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4/16二話目
「グザックデーダ王国との小競り合い、もうすぐおさまるかもしれない」
「え、そうなの?」
私は一番上のお兄様――王太子であるリュエンダン・フルケーヘンの言葉に私は驚いてしまった。
隣国であるグザックデーダ王国とは長い間、小競り合いをしている。そしてそれはすぐにおさまるものではないというのを知っていた。
互いに引く気も全くなく、このままずっとこの状況が続いてくだろうと思っていた。
「ああ。向こうもいい加減、この小競り合いを終わらせたくなったらしい」
「ふぅん。そうなんだ。じゃあ嫌がらせの魔法ってもう必要なかったりする?」
「いや? まだどんどん増やしていいよ。おさまる気配があるだけでまだどうなるかは定かじゃないからね」
リュン兄様はそう言って笑っている。
何だか凄く食えない笑みを浮かべている。リュン兄様は如何にグザックデーダ王国を出し抜いて、我が国有利にすすめようかなどを考えているんだろうな。
リュン兄様らしい。
敵に回したら怖いなとは思うけれど、リュン兄様は私のことを可愛がっているので私が余程のやらかしをしなければそんなことはありえないだろう。
ちなみに今、オーロは傍には居ない。私はオーロとずっと一緒にいるのは楽しそうって思うけれど、オーロにも一人の時間が大事だもの。それに今回はリュン兄様から私に話があるって呼ばれたからね。
だから今、リュン兄様と二人でおやつを食べているの。
宮廷料理人の作った果物を使ったケーキ。私が甘いものを好きなのを知っているから用意してくれたんだろう。エネア義姉様などの姿もないのは、多分、リュン兄様が私と二人でゆっくりしたいって思っていたからだと思う。
私のお兄様やお姉様たちって、私と二人で過ごす時間も大切にしてくれている。そう言う時間も作りたいって思ってくれているみたいで、こうやって過ごすことも少なくない。
リュン兄様って王太子で、凄く忙しいはずなのに家族と過ごす時間をちゃんと作っているんだよね。
とはいっても私だけを優先するなんてことはもちろんなくて、他の家族との時間も作っているけれどね。
王族の姫の中で私だけが嫁がずに王宮に留まっているから、リュン兄様と会う機会が多いっていうそれだけの話なのだけれどね。
「そうなの? なら、私もっと一生懸命魔法考えるね?」
「ああ。……それと向こうの魔法使いたちは、君を気にしているようだから気を付けるように」
「気にしているってどういう感じなの?」
「どういう目的であるのか定かではないけれど、探っているのは確かだよ。名前やどういった人物かなどを知りたがっているようだ」
「ふぅん?」
「向こうは君のことを“フルケーヘンの魔女”なんて呼んでいるらしいからね」
なんで、私、こう……こっぱずかしい名前を沢山つけられているんだろうね? リュン兄様の言葉を聞いて思わずそんなことを思ってしまった。
「私の性別だけは知られているのね」
「開発された魔法の癖などから性別が推測出来たらしいな」
「なるほどー。魔法に詳しい人ならそういうの気づけるものね」
「“白炎の魔法師”が特に君のことを知りたがっているようだな」
「えー? なんで?? 私が散々、魔法で嫌がらせしているから目をつけられてしまったのかな」
“白炎の魔法師”というのは、グザックデーダ王国でも有名な魔法師である。
その魔法師は私と違って小競り合いの現場に現れることもたまにあるらしい。実際に実戦も経験しているような存在だからなぁ。
なんで私のことを知りたがっているんだろうか?
「どうだろうな。ヴィオの情報は向こうに流さないようにはしているが……停戦するのならば、会うことにはなるかもしれない」
「あー、まぁ、うん。それは仕方ないわよ。私も“白炎の魔法師”の魔法には興味があるわ」
「……ヴィオ」
「あら、リュン兄様、どうしてそんな顔をしているの?」
私は目立ちそうだし出来れば会いたくないなって気持ちと純粋に“白炎の魔法師”の魔法に対する興味から会ってみたいって気持ちの両方がある。
だから素直にそう言ったのに、リュン兄様は苦虫をかみつぶしたような表情をした。
「ヴィオが彼に惚れたらと思うと気が気じゃない!!」
「え? 何、それ??」
「“白炎の魔法師”はそれはもう異性人気が高いらしいと聞いている。異性は漏れずに見惚れるんだとか」
「もう何を心配しているの? 大丈夫よ、リュン兄様。私、そんなに惚れっぽくないわ。それに綺麗な男性ならリュン兄様たちで見慣れているわよ」
どうしたんだろうと思っていたら、私がその魔法師に惚れないかというのを心配して仕方がなかったらしい。
本当に何を心配しているんだろうね?




