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「私も同じような目にあったら、迷わずやり返すわ」
「まぁ、流石にヴィオミーリナ殿下にそんなことをする方は居ないわ。それにしても今思えば、どうしてあの頃の私はあんなに卑屈になってしまっていたのかしら」
オーロはそう言って、何とも言えない表情を浮かべていた。
オーロは過去のことで、自分が情けないと思っているのかもしれない。とはいえ、今のオーロは大分前向きになっているけれども。
「やっぱり環境は凄く大事なのだと思うわ。周りから散々、悪い様に言われてしまったらどうしても気分が滅入ってしまうものだから」
「卑屈ねぇ……。まぁ、確かに調べて思ったけれど、君がやられっぱなしだったのはびっくりしたかな」
「まぁ! フルダーナス様にも過去のことを知られているのは少しだけ恥ずかしいですわね。ただあの頃の私は初めての結婚生活だったのもあり、失敗ばかりだったのです。ただあの経験があったからこそ、今の私が居るとは思っております」
オーロは軽い調子でそう口にする。こういうところがオーロの良さだよなと思う。結婚生活中は凄く暗くなってしまっていただろから。でも今のオーロは凄く前向きなのよね。
私はオーロが修道院に行く前に会いに行けて本当に良かったと思ってならない。少しでも遅かったら、オーロに手を差し伸べることが出来なかったかもしれないのだもの。
「そうか。辛い結婚生活をしたというのに、前向きなのは良いことだ。いつまでもうじうじされると、気が滅入る」
……フルダーナスははっきりしているな。
多分、さっぱりした性格をしているからこそ過去のことを落ち込み続ける人を見たりするのはあまり好きじゃないみたい。
でも私もそうかも。一時的に落ち込んでしまったりするのは仕方がないことだとは思うけれど、その後もずっと同じことで悩み続けるのを見ていると少しだけ何とも言えない気持ちになってしまうかもしれない。
私はそんな風にも思った。
だって幾らこちらから「元気を出して」とか、元気づける言葉を口にし続けたとしてもそれを聞いてくれなかったらどうしようもないもの。
「流石にいつまでも悲劇のヒロインか何かみたいに落ち込んだりはしませんよ。ヴィオミーリナ殿下のおかげで、最近は凄く楽しいですから」
オーロはそう言ったかと思えば、自慢するかのように続ける。
「フルダーナス様はヴィオミーリナ殿下に対して求婚状を出していらっしゃるとお聞きしました。冗談でそのようなことはなさらないと思っていますけれども、ヴィオミーリナ殿下が嫌がることはしないでいただけると大変助かります。私も含めてヴィオミーリナ殿下を大切に思っている方々はこの国には沢山いますので、その時はご覚悟を」
急に真面目な顔をしてオーロがそんなことを言ったので私は驚いた。オーロにとってはフルダーナスという隣国の英雄相手にこのような発言をするだけでも勇気のいる行動だっただろう。
でも敢えて本人に告げたのは、他でもない私のことを大切に思っているからだというのは分かる。
「それは安心してもらっていい。ヴィオミーリナ殿下を不快にさせる気はない」
「そう断言していただけるのならば、一安心ですわ。ヴィオミーリナ殿下は同性である私の目から見ても愛らしい方ですので、フルダーナス様が出会って間もないにも関わらず求婚する理由は分かります」
……穏やかに笑ったかと思えば、オーロがそんなことを言い始めた。本人の前でそういうことを言わないでほしいものだわ。流石に恥ずかしいもの。
私は自分の見た目が整っていることは把握している。だから褒められたりすることはよくある。とはいえ、こういう身近な人から可愛いって真っすぐに言われると何だかむず痒い気持ちにはなった。
それにフルダーナスに向かってなぜか自慢げだし。
「ヴィオミーリナ殿下が愛らしいからも求婚の理由だが、元々“フルケーヘンの魔女”としての彼女のことは知っていたから興味は持っていたんだ」
「そうなのですね。ヴィオ……ヴィオミーリナ殿下は婚約者や結婚相手が居ないことが不思議なぐらいに魅力的ですから、フルダーナス様が興味を抱くのも無理はないかと」
オーロはヴィオと私を呼びかけて、慌てて殿下呼びに直していた。フルダーナスの前だからとそのあたりの遠慮はしているらしい。
「本当に婚約者などが居なくて幸いだったよ。そんな輩が居たら、なぜもっと早く出会えなかったかと後悔したことだろう」
……それにしても恥ずかし気もなく、さらっとこういうことを言うわね。一切、躊躇ないのを見るとどれだけ本気なのかしらと疑問に思う。
一時的なものだと思っているけれど、此処まで真っすぐだと継続的に続くような気持ちだと勘違いしてしまいそうになる。
「ヴィオミーリナ殿下にそう言う方がいらっしゃらなくて良かったですね。ただヴィオミーリナ殿下は先ほどお伝えした通り、素晴らしい方なので将来的には多くの求婚をいただくのではないかと思います。王族の姫君でもいらっしゃられるので、それこそフルダーナス様に引けを取らない殿方だって現れるかと。そのようなライバルがいたとしてもヴィオミーリナ殿下を諦めずに求婚なさることが出来ますか?」
……うん、何だかオーロはフルダーナスが真剣なのかどうかを精査しようとしているのかもしれない。




