元次男、病院に行く①
「ぬぅああああああああああぁぁぁぁぁあ…」
地面に突っ伏して羞恥の声をあげる与一。額を地面に擦り付け、頭を抱え、耳まで真っ赤だ。
そう、与一は落ち着いて、正気に戻ったのである。
「恥ずかしくないぞ与一っ!甘えることは恥ずかいことじゃないんだ!さぁ、もう一度パパの胸元にカモンッ!」
「もおおおおおおおっ!父さんは黙って!一回だみゃって!」
父さん呼びに戻った与一は、健治に泣きながらキレる。照れ隠しだ。
「ねぇ与一ちゃん。ママにも抱っこさせてほしいんだけど」
「母さんっ!わかるでしょ!そういうんじゃないってわかるでしょ!!」
にこにこしながら手を広げて近寄ってくる薫に、与一は「にぎゃー!」と喚きながら拒絶する。
「ねぇ、なんで私より乳がでかいの?ねぇ、どういうことなの?揉んでいい?」
「知るかっ!ばーかっ!」
手をわきわきしながら接近する茉莉をぐいと押して与一は悪態をつく。
「はい、病院に行くための準備しといたよ。早く父さんは車だして」
「ぬぁ、希、あ、ありがと」
荒ぶる与一に、冷静な希がバックを手渡す。
彼にクールな眼差しで見つめられ、与一も少しだけ落ち着くことができた。
「はい、父さんは車出してきます」
「じゃあ、母さんは学校に連絡しておきます」
「じゃあ、私こと茉莉は朝ごはんを食べますが、何かあればなんでも言ってください」
「じゃあ、めぐもご飯たべるー」
「あ、じゃあ味噌汁温めなおす…」
「アホか、俺がやっておくからお前はさっさと病院いけ」
「あ、うん、そう、だよね…」
条件反射で家事を行おうとする与一を、慶一郎がそっと止める。
「おい」
「ん」
そして慶一郎は、バツの悪そうな顔で与一の頭に手を置く。
「さっきは怒鳴って悪かった」
「…ん」
そして、ぽんぽんと軽く、頭を撫でる。
与一はそれに困った様な笑みで返した。
「僕も、泣いちゃってごめん」
「いや、悪いのは俺だから」
「慶一郎が悪くないのは、ちゃんとわかってるから」
「いや、やっぱり俺が悪い」
「ふへ、頑固だね、お前は」
呆れた様に微笑む与一に、慶一郎はそっぽを向いて続ける。
「おい、なんでもいいからな」
「え?」
「なんでもいいから、頼れ」
「……ぅ……」
向き直り、与一を見つめる慶一郎。
しばしの間、ぽけらと見上げた与一は…
「……うん、ありがと」
そういって、ぎこちない笑顔を浮かべる。
「ありがとうね、お兄ちゃん」
「…おう」




