31
さて、お母様と会話を交わした後、私はオーロに早速相談をした。もしかしたらオーロが嫌な思いをしてしまわないかなど心配にはなったけれど、オーロは穏やかな表情で前伯爵夫妻の話を聞いていた。
そしてオーロは前伯爵夫妻と会うことを判断していた。
オーロ自身は前伯爵夫妻と会話を交わしたのは、限られた数だけだったらしい。少なくともその時は特に問題はなかったらしい。
……とはいえ、その時の印象が悪くなくてもあの伯爵を育てた両親なので、一筋縄ではいかないだろう。
そもそも、自分からオーロに謝ろうとしないあたり私は色々と思う所がある。
「第三王女殿下、お会い出来て光栄です」
「この度はお時間を作っていただきありがとうございます」
現れた伯爵の両親はそう言って深く私に頭を下げた。王族への挨拶を優先するのは当然のことだ。
だけど挨拶をした後に、オーロに対して謝罪をしようとはしなかった。オーロが傍に居ることは把握しているだろうに。どちらかというと私と話すことを優先しようとしているというかなんというか……。
「あなた達が私にお話をしたいというのは分かりましたけれど、まずは私の友人であるオウロイアに謝罪をしてくださらない? 彼女はあなたの息子さんに酷い扱いをされていたのよ?」
思わずそう口にしてしまった。だって、そうするのが先でしょう?
私の言葉を聞いて、ようやく前伯爵当主はオーロの方を向いた。
「オウロイア、息子と行き違いがあったと聞いている。息子も申し訳ないと思っているようだから、許してくれないか?」
「私の息子も反省しているのだから、どうか怒りを鎮めてくださらない?」
……なんだか謝罪にもなっていない言葉を口にしているわね? もしかして伯爵から都合の良い言い訳を聞いているのかしら。
この言い方だとまるでオーロが勝手に怒りを表しているようじゃない。まるでオーロが悪いとでもいうような態度をしてくると何だか凄く嫌な気持ちになるわ。
オーロが下位貴族の出だからこそ、自分達の言うことを聞くと思い込んでいる?
「ねぇ、それは謝罪ではないわ。どうして私の友人に対してそのような態度をするの? ちなみに伯爵のことは調べさせてもいるけれど、申し訳ないと思っているとか反省しているなどは嘘ね。あなたたちは伯爵が何をしたか正しく理解をしていないの?」
もしかしたら隠居をしていた関係で、情報が伝わっていないのだろうか。そうも思った。
だからこそ、私はきちんと伝えることにした。
「第三王女殿下こそ、オウロイアから何を聞いているか存じませんが私の息子は本当に彼女に良くしていたのですよ。それなのに良い妻になって欲しいという願いを裏切ったのは彼女だと聞いておりますわ」
「いえ、それは違うわ。伯爵の新しい妻のことはご存じ? 伯爵はその幼なじみと結ばれるためだけにオウロイアのことを使い捨てようとしたの。悪妻などという噂が出回っているのもあなたの息子が、彼女を貶めるためだけに行動を起こしたのよ。あなた達の方こそ、伯爵からどういった話を聞いたのか知らないけれど、片方の言葉だけ聞くのは貴族に産まれたものとしてどうかと思うわよ?」
いら立ちをぶつけたくなる。だけど、こういう時は冷静に言葉を掛けた方がいい。だからあくまで冷静に言葉を選んで、笑みを浮かべて問いかける。
「これは王家に仕える者達に情報収集をさせて手に入った情報よ。あなた達は私がオウロイアに嘘を吹き込まれていると思っているようだけど、そのような事実はないの」
私がそう言い切ったら、前伯爵夫妻はぐっと黙り込んだ。
流石に此処で否定をすれば、王家に仕える者達を否定することになるという思考は巡っているのね。
これが伯爵だったらすぐに後先考えずに激高することが想像できるから、まだこの二人は冷静ではあるのかもしれない。
更に酷い存在を知っていると、思い込んで行動している前伯爵夫妻もまだ話が通じるように見えるから不思議な話だわ。
「そ、そうですか。しかし息子は……オウロイアがあることないこと話したせいで、王族の居るパーティーから締め出されてしまったと悲しんでいたのですわ。嫁いだ後、すぐにオウロイアは本性を現したのだと……」
「自業自得ね。あなたたちは、逆にオウロイアがどういう結婚生活を送ったのか正しく知らないのでしょう? オウロイア本人に話してもらうから、冷静に最後まで聞きなさい」
私は目の前の前伯爵夫妻のことを憐れに思った。
息子である伯爵のことを心から信じ切っていて、その結果、此処まで暴走してしまっているのだ。
まともな神経をしているのならば、オーロがどんな日々を過ごしていたか知ったら流石に伯爵の味方はしないとは思う。
そういうわけでオーロに色々と説明をしてもらった。……なんだか改めてオーロから話を聞くと、色々とモヤモヤするわね。伯爵ってどうしようもない男だわ。
ちなみにオーロの説明を聞いて、前伯爵夫妻はみるみる顔を青ざめさせていた。想像よりも息子がやらかしていたからだろう。




