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5/30 二話目
フルダーナスは忙しいだろうに、ちょくちょくこの国にやってくる。一度グザックデーダ王国へと帰った後も、時間を見つけてはよく王宮内をぶらついていたりするので、驚きだ。
暇なのだろうか?
そんな考えを頭をよぎったけれども、そんなわけがない。
だって彼は、“白炎の魔法師”だ。隣国では引っ張りだこの存在のはずだし、私にばかり構っているわけにはいかないはず。
……それなのに、気づけば何かしらの理由をつけてフルケーヘン王国の王宮に居ることが多かった。
「……ねぇ、オーロ。フルダーナスは来すぎじゃないかしら」
思わずぼそりっとオーロに向かってそんなことを言ってしまった。それも無理はないと思ってほしい。だって明らかに彼の立場でこんなにも我が国に居るのはおかしいことだもの。
私とオーロは今日はお仕事は休みなので、ゆっくりお茶をしている。
オーロの元夫の伯爵は前伯爵夫妻の行動で大分大人しくなっている。だけど水面下ではオーロのことを蹴落としたいとは思っているようだ。
基本的に私という王族がオーロの傍に居るから、彼女を悪く言う人は居ないけれどそれでもオーロの元夫とその幼なじみを擁護したがる愚か者はいなくもない。
そのため相変わらず出れるパーティーは出たり、お茶会に参加したりはたまにはしていた。
ただ今日は完全にオーロと二人でのんびり過ごしている。
「そうね。あの“白炎の魔法師”と呼ばれている方が此処までヴィオに会いに来るとは思っていなかったわ」
「本当よね。彼も忙しいはずなのに」
グザックデーダ王国側からは私は“フルケーヘンの魔女”と呼ばれているけれど、それは彼の“白炎の魔法師”と比べると知名度はかなりの差がある。私の呼び名なんて一部では知られているだけだ。でもフルダーナスの呼び名は、それこそフルケーヘン王国やグザックデーダ王国外にも広まっているぐらいだ。
彼は忙しいはずだ。
あちらの貴族達からも引っ張りだこだろうし、フルダーナスと話したい者は沢山いるらしい。
……それなのにフルダーナスよくフルケーヘン王国の王宮にやってきている。
「私もエネア様達にフルダーナス様のことは聞いたの。最近は女性との噂も無くなっているらしいわ」
オーロが楽しそうに笑ってそう言った。
フルダーナスはわずかだが女性関係の噂はあった。とはいっても一般的な成人男性ならばそういう噂があってもおかしくない。
その噂もぱったりなくなっているらしい。それは私自身も知っていることではある。
「そうね。私も知っているわ」
「それだけヴィオに本気って分かってもらいたいのかしらね」
「さぁ? 分からないわ」
確かに私に本気だって分かってもらいたいのかもしれない。ただ私はそのことを知ってもそこまで本気には取れない。
私を口説きたいというのは確かだろうけれど、その熱心さがいつまで続くものなのだろうか? とそうとも思っていた。
「ねぇ、ヴィオは……魅了の力が原因なのか、人間関係に少し冷めた部分があるわよね」
「そうかも」
「そう考えるとヴィオが手紙のやり取りしかしていなかった私に会いにきてくれたのって珍しいことだったんだなと今なら凄く思うわ。私に会いにきてくれて改めてありがとう、ヴィオ」
「確かに珍しい事だとは思うけれど、オーロは手紙のやり取りしかしていなくても私の特別なお友達だったから……あなたに会いに行きたくなったの。本当にそれだけよ」
私がそう言って笑うと、オーロも笑ってくれた。
なんだろう、私は人に心を許すまでが時間がかかるのかなと実感する。フルダーナスが本気のように見えるけれど中々信じられないのも、これまで生きてきた経験からだ。
私は王族の血を引く第三王女で、“フルケーヘンの魔女”なんて呼ばれている。だから政略的な結婚相手としては悪くないだろう。
ただそういうのを抜きにしてみると、私は結婚相手としては中々面倒な人間な気はしている。だからこそフルダーナスも、そのうち私に求婚することなんてやめるのでは? とは思ってしまっているのだと思う。
私はおそらく何かきっかけでもなければフルダーナスが本気だったとしても受け流してしまうだろうから。
「それでも私は嬉しいと思ったの。ヴィオが私を大切なお友達だって思ってくれていることがただただ嬉しい。でもあなたが周りを簡単に信じられなくても、ヴィオのことを好きな人は沢山いるから少しは話をしてみたいなって人が居たら近づいてみるのはありだと思うわ」
オーロは私のことを優しい瞳で見て、そう言った。
「うん」
私はオーロの言葉に頷いた。
やっぱりオーロと実際に会って、私の世界って広がっている気はする。オーロと一緒だと、今まで関わらなかった人とも関わろうと思うもの。
もしかしたら私はオーロのおかげで、フルダーナスとももっと話すようになるのかもしれないなとそうとも思った。




