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「それにしてもこういうきっかけとはいえ、ヴィオがパーティーに出てくれるのは嬉しいわ」
エネア義姉様はそう言って笑みを浮かべた。優しく、慈しむような笑みを見ていると私も幸せな気持ちになる。
きっと私が魅了の力を制御出来るようになっても表に立とうとしなかったことで、心配はかけてしまっていたんだろうな。
私が人と関わろうとすることを躊躇しているから、無理強いを決して周りはしてこなかった。
だけれども、本音では私にもっと人と関わって欲しいとは思っていたんだろうなとは思う。
私に魅了の力があるから、人と関わることで危険な目に遭うかもしれないと分かっていても――王族として社交界に少なからず出た方がいいという考えは分からなくもない。
私は閉じられた世界を生きていたので、もう少し交友関係を広げたら得られるものだってきっとあるだろうしね。
「オーロを一人でパーティーになんて行かせたくないもの。それにオーロと一緒なら、パーティーだって楽しいと思うから」
「ヴィオミーリナ殿下、ありがとうございます」
オーロはエネア義姉様の前だからか畏まった態度をしている。そのことに少し不満に思って頬を膨らませる。
「ねぇ、エネア義姉様。この場ではオーロが砕けた口調になることを許してくださる? 私、オーロが他人行儀な態度をすることがとても悲しいの」
エネア義姉様が許可をしてくれないと、オーロはいつも通り喋ってくれないだろう。
「ええ。もちろんよ。オウロイア、普段通りヴィオと接してもらって構わないわ」
「は、はい。かしこまりました」
オーロは相変わらず緊張した様子で、エネア義姉様と接している。
「良かった。オーロが私に畏まってばかりだと寂しいもの。ねぇ、オーロ。パーティーに出て、もし仲良くなる方がいても私とは変わらず仲良くしてね?」
「もちろんよ。ヴィオミー……ヴィオとはあなたが許してくれるなら、一生涯の友達でいたいわ」
私の言葉にオーロがそう言って笑ってくれる。そのことに嬉しくなった。
私のオーロへの友情は、重いと自分でも自覚している。でも魅了の力を持つ王族である私にとって、ただ友人で居てくれる人を作ることも難しかった。オーロとの手紙のやり取りが私にとっては宝物のような時間で、こうして実際にオーロと会ったら更に彼女と出会えたことが奇跡だなって胸がいっぱいになっている。
「ヴィオは本当にオウロイアと仲良しなのね? 友人と会話を交わすヴィオを見れるなんて思っていなかったから、ほっとしたわ。先ほどは警告をしてしまったけれど、ヴィオに友人がいることは私も嬉しいの。私達の大切な子をよろしくね?」
「はい。私がヴィオミーリナ殿下の傍に居ることを許してくださりありがとうございます」
全くエネア義姉様ってば、私のことが大好きなんだから!!
「ねぇねぇ、オーロ。パーティーのドレスどんなものがいい?」
「どんなもの……私、流行などもあまりよく分からないわ」
「オーロが着たいものでいいの。何も思いつかないというのならば、私とお揃いにしない?」
私はつい、そう提案してしまった。
私は友人なんてものが全然居ないので、小説などで見かける友情の証でお揃いのものを持つなどのことにも凄く憧れていた。子供の頃は特にそうだった。
いつか、大切な友達が出来たらって……そんな淡い期待を抱いていた。
大人になった今はそのことも忘れていたけれど、オーロと会って、その気持ちを思い出したのだ。
「まぁ、それは楽しそうだわ。でもヴィオとのお揃いのドレスなんて、物凄く高価なものでないのかしら……」
「費用は気にしなくていいわ。私の今まで使ってなかった費用があるから」
私がそう言ったらオーロには困った顔をされる。
「その申し出は嬉しいけれど、私は出来ればあなたと対等でいたいの。男爵令嬢の身でこんなことを言うのは何様だと言われるかもしれないけれど、ただでさえ今、私はあなたに沢山のものを与えられていて返せていない状況だからそんな高価なものを無償で受け取りたくはないわ」
「なら、オーロが働いた分のお金で賄えるだけの費用にしましょう! 魔法で少しだけアレンジするのもありだと思うの」
私達の働いている魔法研究所は、王宮の部署というのもあって給与も良い。それで賄える範囲だったらいいかなと思ったの。
オーロは「それなら……」と頷いてくれた。
オーロとドレスをそろえられるなんて、とても嬉しい。
私たちがにこにこしながらドレスの相談をしている様子を、エネア義姉様は優しい目で見つめていた。
――さて、そうやってパーティーの相談をしてしばらくして、その日がやってきた。




