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4/12 二話目
「よく来てくれたわ。ヴィオ、それにオウロイアも」
エネア義姉様は、美しく輝く金色の髪を持つ女性だ。華があるというか、なんというか、いつまでも見つめたくなるような綺麗さだ。
「エネア義姉様、おはよう。今日も麗しいですわね!」
「は、はじめまして。オウロイア・アスールファと申します。王国の偉大なる太陽に拝見できますこと……」
エネア義姉様のことを見ているだけで、ついつい笑顔になってしまうわ! なんて私が呑気に考えている隣で、オーロは堅苦しい挨拶をしようとしていた。
公の場ではないから、もう少し軽くてもいいのだけど……。
それにしても緊張しているオーロも、可愛らしいわ!
「堅苦しい挨拶は不要よ。あなたのことは把握しているわ。私の可愛いヴィオがお世話になっているようね」
「エネア義姉様?」
笑みを浮かべながらもエネア義姉様は、少しだけ厳しい表情をオーロに向けていて思わず不思議に思って呼びかけてしまう。
「昔からヴィオと手紙のやりとりをしていて親しい友人であったことは聞いているわ。それにヴィオがあなたのことを大切に思っていることも知っているの。ただ、私はあなたがヴィオに関わることで――」
「エネア義姉様! 私のことを心配してくれているのは分かるけれど、オーロにそんな注意をしようとしなくて大丈夫!」
私はそこまで多くの人達と関わってきているわけではない。どちらかというと世間知らずな自覚はある。
社交界にも全然出ないし、限られた人たちとしか交流をしていなかったりする。
だからこそエネア義姉様は心配してくれているのだと思う。特に他のお兄様達が私が望んだことだからって、オーロを王宮に連れてきたりもしたわけだから自分ぐらいは警戒をしないと! と思っていてくれているのかもしれない。
エネア義姉様の立場なら、わざわざ私の聞こえる場所で口にする必要もない。私と関わらせない方がいいと判断したのならば、秘密裏に……それこそ私に知られないように対処することだって出来ただろう。その行動をしなかったというだけでも、エネア義姉様は私がオーロといることを認めてくれている。他でもない、私が関わると決めたと知っているから。
ただどうしても私のことを可愛がって仕方のないエネア義姉様はオーロのことを警戒してしまったりもしているらしかった。
「王太子妃殿下、あなた様が私のことを警戒するのは当たり前のことだと存じます。私がヴィオミーリナ殿下の傍に居ることでよからぬ者たちが近づいてくるような可能性もあります。本来なら私はヴィオミーリナ殿下の申し出を断って、大人しく修道院に行くべきだったかもしれません。……ただ私はヴィオミーリナ殿下が会いに来てくださっていて嬉しかったのです。こうしてヴィオミーリナ殿下の傍に居ると決めた今は、全力を尽くして、互いのためになれるようにするつもりです」
私はオーロが堂々とそう言い切ったことに驚いてしまった。
結婚生活中にオーロの自尊心は、おそらくボロボロになってしまった。それだけの態度をされていたのだから。
だからもしかしたらエネア義姉様がこんなことを口にしたら、オーロは怯んでしまうのではないかと思わなくもなかった。オーロは、あのまま私の申し出を振り切って修道院に向かう可能性も十分にあったのだ。
本当に間に合って良かった。オーロが私の手をとってくれる状況でほっとした。だって後から知って、もうオーロと話せない状況になって手遅れになっていたら……私はきっと後悔してしまっていた。
結婚生活が酷いものだったのもあって、今のオーロって少しだけ人と関わることや目立つことを躊躇してしまう傾向にはあるとは思う。
そんなオーロが私とちゃんと関わって行こうって、腹を括ってくれているんだなと分かった。私のことを友人だと思ってくれているから。
――私はそれが嬉しくて、ニマニマしてしまいそうになる。
「そう、覚悟をしているならいいわ。他の誰が許しても私はあなたがヴィオにとって良くない存在になり得た時はそれ相応の対応をさせていただくから覚悟してね?」
「はい。もちろんです」
それにしてもオーロは、エネア義姉様相手に全く引かない。目をまっすぐに見て答えている様子を見ると、オーロの芯の強さが伺える。
エネア義姉様ってとても美しい人だけど、力強さもあって、威圧感のある時もある。私はそういう厳しさを向けられたことは全然なくて、エネア義姉様の優しさを知っているから怖いと思うことはない。
でも特に初対面の人だと、エネア義姉様のことを怖いと感じて萎縮してしまう人も当然居るのだ。
私はオーロのことも、エネア義姉様のことも好きだ。
だから、オーロがエネア義姉様に怯えていないことはほっとした。
「なら、いいわ。それだけの覚悟を持っているなら、私はあなたをヴィオの友人として受け入れましょう。さて、この話はこのくらいにしてこれから楽しいパーティーの話をしましょう」
エネア義姉様は前半は難しい顔をしていたけれど、後半は優しい笑みを浮かべてくれていた。
エネア義姉様は私の事を思って警告はしてくれているけれど、ちゃんと私達がパーティーに出る際の補助をしてくれようとしていた。




