元次男、長男に叱られる③
「みゃあああああああああああああ!!」
号泣する長女、与一。
「これは、ど、どういう状況だ?」
それを見た父、健治が問う。
「慶一郎、説明して!」
そして母、薫が問い詰める。
「な、ん、与一?女装?何で私より乳がでかいの!?」
次女に繰り下がった茉莉が困惑し。
「……与一、どうしたの、泣かないで」
次男に繰り上がった希が、珍しくうろたえ。
「うおおおおお!よっくんかわいい!なんで!?」
三女に繰り下がった恵が目を輝かせる。
「…………〜ぁあ」
それらを見た長男、慶一郎は天を仰いだ。
ーーーー
「なるほど、世界のバグか…」
「大丈夫なの!?とりあえず病院に連れてかないと!!」
「え、えっと!119番の電話番号って、何だっけ!?」
「茉莉、落ち着いて、とりあえず病院のネット予約はした」
「よっくんなかないでぇ〜」
とりあえず、慶一郎はなんとか説明を終えた。
そして説明を終えた頃に、少しだけ泣き止んできた与一が気づく。
「あ、ぱぱぁ」
ぐずりながら、父健治に向かって「抱っこして」のポーズで近づいていく。
それを見た健治は、目を見開いて少しだけ驚いた後、スムーズに迷いなく与一を抱き上げる。
「ぱぱぁ、ぱぱぁ」
「もう大丈夫だぞ与一、パパがついているからな」
巨軀の健治の腕に、小柄な与一がすっぽりと収まる。与一は健治の分厚い胸板にべそべそとしながらおでこを擦り付けた。
「……これは、どういうことだ」
その様子見た慶一郎は、たまらず問いかける。
元弟が、あまりにも幼すぎるからだ。
「これはな…」
健治は、その問いかけに大仰に頷く。
「幼児退行だっ!」
そして目を見開き、そう言い放った。
父曰く。
与一は、彼の実母が亡くなった直後も、一年間くらい赤ちゃん還りしたのだとか。
そして実母も生前に「この子の父親が亡くなった時も、しばらくは赤ちゃんだったわ」と言っていたらしい。
「おい親父」
「なんだ慶一郎」
「何でニヤケてやがるんだ」
「だって、だってよお!かわいいだろうがッ!!めちゃくちゃ可愛いだろうがっ!!」
健治が言うには、与一の一年に及ぶ赤ちゃん還りはとても大変であったらしい。
だが、その時の苦労があって、それを与一と共に乗り越えたからこそ、与一と本当の家族になれたのだと、健治は思っている。
「薫さんと再婚してからは、一度もなかったんだ。きっと我慢して自分を律していたんだろう」
健治はニヤケながら与一の背をさする。
「それを思うと可愛くて仕方がないっ!パパは、与一のことを超甘やかしたい!!」
そして、そう主張するのだった。
「ねえ!あなた!その抱っこは、私が代れたりするのかしら!するのかしらっ!?」
横で健治に訴える薫。
「ぐっ…、与一、いっぱい我慢してたのね!」
目頭を抑え天を仰ぐ茉莉。
「歯ブラシ、タオル、保険証、寝巻き…」
検査入院の可能性を考慮し、荷造りを始める希。
「いいこいいこ、泣かないで?ね?」
健治によじ登り、与一の頭をなでる恵。
「……とりあえず水でも飲むか?」
そしてコップに水を入れて、与一を伺い見る慶一郎。
こうして風上家は与一をみんなでよしよしするのであった。




