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「それならいいが……」
「あのね、リュン兄様。私は魅了の力があるから、多分、恋って難しいと思うの。だからそんなことを心配しなくていいのよ?」
私がそう言うと、リュン兄様は傷ついた顔をした。ああ、リュン兄様は、私が誰とも結婚しないつもりなのも嫌なんだろうな。
王女や令嬢という立場だと、結婚って重要なものだから。
私だって恋や結婚に夢を見ていないわけじゃない。私の周りには幸せな夫婦がいて、その姿を見ているととても素敵だなと思う。
小説などを読んでいても、ドキドキしたりもする。特別な誰かと出会えたらきっと幸せだろうなってそうも考える。
だけれども現実的に考えると私の立場ではただ好きな相手と結婚するって難しい。私は結婚相手は自由だって言われているけれどだからこそ余計に難しいなと思う。
一人で生きて行くと今の私はそう思っている。
「ヴィオ。君は力のせいで、大人にならざるを得なかった。魅了の力のことを誰よりも知っているからこそ、周りと親しくなることに躊躇しているんだろう。でも深く考えずに人を好きになったり、近づこうとしていいんだ。……もちろん、相手のことはきちんと調べさせてもらうけれど」
リュン兄様はそう言ってにっこりと笑った。優しい笑みを浮かべて、私を見ている。幼い頃はこんなリュン兄様のことも私は警戒してしまっていた。……魅了の力が暴走するかもしれないからって関わることが出来なかった。
接触をすると互いのためにならないからって、私達は距離を置いていた。特に子供って、魅了の力の影響を受けやすい。流石に他の王族の子供が魅了の力で精神に悪影響を与えることだけは避けたかったのだろう。それも仕方がない話だ。
「リュン兄様ってば心配性なんだから、私はそこまで子供じゃないのよ。ちゃんと私は誰かと仲良くなる前に調べるわ。もちろん、一人だと調べ切れない部分も大きいからリュン兄様たちの力は借りるつもりだけど」
私ももう十七歳。
周りに心配されるだけの無力な子供では決してない。それなのにリュン兄様たちはいつまでも私のことを子供だと思っているみたい。
やっぱり妹や弟などの存在って、上の兄妹たちからしてみたらいつまでもそうなのかな。
「そうだな。もうすっかり大きくなっていることは知っている。それでも私にとってヴィオは可愛い妹だから、心配なんだよ。君に悪い虫が付いたらと思うとハラハラしている」
「リュン兄様、大丈夫よ。というか、もし仮に好いた方などが出来たらちゃんとリュン兄様には伝えるわ」
私は恋なんていうものをしたことがない。だからこそ、誰かに恋をした場合はどういう対応をしたらいいかさっぱり分からなくなるだろう。
私の立場を考えれば、不用意な行動は避けるべきということは知っている。
「ああ。そうしてくれると嬉しいよ。ヴィオのことは私や父上が責任をもって守るつもりだけど、注意はするように。最近、友人が出来たからと表で動いているだろう?」
「ありがとう、リュン兄様。確かに私、オーロを連れて色んな所に行きたいとは思っているわ。私の友人が嫁ぎ先で大変な目に遭ったのですもの。だから、その状況をどうにかしてあげたいの。もし外で狙われたら魔法で対処はするわ。ただあまり心配はしていないの。リュン兄様が私のことを他国に知られるような真似はしないと思うもの」
私はそう言ってリュン兄様に向かって笑いかける。
私はリュン兄様がどんな方なのか知っている。リュン兄様が私の情報が外に出ないように一生懸命頑張ってくれているんだろうな。
それが分かるから、私の情報って外に広まったりしない気がする。周りからしたらリュン兄様を信頼しすぎだって思われるかもしれないけれど、私はそう思っている。
「そう言ってもらえるのは有難いけれど、危険な場所には飛び込まないようにね? それにしても君にそれだけ力になりたい友人が出来たことはとても喜ばしいことだよ」
「もちろん!! ねぇ、リュン兄様は三年間もなかなか外との付き合いが出来なかったオーロに何をしてあげれれば一番いいと思う? 私もね、あまり人と関わってこなかったから何をするのが一番喜ばれるんだろうって分からなくて」
そう、私はオーロに楽しんでもらいたい。オーロは私と話していて笑っていてくれているけれど、もっとオーロが幸せに前向きに生きて行くためにはどうしたらいいかなってずっと考えている。
「人によって何を喜ぶかは違うよ。ヴィオの友達の事は一番君が知っていると思うから、ヴィオが良いと思った行動を起こせばいいんだよ」
リュン兄様はそう言って優しく笑ってくれる。なんだろう、私のやることなすこと全て許してくれそうな感じがする。
「うーん、じゃあ私もオーロも魔法が好きだから、魔法師たちの所を見学に行ったりとか、王都内の魔法具を見に行ったり……あとはそうだわ、流行の劇なんかを見に行くのもいいかも? 私も王都で買い物をしたりもあんまりしないからお出かけするのもあり?」
結局なんというか、私が楽しめることを口にしてしまっているかも! でもオーロも楽しんでくれる気がする。
オーロに相談してから、決めてみようかな。




