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地球滅亡の直前に時間操作の能力を獲得したので、したいこと全部してから地球を救います。  作者: 夏野恵


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第24話 国際連合のマークの中にハリネズミのイラストも入れてもらおう。

「ヒマだし、地球救う方法でも考えてみるか」


先日の紅葉狩りによる筋肉痛で散歩もできない今できることは、ハリネズミの為に地球を救う方法を考えることしかなかった。


別に時間を潰そうと思ったら色々あるだろうけど、適当に時間をするのはちょっと違う。今日は社会人らしく生産性の高い時間というのを過ごそうと思う。


「絶対ベッドに寝転がりながら言うセリフじゃないかも」


身体がなるべく痛まないようにスマホに手を伸ばした。


足が筋肉痛であれば上半身だけ動かせば大丈夫だろうと思ったが、その考えが間違っていたことに気づいたのは数秒後。


「?!?!」


ヤバいヤバい、と背中をさすりながら元の位置に戻る。


昨日の紅葉狩りはなかなかハードだったらしい。


スマホにまで手が届かなかった。

近くて遠い存在とはまさにこのこと。


しかしスマホ依存は偉大だ。

自らの身体を削ってスマホに近づき、やっとことで手のひらサイズの羅針盤を手にした。


「ふー……」


スマホを取るのにも一苦労。


とりあえずその痛みが和らぐまでは、隕石関連の動画を見てみよう。

まずは地球滅亡の直前に見たまとめ動画を見てみる。



直径10キロメートル程度。

東京23区の三分の一くらいの大きさ。


秒速20キロメートル前後。

エネルギーは広島原爆の数十億倍。


隕石衝突の数分前には、空に太陽くらい明るい光が出る。

それが見えた瞬間から数秒遅れで低くて重い轟音が届く。


衝突する直前には、衝撃波が来て人間はおろか、建物も吹き飛んでしまうらしい。

隕石が衝突した直後、直径100キロメートル級のクレーターが生まれ、空から火の雨が降る。


森林はなくなり、海では数百メートル級の津波が生まれる。

そして数日後には光が消え、気温が徐々に低下していく。



隕石の大きさ等の基本情報が記載されていたので、その箇所だけはスマホのメモ帳に残しておいた。


隕石が落ちたらどうなるって話は重要じゃない。

地球に隕石が落ちることはあり得ないからだ。


全生命体はハリネズミに感謝するべきだ。


もし私がハリネズミに心を動かされなければ、地球を救うことを考えてはいなかった。ハリネズミこそ、地球滅亡に表れた救世主なのだ。


「これを機に国際連合のマークの中にハリネズミのイラストも入れてもらおうかな」


日の丸の中にもこっそり入れてもらおう。



次に、隕石衝突を回避する方法を紹介した動画を何個か見てみた。



1. キネティック・インパクター!


概要: 探査機を隕石にぶつけて軌道をちょっと変えることができる。

欠点: 数十年前に発見しないと難しい→あと1時間後に衝突するから今回は無理。



2. 重力トラクター!


概要: 巨大な宇宙船を隕石の近くに長期間滞空させると、宇宙船の重力で隕石を少し引っ張れる。

欠点: 大型の宇宙船を作ることが難しい、効果もそこまで大きくない→私が作れるわけないじゃん。



3. 核爆発!


概要: 某映画を見ろ(と動画主は言っていた)

欠点: 真っ二つだと破片が落ちてきて危険→だから面白いじゃん(と動画主は言っていた)→ 再生リスト『危険思想』に追加。



その他にもレーザーで表面を加熱させることで進路を変更するといったアイデアやレールガンで何とかするといった案もあったが、どれも現実的ではないというマジレスのコメントでいっぱいだった。


「そうだろうけどさ、少しくらい夢見たっていいじゃん」


現実ガーディアンかつ地球警備員のコメントの多くに出てきたのは、「理論上可能かもしれないけど、いかんせん時間が足りない」というフレーズ。


「時間は無限にあるんだけどなー」


この空間であれば、隕石衝突の一時間前であったとしても何とかなるかもしれない。


ただ問題点が1つ。


「一般人の私が無限の時間を持っててもどうしようもないのよ……」


そう、私は普通の社会人。

高名な科学者でもないし、時間巻き戻し系スーパーマンでもない。


ちょっと時間がいじれるだけの、自分の将来に一抹の不安を抱える一般人だ。


「時間動かしてもどうしようもなさそうだしなー」


身体の痛みが引いてきたのでリビングにあるクリアファイルを持ってきて、もう一度ベッドに横になった。


これまでに書いた内容をしっかり振り返ってみることにした。



一つ目の実験は気温がずっと一定なのか確認するというものだった。

デジタル時計を散歩の行きに置いて、帰りの気温と比較してみたのだ。


気温が変わっていないということがわかり、地球の絶対時間は停止していることが判明した。



2つ目の実験は、相対時間が変わるときの風景の変化を記録するというものだった。


「ここからなんかおかしいって流れになったんだよね」


外の景色とカメラで撮影した景色が異なっていたのだ。


そこから二重スリット実験のごちゃごちゃしてた話が出てきたせいで、モチベーションがわかりやすく低下した。しかし二重スリット実験からの洞察として、私が考えたことがある程度実現するという可能性が浮上した。


実現するのはあくまでも「ある程度」。


目覚まし時計をセットしなければどれだけ念じても相対時間は進まないし、相対時間を前に巻き戻すことはできない。


制限があるというところがポイント。



その他の実験を振り返ってみたものの、有用そうなものはなかった。



「あれ、私ってこの二か月間何してたんだ?」


記憶に残っているのは、ブランコと川での水切り、そして昨日の紅葉狩りくらい。


楽しく過ごしているものの、有益なことは何もしていない。

まあ私利私欲でひと様に迷惑をかけていないだけマシと言うことにしよう。


まあ一つやってしまったことと言えば、コピー機を寿命にお迎えした—



「……あれ?」



チラシが手元からはらりと落ちる。

そのチラシはフローリングをすべて遠くまで滑っていった。


一つのアイデアが浮上してきた。

私でもできる、地球を救う方法。


そのアイデアを思い付いた途端、筋肉痛の痛みがほとんど感じなくなった。


少し遅れてドーパミンが出てきて気持ちよくなってくる。

アハ体験というのを、たった今経験したかもしれない。



「いや、本当にできるかどうかわからないけど……」


冷静に考えてみれば非現実的だ。

マジレスしか能のない専門家たちですら、非現実的すぎて途中から説明を放棄するレベル。


でも探査機や核爆発よりも、まだ私の手の届く範囲のものが1つだけあった。

早まる鼓動を押さえつえつつ、そのアイデアというのを口にした。


「時間をめっちゃ進めたら隕石壊せるんじゃない?」

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