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「美味しいわ」
「評判通りね」
案内された席で、二人でデザートを口にする。
私はクリームと果物をふんだんに使ったケーキを、そしてオーロは果物を凍らせたもの。
このお店のデザートの価格、そこそこ高額なのよね。それは魔道具を使って凍らせたりしているから。
この国は隣国と小競り合いをしているとはいえ、比較的平和だ。だからこそこういった生活に使うような道具の開発も盛んだ。もっと切羽詰まった状態だったら、戦いに纏わる魔法以外は開発していく余裕などないのだから。
それにしてもオーロがにこにこしていて、私も嬉しい!
こういうデザートのお店は基本的に女性が多い。恋人同士で訪れている人も当然居るけれどね。
私は恋人を作ったことは一度もないけれど、友人とくるのと恋人と来るのとではまた気分が違ったりするのかしら。
「甘味を食べると幸せな気持ちになるわよね。私、嫌な気持ちも一気に飛んでいくの。それに仕事の最中も、悩んでしまった時にはいつも甘い物を持ってきてもらうようにしているのよ」
私のやっている仕事って、思いついた際は形にするまで早いけれど詰まる時は詰まってしまう。
焦ってしまったりしている時なんかは特になかなか思い通りに進めることが出来なくて、空回りしてしまうことだってある。そういう時はいつも、甘い物を持ってきてもらうようにしている。
やはり気分が良い時でないと、良い発想が思い浮かばなかったりするのだから。
「ふふっ、分かるわ。私も悩んだ時とか、気分が沈んだ時は甘い物を食べて気分転換をしたくなるもの。それに他でもないヴィオと一緒だから、嬉しい。私ね、友人と思っていた方々とも疎遠になってしまっていたから何だか今の時間が夢みたいに感じられるわ」
――オーロの友人となると、下位貴族ばかりだろう。伯爵家という上位の存在が散々、オーロのことを悪妻と言いふらしていた。それが真実であろうが、あるまいがきっと関係なく、伯爵家にそうも言われるオーロと関わらない道を選んだのだろう。
寂しそうに笑うオーロを見ていると、もっと笑ってほしいなと思った。
どんな形でもいいから、オーロが幸せになればいい。私の望みってそれなのだ。これまで苦労した分、沢山笑顔になってくれたらいい。
「これからお友達を作ればいいわ。些細な理由で離れて行った子のことは気にしなくていいとは思うの。とはいってもオーロが過去の知り合いたちと親しくしたいのならば、私も力を貸すけれど……」
個人的にはそんな人たちと関わる必要はないとは思う。ただしオーロは今は縁が切れてしまった人ともまた仲良くしたいと思っているかもしれない。それなら私は彼等に働きかけることは出来るのだ。
「……そのあたりのことはまだ考えてなかったわ。でもそうね……、もし機会があるならちゃんと対話はしてみたいと思うの。その時は……ヴィオも一緒に居てくれる?」
「もちろん!!」
オーロはやっぱり、自信が喪失しているんだなとよく分かる。昔の知り合いに会いたいという気持ちと、会うのが不安だという感情が込み入っているんだろう。
考えてみると三年間も、オーロは外とのつながりを断絶されていたわけだ。三年も交友を持てなければ、薄く繋がっていただけの関係なら切れてしまうのも無理はない話。
……どう考えてもあの伯爵が悪いわね。彼のせいでオーロがしなくてもいい苦労をしなければならないのだもの。
「私もあまり友人を作ってこなかったの。それに特に必要ないとも思っていた。でもオーロがこれから色んな人と関わりを持っていこうとするなら、私だって同じように縁を結んでいきたいのよ」
例えばオーロが、この方とならば友達になりたいという人が出来たなら……。
そう言う相手とならば私だって仲良くなれる気がした。なんだかんだ私はあまり人と関わらずに生きてきた。
それでもいいと思っていたのは本音だ。
でもオーロと一緒なら、私の世界が広がることを嫌だと全く思わない。寧ろオーロの仲が良い人には私も挨拶したいもの!
「ありがとう。でも、ヴィオ、無理はしないでね? 嫌なことがあったら、きちんと言って。私は寧ろ私のためにってあなたが我慢する方が嫌だもの」
「ええ。もちろん。オーロも、私が良かれと思ってやっていることが実は迷惑だった……なんてことがあったら口にしてね」
「分かっているわ」
私の言葉にオーロは頷いてくれた。
それからはデザートを食べながら、沢山の話をした。もちろん、こういう誰が聞いているか分からない場で話してはならないことは喋っていないわ。誰も聞いていないと思って口にして、問題があったら大変だもの。
デザートを食べた後は、またぶらぶら買い物をしたわ。その間、特に何の問題もおこらず、暗くなってからは護衛たちに調べてもらった酒場に行くことになった。




