絶対に逃がさない!
亥・子の章、更新いたしました。
再びメリーナの身体がしばらくの間ほのかに白色に輝き、やがて虹色に変わっていくと一点を見つめ、その方向にメリーナは一気に駆け出していく。
「メリーナ!そっちか!」
あわててシンダラが追いかけると、別荘の裏側の勝手口から数人のいかにも身分の高そうな身なりをした者達が馬車に乗り込もうとしていた。
「ビカラさん逃がしませんよ!」
メリーナは大声で馬車に向かって叫ぶ。
「何事だね?」
別荘の主らしき人物が驚きながら振り返ると、馬車の回りの警護の者達が一斉にメリーナの前に立ちはだかる。
「違う、あなたたちじゃない!邪魔をしないで!」
メリーナは、黒剣をその手に召喚しながら高く跳躍し護衛の頭上をも飛び越え馬車のすぐ横に着地する。
「あなたよね、ビカラさん」
馬車に乗り込もうとした貴婦人達に使える使用人姿の老婆に剣を突き立てる。
「・・本当に天敵のような娘だよ」
そう小声で言いながら老婆は、わざとらしく脅えたそぶりを見せ貴婦人達の背後に倒れこむ様に隠れた。
護衛達はメリーナに切り込もうとするが、追いついたシンダラが割って入ってくる。
「ここは任せて!ビガンを」
シンダラはそう言いながら金長棒を振り回す。
馬車の下をくぐり抜けて背後に回り逃げ出そうとする老婆を追って、メリーナは馬車を飛び越える。すると着地した瞬間に、数百ものネズミがメリーナの身体をおおう様に襲い掛かってくる。
「えっと・・ピュリファイ!」
メリーナが叫ぶと、ねずみ達は虹色の七色の光に包まれると、見る間に正気に戻って散っていった。
「まったく、こんな事は初めてだよ・・街を心配しなくて良いのかい?」
老婆、ビカラは、メリーナをさげすむ様な目で見つめながら、あの仮面のような笑顔で笑う。
「みんなが頑張ってくれている!人を操り自害させたり、暴動を起こしたり、あなたを絶対に許さない!」
メリーナがそう言うと同時にビカラは、どす黒く灰色の大きな鼠の姿に変化していく。
「逃げきってやるよ!」
そう言うと、物凄いスピードで森に向かって走り去っていった。
「逃がさないよ!」
メリーナは時魔法のタイムアクセルを使用して追撃を開始する。
「追って来る。なんなんだよあの娘は・・確かに化物だね」
機敏な動きで木々などの障害物をよけるビカラに追いつける者など存在するはずがない。自分はそうやって長い間逃げ延びてきた・・そして、強敵をもからめ手で洗脳し惑わし始末してきた。
「絶対に逃がさない!」
メリーナのその声が間近迄に迫ってき、その自慢の足に剣先がふれた時、ついにビカラは自身の死期を感じ取っていた。
「総帥あなた御自身での、本気の対処をすべき敵です。わたくしめもここ迄の様です」
地下迷宮、「夜明けの爪」本部では、一人の女性がひざまずき報告を述べていた。
「十二魔将、ビカラがセゴクメドウの地での消失を確認致しました」
「メリーナ・フレヴァリ、十二魔将達を離反させ我々の計画をとん挫させるその力、確かにただ者ではない様ですね」
「総帥御自身が本気の対処をすべき敵。との最後の言葉ですが、どの様にいたしましょうか?」
「たしかにお前の様な異端の者ならば招き入れるのも良いかと思いましたが、かねてからの予定通り、お前は魔法学園都市アルカディアへ向かいなさい」
「はっ。たしかに承知いたしました」
そう言うと、この場から女性の姿が消え、この広い地の底に再び静寂が訪れていた。・・そして誰もいない静寂の空間で総帥は一人口ずさんだ。
「丑と寅を向かわせましょう。その結果によっては、赤、青、銀の招集も考えるべきでしょうか・・」
亥・子の章は、ここ迄となります。お読みいただきありがとうございました。更新を水曜日、土曜日の週二回、16時前位に更新したいと思います。引き続きどうかよろしくお願いいたします。
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