに残そうとしない人も多い。
……考えてみると目の前のフルダーナスもそうよね?
私はフルダーナスのことをじっと見る。
「ねぇ、あなたはこういうの出さないの?」
図書館の利用客に迷惑をかけないように小声でそうして問いかける。フルダーナスは驚いた顔をしていた。
「ヴィオが共著してくれるなら考えます」
「私と……?」
「はい。本を書く気もなかったので。でもヴィオと一緒ならきっと楽しいですから」
そんなことを言われて、私も驚いてしまう。
私は確かに王宮勤めで魔法の研究をしている。グザックデーダ王国からは“フルケーヘンの魔女”と呼ばれているらしいけれど、言ってしまえばそれだけで……それ以上に特別なものなど私は持たない。
“白炎の魔法師”と呼ばれるフルダーナスが本を書くからこそ、意味があるのであって私がそこに混ざってもいいものだろうか。楽しそうだとは思うけれど、読む側からしたら私の存在は邪魔ではないのか? と思ってしまう。
「……私が共著なんてするのは釣り合わないと思うわ。魔法師としてはフルダーナスの方がずっと上なのだもの」
「そんなことはありません。私はヴィオの魔法技術が素晴らしいものだと知っています。寧ろあなたの名が一部でしか知られていないのはもったいないと思うので、共著はしてほしいです」
「なんだか、フルダーナスは私のことを買いかぶりすぎね?」
こうして期待されればされるほど、期待通りのことを成せなければフルダーナスは私から離れていくのだろうか? などと考える。
求婚は本気だとは思っていない。何れそんなことはしなくなるだろうと思っているのは本当のこと。
だけど私は魔法を嗜む者として、“白炎の魔法師”として活躍する彼の実力には敬意を持っている。
だからこそ私が共に本を作ることでフルダーナスに迷惑をかけてしまうのではないかなどと考えてしまうのだ。
「買いかぶりではないです。私は私の見た物を信じるので。あなたの実力は魔法書を出しても問題ないと思っているので」
「……そこまで言うなら考えてあげなくもないわ。ただきちんと許可をもらったらね? 許可が出なかったら出せないから」
私がそう言うと、フルダーナスは楽しそうに笑った。
フルダーナスと一緒に魔法書を作るか。考えてみると楽しそうだなとは思う。それにフルダーナスは、好意だけではこんな提案はしてこないだろうとそう分かっているから。
ただ私と一緒にいる時間を作りたいから、こんな誘いをしたわけではないないだろう。私の実力を認めてはくれているんだろうな。
……うん、そのことは嬉しい。
フルダーナスが私の実力を認めてくれていなければこんなことは言わないだろうってそのことが分かるから。
「ヴィオとフルダーナスさんで魔法書を作るのは素晴らしいと思うわ。私も読んでみたい」
オーロはそう言ってにこにこしていた。
「ねぇ、オーロ、フルダーナス。私はちょっとこの本を読むから、また後で集合をしてもいい?」
私は図書館で本を読みたくなったので、二人にそう言った。
二人は頷いてくれたので、しばらく読書に熱中する。
面白くてついつい読んでいるうちに時間が経過していった。……お父様から許可が出たら、フルダーナスと魔法書を作ることになるのか。私がこれまで読んできた魔法書は全て素晴らしいものばかりだった。
もちろん、読んでみたら面白くない魔法書も世の中にはあるのだろうけれど……あまりそういうのは読んだことないのよ。
私とフルダーナスで魔法書を作って、良いものが出来なかったら……。フルダーナスの評判に傷がつくのかしら? 責任が重いわね。
私はそのことを考えて、微妙な気持ちになる。言ってしまえば私はそのあたりの自信がないのかもしれない。
私は魔法師として、頑張っているつもり。魔法のことが好きで、研究も続けていて、実際に使うことだって出来る。一生懸命やっているつもりだけれども、フルダーナスに比べるとまだまだだと知っている。
でもフルダーナスは私と魔法書を作ることを問題ないと思っている。それは私の魔法師としての腕を信頼してくれているから。
……その信頼には応えたいとは思う。
うん、応えられたらきっと嬉しいだろうなと思う。達成感も得ることが出来て、良いことだらけだろう。
それに王女である私と、隣国の英雄の共著を出したら平和の証にはなりそう。
これから両国が手を取り合って生きていくと周辺諸国に示すものにはなるものね。




