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19/25

19 ライバル登場???

 大会1日目は新人戦1回戦計32試合が行われた。リオンたちが勝ちあがったのは当然として、他の7ペアのうち、3ペアが1回戦を勝ち進んだ。

 1回戦では新人戦出場選手の半分が脱落する。その中で、リオンたちの学校のは半分通過したのだからまずまずの結果と言える。

 勝ち残ったペアは次の試合に向けて、教師と調整したり、次の対戦相手の研究したりして過ごす。大会1日目は本戦しか出場がない上級生は時間があるので、自身の調整をしつつ、他校の偵察をしてくれている。この剣術大会は学校が一丸となって挑む。そこに上級生や下級生と括りはないわけだ。

 そんな中、リオンたちのペアはというと。

 「私、疲れたから寝るね。」

 アリサはそう言って早々に寝てしまった。

 一人になったリオンは仲間が集めてくれた他校の選手の試合映像を見る。別に次の対戦相手の実力を見たいわけではない。この新人戦に目ぼしいペアがいるかを確認するためだ。

 一応リオンも、自分の対戦が終わって、試合後のクールダウンをした後は、客席で他の試合を見ていた。なので、リオンが見れなかった試合を見ているわけだ。

 結論から言うと、現状では目ぼしい生徒はいなかった。

 現状といった理由は1回戦だと、正確に敵の強さを計れないところだ。リオンたちの時もそうだったが、1回戦は相手によっては実力差があり過ぎて、全力を出す必要がない。だから、あくまで参考程度の話だ。

 1開戦ということで、明らかに実力が乖離していたペアは多数いた。ただ、そのペアの中で、全員が全員リオンの脅威になる可能性があるわけではない。

 リオンが受ける他校の評価が高いのと同様、新人戦における有力な生徒と言うのは事前に情報として入ってきている。その評判と言うのは社交界での場での模擬戦がメインだったりする。だから、リオンも参加していたので、その実力の全貌は分かる。もちろん、学校入学後に成長している可能性も考慮されるが、リオンを追い抜くほど成長するとは考えにくい。

 だから、リオンが注目するのは、社交界で見たことがないかつ、1回戦で実力差があるペア。これがリオンの脅威となる可能性がある相手となる。

 そのペア数は2ペア。そのどちらかでも自分を唸らせる相手であることを祈るばかりだ。

                       ♦

 大会2日目。流石に1回戦を勝ち上がった生徒たち。その戦闘のレベルは1回戦と比べて上がる。トーナメントは進めば進むほど、強者しか残らないから必然の話ではあるが。

 リオンの試合結果は言うまでもない。今回の相手もリオン基準ではなく、大会2回戦に残ったペアに中で弱い部類の相手だった。

 アリサも苦戦することなく、ちゃんと対戦相手を戦闘不能にすることができた。やはり、速度。アリサの強み(剣術のみ)においては、それがいい。先制攻撃、これが1対1の戦いでは強い。先制攻撃できるということは、相手よりもスピードがあるということ。

 スピードがある利点は、先制攻撃からの連続攻撃が一番のメリットだが、それ以外にもある。例えば、アリサが以前までしていた回避行動。あれもスピードが勝っているからこそできる代物だ。回避行動は相手の攻撃速度よりも、自身の回避速度が速くないと難しいものだ。回避自体は速度で勝てなくても、攻撃の予測をする等で対策は可能だ。ただし、回避行動を安定させるという面では、速度が勝っている方がいい。

 (しかし、これはアリサの特訓になっているのだろうか?)

 アリサはリオンの模倣をしている。別にそれ自体はいい。何事も真似から始めるものだ。そこから自己流にアレンジしていけばいいだけ。

 だから、実戦でアリサの模倣が通じない場面が出てきた時にアリサの真価が問われる。リオンはそれに期待していたのだが、それは今の段階では到底叶いそうにない。

 一つはアリサの模倣の精度が高すぎること。約数ヶ月の特訓で、アリサはリオンの動きを何度も見ていた。その間に動きを覚えたわけだ。元々、スピード自体はリオンに負けず劣らずだったので、剣術さえ馴染めばできる所業ではある。

 ただそれは、リオンのいくつかの攻撃パターン、攻撃の手順を覚えただけ。それを使い回しているにすぎず、アリサの剣術そのものではない。

 一つは相手が弱すぎること。リオンの攻撃パターンが洗練されているから、模倣それだけで十分というわけだ。スピード自体はリオンと遜色ないことから、相手は対応することができない。だから、なす術なく倒される。

 要は、アリサの自分の剣術を身に付けることができてないわけだ。アリサ自体は強くなっているが、このままでは、剣術ではリオンを越すことはできない。

 「何考え込んでいるのよ。試合はとっくに終わっているわよ。」

 アリサはリオンの背中をはたく。

 「ああ。」

 いつの間にか、試合終了のコールはされていたようだ。少し考え込んでいたみたいだ。

 リオンはアリサの後を追うように会場の出口に向かう。

 「中々いい試合だったね。リオン・キングスフォード君。それとアリサ・エヴァンズ君。」

 リオンたちは試合会場から生徒の控室に向かう通路でとあるペアに声をかけられた。

 「どうも。」

 リオンは返答しつつ、二人の容貌を見る。

 一人は身長175cmくらいで中肉中背の金髪碧眼の男子生徒。

 もう一人も体型は大体同じで、銀髪赤眼の男子生徒。

 話しかけてきたペアはリオンが知らないペアだった。てっきり、どこかの社交界で会ったことがあって、媚売りのために称賛してきたのだと思った。

 ただ、昨日夜中に見た試合記録で見覚えがあった。リオンが注目していた実力が未知数なペアのうちの一つだ。しかもリオンがより注目している方の。

 「僕たちが君たちと対戦できるとしたら、決勝戦しかない。決勝で待っていてくれ。」

 二人は今から試合が控えており、長話ができなかったので、早々に言いたいことだけ告げ、試合会場に向かう。

 「ああ。」

 リオンからすれば誰が決勝に上がってきても構わない。どうせ勝つからだ。なら、せめて面白い奴が決勝まで来てくれたらと思う。彼等にはその可能性がある。

 「中々面白そうなペアじゃない?」

 「そうか?確かに戦力が未知数だという点では面白いけど、それ以外に特段ないぞ。」

 リオンが見る感じ、あのペアが自分たちの脅威になるとは一切思わない。

 「それはあなたと比べたらって話よ。彼等には他のペアに無い物を持っているわ。」

 「それは何だ?」

 アリサにはリオンでは読み取ることが出来なかった何かを、あの二人から感じたのだろうか。

 「彼等はあなたに一切畏怖していなかった。それに、ごますりをしているようにも見えなかった。それが本来は普通の人付き合いなんでしょうけど、あなたにとっては特別なんじゃない?」

 「言われてみればそうかもな。」

 アリサが言うようにリオンに接する人物なんて、媚売りのため。それ以外の人物はそもそも近寄らない。だから、こびへつらうことなく接する人物。もしかしたら、初めてかもしれない。

 「今までの対戦相手。まだ2ペアしか戦ってないけど、明らかに勝負をはなから諦めていた節があるわ。私が難なく敵を倒せた一因でもあるし。」

 「なるほどな。」

 自分以外の第三の視点。リオンはアリサから話を聞いて、関心する部分はあった。それは対戦相手が既に勝利を諦めていたという点だ。

 この大会は自分の実力を存分に発揮する場だ。そんな場で全力を出さない。こんなことがあり得るはずがない。リオンはその固定概念に囚われていた。

 確かに、リオンが相手ならどうあがいても勝つことはできない。しかし、いくら敗北が確定しているとはいえ全力を尽くさない。そんなことがあり得るのだろうか。

 もちろん、全力を出さない場面というのもある。リオンの場合だと、相手との実力差があり過ぎて、全力を出すまでもなく倒せてしまうこと。その場合は、体力温存と利点があり、連戦のための対策となる。

 しかし、そうでない場合、全力を出さない理由がない。そこに諦めるという理由があるなんて考えもなかった。

 「アリサは良く気づいたな。」

 「別に。殺し屋してた時の人間観察が生きただけよ。」

 アリサはそう答える、別にそれは嘘を言ったわけではない。実際に殺し屋として生きて、そういう部分が成長できたのは間違いない。

 ただ、別に今回の件に関してはそんな経験が無くても分かる。圧倒的な才を目の当たりにして、自分では到底に到達できない場合、人の頭には絶望という二文字が垣間見える。

 そうでなくても、リオンは特訓すれば特訓するだけ伸びるポテンシャルがある。頭打ちなんて言葉は彼の頭にはないだろう。

 (リオンには分からないでしょうね。諦める人の気持ちなんて。)

 リオンには諦めるという経験がないのだろう。だから、その立場にある人の気持ちが理解できないのだ。

 リオンはその類稀ない才能とひたむきな努力から、常に成長し続けている。

 入学してからもアリサに勝つために、日々鍛錬しているし、その鍛錬が頭打ちになることはないのだろう。

 大抵の人はある程度成長すれば、いずれ壁にぶち破る。今までように成長しなくなることだ。その時に人の真価が問われる。くじけずに一歩ずつでも成長するか。自分には才能がないと諦め、堕落していくか。

 皆くじけなければよいのだが、人はそんなに強くない。人は楽な方に流れていく。誰だってできることなら、辛いことなんてしたくない。

 特に大きな才能の差なんて、言い訳には格好の的となる。

 リオンに負けたならしょうがない。

 剣術の名家に負けたならしょうがない。

 自分の弱さを棚に上げて、相手の強さにばかり囚われる。

 アリサには彼等の気持ちが分かる。自分も以前までは同じ立場にいたのだから。

 「それよりも、二人の試合見てみない?どれほどの実力か少し興味がわいてきたわ。」

 「そうだな。」

 アリサの一言で、リオンたちは2人の試合を観戦することにした。

 リオンは昨日の試合から、彼等のことは少し情報を得ていた。

 金髪の方の男は、ユウト・コモニー。戦闘スタイルはおそらくスピードを持ち味としたものだ。おそらくと言ったのは、一試合分しかデータがなく確証を得れていないからだ。

 銀髪の方の男は、カイト・プレーブス。戦闘スタイルはおそらくパワーを持ち味としたものだ。ただ、パワー型だからといって、スピードが遅いわけではない。

 ただ、一つ言えることは2人ともそれなりに実力はあるということだ。少なくとも、1回戦では一切苦戦を強いられることはなかったし、戦闘に余裕というのがみられる。

 2回戦も1回戦と同様の展開で試合が進んでいった。ユウト、カイトと共に、実力を出すまでもなく、相手をせん滅した。

 まだ2回戦なので、実力差に開きがあってもおかしくない。1回戦で弱いペア同士のぶつかり合いだった場合は特に顕著だ。

 今回がどうだったかは定かではないが、少なくとも、この2回戦でお二人の実力を正確に知ることはできなかった。

                       ♦

 新人戦の2回戦全16試合は、昼過ぎには全試合が終了した。そして続けて準々決勝が行われる。

 準々決勝でもリオンたちの試合状況を語るまでもない。リオンは言わずもがな、アリサもしっかりと相手を撃破した。準々決勝とはいえ、2回戦と相手の実力に差はなかった。

 リオン的には退屈だったが、それは仕方がないことなのかもしれない。新人戦は学校入学から数ヶ月の期間しか特訓期間がない。その数ヶ月で爆発的成長をする者などいないに等しい。

 まあ、そのおかげでアリサの実戦経験がまた一つ増えたわけだが。

 一方、ユウト、ダイキペアも順調にトーナメントの駒を進める。この試合でも、特段実力を明らかにすることはできなかった。

 ちなみに、リオンが注目していたもう一つのペアはこの準々決勝で敗退し、リオンの希望を叶えることはできなかった。

 大会二日目は準々決勝までの計24試合をもって終了した。残ったペアは4組。リオンたちの学校はもう他に誰も勝ち残ってはいなかった。

                       ♦

 大会二日目の夜。例の勢力たちはリオンを陥れる策を講じていた。リオンが下馬評どおり、新人戦を勝ち抜いており、試合を見てもその実力に疑いの余地はない。このままでは新人戦だけでなく、本戦での優勝というのも大いに考えられる。つまり、今の状況は彼等にとって非常によろしくないということだ。

 「このままでは最悪の結果を招くことになるぞ。」

 「やはり、殺し屋を手配すべきではないか?」

 「ダメだ。周囲の目が多すぎるし、下手な殺し屋では返りうちにあう。」

 中々良い策が思いつかずに会議は停滞する。そんな中一人の男がある提案をする。

 「皆さん。リオン・キングスフォードに囚われすぎですよ。相方のアリサ・エヴァンズ。私は彼女に目をつけました。」

 「アリサ・エヴァンズか。彼女のデータは一切ない。女の剣士。しかもそれなりに実力がある。それなら、何かしらの情報があってもおかしくないはずなのだが。」

 「確かに彼女の情報はない。ただ、昨晩面白い状況を見た。これを利用すれば・・・。」

 男は自分が立てた作戦を皆に話す。

 「それは悪くない。」

 「ええ。我々の目的はあくまで、リオン・キングスフォードの敗退。殺す必要まではありません。」

 「大会の運営には我々のいきがかかった者も多数いるし、成功率は高いだろう。」

 「ではそれでことを進めていきましょう。」

 リオンを敗退に陥れるべく、男たちが動き始める。

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