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地球滅亡の直前に時間操作の能力を獲得したので、したいこと全部してから地球を救います。  作者: 夏野恵


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第25話 『玉石混淆』の石代表としての意見ですか?

「時間をめっちゃ進めたら隕石壊せるんじゃない?」


ベッドに寝転がりながらぽつりと呟いた。

いつものことながら、変なタイミングで思いついてしまった。


もっとしっかりした格好で腕を組みながらだったらよかったのに。


「……いや、でもどうなんだろ」


すぐに頭の中で否定する声が聞こえる。


現実的じゃないとか、

倫理的に問題があるとか、

アイデアとして洗練されていないとか。


全部、職場で言われたことのある言葉。



じゃああなたたち死ぬことになりますけど、それでもいいんですか?


主導権を持っているのは私。



死にたくなければ、私の言うことを聞け。



「さてと……」


強権的なノリも長くは続かないので、さっそく地球を救う方法を考えてみる。


「まず問題になってくるのが、時間を進めるだけで隕石の状態が変わるのかってところだよね」


そもそも隕石って何でできてるの?


困ったことがあればすぐ検索。


『隕石 物質』で検索してみることに。


「……まあ石、なのかな?」


ケイ酸塩鉱物、と良く分からないことをWikipediaは抜かしていたが、まあ石ってことだろう。


多分そうだ。


「そうなったら、石が長い年月かけてどうなるかっていうのを調べてみればいいか」


私は博学な人間ではない。

だからこそ、文明の利器を味方にするのだ。

中学の理科で習った風化の知識を頼りに検索してみた。


物質にもよるが、数千万年単位で崩れていくらしい。


「へぇー」


高度な知識を使わずとも、中学理科の知識で地球を救うことができそうだ。

世のインテリに対する反逆の意味を込めて、このアイデアを実行することにした。


「よいっしょ」


ベッドから起き上がって軽くストレッチをする。


「まあかなり痛みは引いたかな」


まだ節々が少し痛むものの、散歩することはできる。

興味が薄れるうちに実験をしてみよう。


さっさと準備をして外に出た。



「隕石って具体的にどういう物質なのかな」


別にそこらへんに転がってる石でもいいんだろうけど、できれば物質として近いものの方が参考になる。


呑気に上を見ながら歩いていた。

もちろん隕石は見えない。


上を見上げたまま、間接視野に公園が映る。


「……やっぱ寄るか」


通り過ぎた数秒後、顔を戻して公園戻ってきた。

まだ手を付けていない遊具が残っている状態で、素通りすることはできない。


「どっちがいいかな」


まだ触っていない遊具は2つ。

今回はその一つに触れてみることに決めた。


「あんま得意じゃなかったんだよね」


握力がなかったのかなーと呟きながら雲梯に近づいた。


小学生の頃の私の握力は10キロ以下だった。

両手で20キロもいかない私が、自分の体重を支えられるわけがない。


そのため、雲梯に苦手意識がかなりあった。

手が痛くなるのとか嫌だから、とか言い訳をしながら避けていた記憶がある。


当時から言い訳だけは達者だったのだ。


「今の私の身長なら、普通に足ついたままできるな」


鉄の棒を掴みながら移動するだけの簡単な作業。

それでも、私は小学校のころ苦手だった雲梯を克服したのだ。


やっと小学生の自分に顔向けできる。



「……雲梯の言い方って何が正しいんだろ」


公園の水道で手を洗いながらふと疑問に思った。


うんてい、という四文字でも色々なイントネーションがある。


「う↘んてい」


運動とか校庭と同じような読み方。


「うんてい→」


最後まで変わらない感じ。

私はこの呼び方だった。


「うん↘てい」


あれ、こんな呼び方するっけ?

武将の甘寧みたいな呼び方だ。


あんまり聞いたことはない。


「うんてい、うんてい、うんてい……」


どのイントネーションが正しいか考えつつ公園から出た。

結局、答えは出なかった。



目的地に到着。



「どの石が隕石っぽいかなー」


石を見ながら河川敷を降りる。


以前水切りをした場所だ。


隕石っぽい顔をしている子を探す。


「隕石といえば茶色っぽいイメージかな」


情熱的な真っ赤なドレスを身に纏っているイメージがある。


水切りをするための平らな石も探しつつ、条件に当てはまる石を拾っていった。


途中で水切りが楽しくなって、隕石用の石も何個か間違えて投げてしまったが問題ないだろう。


直近の自己ベストも更新できたし。



「……この3つで良いかな」


結局手元に残ったのは茶色で丸みを帯びた、少し大きめの石3つだ。

この子たちが地球を救うための実験体となる。


「流石に石を実験体にすること、倫理的に大丈夫だよね……?」


ラットを実験体にすることに反対する動物愛護団体みたいな感じで、石愛護団体に反対される可能性もある?


「石愛護団体ってあるのかな」


Mr. ストーンの異名を持つ(と勝手に思っている)某幼稚園生みたいな石マニアがいてもおかしくない?


「……いや、どうなんだろ」


流石に石を実験体にするのは納得してくれそうだけど。

ここで石にだって意識はあるとか、石の権利を主張してくるヤツがいたら厄介だな。


そのときは「『玉石混淆』の石代表としての意見ですか?」と皮肉を言ってやろう。



そんなくだらないことを考えながら、来た道を戻った。



自宅に到着。



「とりあえず綺麗に洗っとくか」


シンクで石についた泥を軽く落とす。

キッチンペーパーの上に石を並べた。


茶色っぽくて手に取ったものの、洗ってみれば意外と赤みを帯びている印象だ。


「これがどうなるかって話だよね」


石がどういう過程を通じて塵になるのか調べていなかったが、膨大な時間を進めればいいんだろう。


これがまさに「すべては時間の問題」ってことだ。



シャワーを浴びて食事をとる。



「これで上手くいかなかったらどうしようかな……」


本当に打つ手無しになってしまう。


「まあその時はその時か」


全ては結果次第。


案ずるより産むがやすしって言葉もあるし、困ったときに考えればいいか。

頭の中で満足する言い訳が出てきたので、これ以上失敗することは考えないことにした。



「寝るかー」


食事も済んだので、さっさと寝ることにした。

ベッドに入って目覚まし時計をセットする。


「あの固い石が粉々になるってイメージ湧かないけどな」


今日は3つある石の一つを塵にする。

もし上手くいかなかったら、他の石でも試してみるつもりだ。


「とりあえず、6兆年くらい時間を進めてみよう」


具体的に何年がいいとか分からないので、ぱっと思いついた数字の時間分進めてみることにする。


頭に中でタイムラプス動画を思い浮かべながら瞳を閉じた。




ジリリリリ!!


目覚まし時計の音の鳴り始めくらいで目が覚めた。


「身体は大丈夫そうだなー」


筋肉痛はすでに取れていた。

身体を動かしても痛みはほとんど感じない。


すぐに起き上がってリビングに向かう。


「やば、目覚まし時計止めてから来ればよかった」


けたたましい音が部屋中に響いている。


ただそれよりも実験結果の興味が勝ったので、目覚まし時計のアラームは一旦無視。


リビングを通り抜けてキッチンに近づく。


「どうなってるかな」


ボロボロに崩れるイメージはあるけど、実際どうなるのかは分からなかった。

石を置いているシンクの横に視線を流す。



「あれ、石1個なくなってるじゃん」


キッチンペーパーの上にあったのは、少し赤みを帯びた石2つだけ。

一つは跡形もなく消えていた。


「うーん、砂とかも別に残ってないなー」


砂とかの汚れは白色のキッチンペーパーの上で目立つはずだが、そこには砂一粒も残っていなかった。



跡形もなく消えた石。

この空間は密室だったはず。


つまり—


「6兆年経って完全に風化したってことかな」


名探偵ではないので、自分に都合の良い解釈を取ることにした。


「とりあえず、実験は成功ということで」


けたたましいチャイムが響く中、私は結論を出した。


確認でもう一つの石も試してみるけど、おそらく同じ結果になるだろう。



「じゃー地球救うか」



時間を操作できる力を使って、隕石の存在を完全に消すことに決めた。

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