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「ほ、本当に息子がそのようなことを?」
「それが本当ならば、許されることではないが……申し訳なかった!!」
前伯爵夫妻はまだそのあたりはまともらしい。しっかり事情を聞いた上で、オーロに謝罪をしていた。
だけどこれって私という王族が居て、まだ冷静に話を聞くことが出来たからだと思う。そうでなければ……彼らは息子の言葉を信じ切ってしまって、オーロの話を聞かなかっただろう。
そもそもオーロは修道院に行ってしまって、弁明する機会はなかったかもしれない。
今回はたまたまこうして説明する機会が出来ただけなのだ。……そう考えるとやはり伯爵のしたことは許されないわ。
「謝罪は受け入れさせていただきますわ」
オーロがそう口にすると、前伯爵夫妻は期待するかのように顔をあげる。もしかしてこれで伯爵も許されたと思っている? 甘いわね。
オーロは私の方へと視線を向ける。私はそれに頷いて、口を開いた。
「オウロイアはあなたたちを許しただけよ。だから伯爵は駄目。少なくともオウロイアが許したとしても私は許さないわ。オウロイアはね、私の大切なお友達なの。あなた達はそれを知らなかったからこそ、伯爵の行ったことに目を瞑ろうとしたのでしょうけれど……相手が誰であろうと貴族令嬢としての尊厳を踏みにじるような行動を行ったことを私は王族としてどうかと思っているの。しかるべき処罰は受けるべきであり、反省をしなければならないわ」
私がそう言い切ると、前伯爵夫妻は何かを言おうとする。
だけどそれを遮るように私は続けて口を開いた。
「だからこそ、あなた達の方でもきちんと調べなさい。私から自分の息子のことをどうのこうの言われても簡単には納得出来ないでしょう? なら、伯爵の言うことばかりを信じずにあなた達自身の目で確認をすべきよ。あの伯爵に当主の座を受け渡したのはあなた達なのだから。それで私の言う通りオウロイアの尊厳を踏みにじる行為があったのならば、貴族として正しい対応をなさい。伯爵が正式な妻に対して酷い扱いをしたり、使用人が伯爵夫人にすべきではない行動をしているのならば、親として、そして伯爵家の前当主夫妻としてやらなければならないことがあるでしょう?」
私は前伯爵夫妻に対して、そう言って語りかける。
正直私は伯爵に対しては悪感情ばかりである。ただし、やるならば徹底的に誰にもばれることやった方が貴族らしいとは言える。おそらく私が知らないだけで、世の中には後ろ暗いことをしている人というのは居るだろう。もちろん、私が把握出来るものは出来る限りのことをするつもりだけど。
まだ伯爵が私にも悟られないぐらいの行動をする人じゃなくて良かったと改めて思った。
「はい。かしこまりました」
「もちろんです。第三王女殿下のおっしゃる通りのことが本当に起こっているのならば、幾ら息子といえども対応は致します」
私の言葉に前伯爵夫妻が頷いてくれてまだ良かったと思った。流石にこれで納得がいかないとか、どうのこうの言われたら本当に困ったもの。
「ええ。そうしてちょうだい。でもそうね、処罰を与える際にはもし可能なら私にも関わらせてもらいたいわ」
オーロが私の大切な友人だと、愚かな真似をした者達にも伝えておきたい。知らしめさせて、それから私の友人がとても素晴らしい人間であるということを宣伝したいわよね。
まだまだオーロは少しずつ前に進みだしたばかりだから、社交界の人々は悪妻と噂されて離縁されたオーロが私と仲良くしていることに関心はあるけれど、オーロ自身にはそこまでだろう。でも私はオーロならばきっと素晴らしい働きをするだろうって勝手に思っている。私が期待しすぎかもしれないけれど……。
私の大切なオーロが、周りから舐められっぱなしも嫌だしね。私がこれだけ動くぐらいの価値がオーロにはあるってもっと知ってもらいたい。このような言い回しをしたら、きっと前伯爵夫妻も私がどれだけオーロを大切にしているのか分かるだろう。
「分かりました」
「また調べ終えたらご報告に参ります」
そう言ってくれたので、私は微笑んだ。
これでまた一歩、先に進める。オーロに酷い扱いをしたもの達に正式に処罰を与えることが出来るのだもの。
オーロはそこまで伯爵家の使用人達にまで頭は回っていないだろうけれども、王族である私の友人が酷い扱いをされるのを放っておくなんてすべきではないもの。
それで下手にそう言う態度をしても問題がないと判断されたら、何をしでかすか分からない者達が出てくる。
前伯爵夫妻はそのまま王宮を後にした。私達に深く頭を下げて、どこか落ち込んだ様子だった。
やはり息子がやらかしたということを伝えられて、思う所があったのだろう。本人たちは対応をするといっていたけれど本当に出来るのだろうか?
家族の情があればあるほど、もしかしたら庇おうとするかもしれない。その時はその時で考えないと。




