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「オーロ、あの伯爵のことは一旦置いといて、次の場所に行きましょう! 伯爵は少なくともしばらくは何も出来ないから安心してね」
あの伯爵のことを考えているとムカムカしてきた。だけれどもこうして楽しいお出かけの最中に嫌なことばかりは考えているのはもったいない。
そういうわけで私はそう言って笑った。
オーロは私の言葉に頷いてくれた。それから私達は美味しいデザートのお店に向かうことにした。
甘いものは私もオーロも好きなの。
王都は国の中心というだけあって、流行の物が沢山集まっているの。この国は果物も有名だから、それらを使ったデザートも有名なのよ。あとは王妃であるお母様も甘い物が好きだから、その影響も強いわ。
王妃がお気に入りというだけでも、事業として発展していくことも多いの。王族は影響力が強いのよ。
「やっぱり人気のお店は混んでいるわよね。少し並びましょう」
「ええ」
私達の向かったお店は、流石人気のお店なだけあって数え切れないほどの人達が並んでいた。
貴族も平民達も訪れるお店なの。貴族に関しては事前予約をして少しだけ融通がきいたりもする。だけど今回は急にお店に訪れることを決めたから、並ぶことにした。
私、こうやって平民たちに混ざってお店に並んだりするのも結構好きなの。何より、オーロと一緒ならどんな時間も楽しめる自信があるわ。
「丁度、今日は新作が出るみたいだわ。だから、こんなに並んでいるのね」
「そうね。凄い数だわ。でも不思議と、楽しいわ。三年間、こうして並ぶことさえもできなかったから、なんだろう、こうして当たり前のことが出来るだけで……楽しいの」
「オーロ、これから沢山、楽しいことをしましょうね? もう二度とオーロにはあんな嫌な思いはさせないからね?」
「ええ。ありがとう。ヴィオ。……私、領地でお忍びでお出かけしたことはあったけれど、こうしてお友達と一緒にデザートを食べに行くのは初めてだから嬉しい」
オーロは嬉しそうにしているのを見ると、私も胸が温かくなった。
「聞いた? さっき貴族が騒いでいたんだって!!」
「怖いなぁ。そう言う貴族に絡まれたくない」
前に並んでいる平民たちがそんな会話を交わしていた。先ほどの伯爵が騒いでいた件はすっかり噂になっているみたい。それはそうよね。
平民たちからするといきなり騒ぎを起こす貴族って恐ろしいものだもの。貴族の一言でその人生が閉じてしまったりすることも無くはない。
「それがその貴族ってあの真実の愛で結ばれたと噂されている方なんだって」
「ええ? どういうこと? 確か悪い奥さんを追い出して、結ばれたって話よね? 私、劇で見たわ」
……伯爵とその幼なじみは徹底的にオーロを悪にするためにか、平民達にもそういった噂を徹底的に広めてしまっていた。
劇などといった形にして、平民にも伝わる形で。
私がオーロの友人じゃなかったら、彼女はそのまま悪妻として修道院に行ってしまったことだろう。それで伯爵とその幼なじみは、真実の愛で結ばれた存在として広まっていく。
最悪ね。
さて、オーロが平民達にも悪く思われているのも嫌ね。此処まで平民に広まっているとは思っていなかったけれど、困ったものだわ。
伯爵家は劇団なども有名らしいから、その関係で広めていたのでしょうね。じわじわと平民にまずは広めて、次は貴族達に広めようとも思ていたのかしら。
「あら、その話は嘘だって聞きましたよ!」
私はにっこりと笑って、私よりも年上のお姉さん方に話しかける。
「え、そうなの? あなたは……?」
「あなた達が興味深い話をしていらっしゃったから、つい会話に入ってしまったの。ごめんなさい。でも私、聞きましたの! 悪い奥さんと呼ばれている方がそうではないのだって」
私はそう言って意気揚々と話しかける。人懐っこい笑みを浮かべて、警戒されないように気を付ける。
オーロは私が急に会話に入ったから驚いた様子だった。
向こうが噂を使ってオーロのことを貶めているのならば、私だってオーロが悪くないってどんどん広めるわ。
「実は伯爵って、幼なじみの方と結婚するために悪い奥さんと呼ばれている方を利用していたのだって! 自分たちを真実の愛だと広めて、都合の良いようにしようとしていたって。だから、先ほど騒いでいたというのも本性が出たのではないかしら?」
噂を広めるとはいっても、私が口にしているのは真実だけれども。あくまで聞き知った風で伝えている。
大きな声で喋っているので他の並んでいるお客さんも興味津々と言った様子だ。
ここからどんどんオーロではなく伯爵たちが悪いというのが広まればいいと思うわ。
そんなこんなしていると、あっという間に時間が過ぎて行って私達の順番がやってきた。




