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「ありがとう。休憩するわ」
私はそう言って笑って、差し出してくれた飲み物を口にする。喉に優しいお茶だ。もしかしたらわざわざ私の好みを調べて準備してくれたのかなと考える。
「“白炎の魔法師”様、私にまでありがとうございます」
「気にしなくていい。それに名前呼びで構わない」
「ではフルダーナス様と」
フルダーナスはちゃんとオーロの分も持ってきてくれているのよね。
三人でお茶をしながら、会話を交わす。
「ヴィオミーリナ殿下はいつもこうして熱心に研究をなさっているんですね。素晴らしいことです」
「そう? 私は此処で働いているから、研究を頑張るのは当然のことよ。私は社交の場にはあまり出ていないけれど、魔法の面で国に貢献したいと思っているの」
「それも王族としての一つの形として問題ないかと。ただ最近はパーティーに出ていると聞きましたよ?」
「そうね。オーロと一緒に、パーティーには出ることにしたの。あなたなら知っていると思うけれど、オーロは酷い婚姻相手に遭遇して相手がデマを広めているから」
「存じていますよ。それにしてもヴィオミーリナ殿下の友人にそんな真似をするとは命知らずな」
「ええ。私もそう思うわ。そもそも私の友人相手じゃなくても、人の尊厳を踏みにじるような愚か者は許してはいけないでしょう? オーロの元夫は更に愚かで、まだオーロのことを貶めようとしているみたいなの」
オーロの元夫たちのことは引き続き動向を探っているけれども、相変わらずオーロの文句は言っているみたいなのよね。
王族の参加する社交の場には出てこられないようにはしているし、前伯爵夫妻が動いてはいる。基本的に彼らに出来ることはほとんどないけれども――ただ彼らは未だにオーロを蹴落としたがっているのは事実だ。
「オーロも、もっと喋りましょう?」
オーロの方を向いて私はそう言った。
オーロはフルダーナスが居るからこそ、遠慮をしているみたいだった。フルダーナスの方を見ると、頷かれる。
「ヴィオミーリナ殿下の言う通り、遠慮する必要はない。私は友人と何気なく話すヴィオミーリナ殿下もみたいからね」
フルダーナスがそう言えば、オーロは頷く。少し緊張した様子だけど、オーロもおしゃべりに混ざってくれた方が私は嬉しい。
「では混ざらせていただくわ。確かに私の元嫁ぎ先は、未だに私を悪く言いふらしたいみたいだけど……ヴィオミーリナ殿下のおかげで彼らはもう好き勝手には出来ないと思うから安心しているのです」
「ふふっ、私が彼等にオーロを傷つけさせることはないから安心してね? 彼らの真実の愛も、最近では全く信じられていないみたいだもの」
私がオーロの傍に居るのだから、手出しは出来ないとさっさと諦めてくれたらいいのにね? どうしてこう、まだオーロに文句を言っているのかしら。
私は報告を聞く度にそう思ってならないわ。
「王族が友人と見ている者に未だにその調子で、伯爵家当主なんて最悪ですね。さっさと地位でも剥奪させた方がいいかと」
フルダーナスはそう言って不快そうな顔をしている。
オーロの元嫁ぎ先が伯爵家なことなども、事前に調べているのか把握しているらしい。
「そうね。ああいう存在が貴族家の当主だとそのうち取り返しのつかない大事でも起こしそうだわ。ただ、当主の座を奪うにはまだ弱いのよねぇ。伯爵の両親が屋敷の不始末は片付ける予定だけど……」
どう、片付けてくれるかしらね。ちゃんと私の望む処罰は与えるかしら?
もし子供可愛さに罰を甘くするようなら、流石に王家が介入しないとならないわね。逆にそれだけやらかしてもらっても、処罰を重く出来るからいいけれども。
「貴族夫人は屋敷の主の一人なのに、それを蔑ろにする存在は使用人としても不適合ですからね」
「ええ。私もそう思うわ。あなたの家は人を雇っている?」
「家の管理をする使用人は居ますよ。私の客の中には平民も多いですが、使用人はきちんと対応していますよ」
フルダーナスはそう言った。
フルダーナスは貴族の出ではあるそうだけど、既に自立していて貴族としての地位を持っているわけじゃない。身分的には平民だ。ただしグザックデーダ王国で一番の魔法師であり、発言力なども並の貴族よりはある。
魔法師や騎士は実力があれば身分などなくても、成り上がれる。彼の同僚には平民も多いらしい。どれも王宮仕えの魔法師や騎士だろうが。
そのフルダーナスの雇っている使用人の方が、伯爵家の使用人よりもまだまともらしかった。
というか、普通に考えて屋敷の夫人という立場の人間に嫌がらせをする使用人の方が頭がおかしい。
「あの頃は周りから色んなことを言われて、嫌がらせをされても仕方がないと思ってしまっていたけれど……確かにあそこの使用人は思いあがった人たちが多かったわ」
オーロは困った様子でそう言った。
本当にね。つかえる身で当主の夫人に嫌がらせをし、そしてその当主もそれを後押しするなんて信じられない家だ。
「今だったらもっとやり返すのになとは思うわ」
オーロはそうも言った。




