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地球滅亡の直前に時間操作の能力を獲得したので、したいこと全部してから地球を救います。  作者: 夏野恵


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第19話 とりあえず私は全生命体の命の恩人。

「よーし」


カフェインって30分後くらい経たないと効いてこないって話を聞いたことがあるけど、飲んでから1分で私の目はバキバキだ。


多分、私が繊細な人間だからだろう。

繊細な人間のバキバキな目をとくとご覧あれ。


「昨日書いた内容をちょっと振り返ってみようかな」


クリアファイルからチラシを一枚取り出した。


こういう内容だった。



1. 時間を操作できる対象はどこまでなのか?

2. どれだけ時間を操作できるのか?(少なくとも3,000時間は動かせる)



「まずは1. の疑問から考えてみるか」


腕を組んで考えてみるが、良い案は全く浮かばない。


それもそうだ。


私は安楽椅子探偵ではない。

地道に足で情報を稼ぐ刑事タイプだ。


「まあ足で稼ぐというより寝て稼ぐって感じだけどね」


そうなってくると某小五郎っぽいな。

あれは私立探偵じゃなかったっけ?


「おっと、いけない」


またいらないことを考えていた。


「とりあえず、どこまでが範囲なのか実験してみようかな」


正直、天気を操作できるんだったらなんでもできると思う。

木でも建物でも人でも。


「しようと思えば、人を老化させることってできるのかな……?」


流石に人を実験台にするのは怖い。

まずは手頃な木とかにしようかな。


「この季節に桜って咲かないよね」


なら公園のソメイヨシノを満開にさせてみたい。


そして花見だ。


「おーなんか楽しくなってきたぞ」


明日の花見(予定)にわくわくしつつ、次の疑問に移る。


「『どれだけ時間を操作できるか』かぁ……」


そんなこと私に聞かれてもって感じ。

ただ、かなり長い時間を操作できそうな気がする。


『少なくとも3,000時間』というフレーズがとにかく私の心を躍らせた。

そう、本気を出せば1万時間なんて余裕で操作できるのだ。


まだ本気を出していないだけ。

本気を出せばすごいんだから。


「これはどうやって確認しようかな」


1年のサイクルではないものと言えば、建物とか人が考えられる。

うちの会社の隣の建物も老朽化で取り壊すみたいな話を聞いたことがある。


「流石に建物が一日で老朽化したってなったら騒ぎになりそうだしな……」


そうなってくると、小さめの機械とかが良いかな。


できればウチの会社にあるコピー機を完全に老朽化させて買い替えてもらいたい。

耐用年数がどうこうって話、こっちは知らないよ。


ひとまず明日は桜を開花させるとして、コピー機の運命は私が握っているという優越感を楽しむことにした。



今日したいことは3つ。


1. 現段階の公園のソメイヨシノの様子を確認すること

2. 少し離れたコンビニで野菜ジュースを買ってくること

3. 会社のコピー機くんに余命宣告をすること


「まあ最悪、コピー機は明日か明後日にすればいいかな」


もう少し残りのコピー機人生を楽しませてあげたいし。

上二つだけをすることに決めた。


「散歩いくかー」


さっさと準備をして外に出た。


公園の近くにあるコンビニを調べると、数百メートル先に『数字付き』の異名を持つコンビニエンスストアがあったので、そこで野菜ジュースを仕入れることにする。



歩きながら窓ガラスに反射する自分の顔をちらっと見た。


「めっちゃ健康的な顔してるな」


思わず笑ってしまった。


濃い隈をコンシーラーで隠し通していたあの頃とは違う。

今の私の方が、多分周りからの評価が良い。


「今から本気でメイク動画とか見てみようかな」


時間のある今なら、Before/Afterで別人って思われるほど完璧なメイクをすることができるかもしれない。


まあ完璧なメイクして誰に見せるんですか、って問題もあるけど。



そんなことを考えながら公園に到着した。



「やっぱり桜は咲いていないよね」


オッケーと呟いて写真を撮って中に入る。

これが明日どうなるのか見ものだ。



「公園の遊具と言えばやっぱ滑り台でしょ」


大人の私が遊ぶにはかなり小さなそれをまじまじと見つめる。


小学生のころはブランコにしか興味がなかった。

その理由の一つに、滑り台には競合が多すぎるという問題があった。


それだけではない。


一回滑ってまた階段を上る場合、半分くらいは移動の時間に使ってしまうのはもったいないという小学生ながらに鋭い考察もあったのだ。


「今なら競合なしで遊べるね」


まさにブルーオーシャン。

階段を3段飛ばしで上り、滑り台に座る。


底が深い形になっていたので、大人の私でもなんとか収まった。

ただらせん状になっているので、勢いよく滑るのは難しそうだ。


「よいっしょ、よいっしょ……」


滑り台の縁を掴みながら、ずずず、と少しずつ滑っていく。


「よーし」


やっと滑り切った。

うーん、楽しくない。



楽しめないんだったらする必要ないか、と割り切ってその公園を後にした。

コンビニで野菜ジュースを買って帰ることにした。


「目覚まし時計は何でもいいのに、設定することが必要ってどういうことなんだろ」


5本の野菜ジュースを両手で抱えながら呟く。


目覚まし時計をセットせず、その時間帯になるように強く念じるだけでは、相対時間を動かすことができなかった。それが意味することは2つ。


1. 目覚まし時計は問わないが、セットすることが唯一の起点となっている

2. 唯一ではなく、念じること+αで必要となってくる


「でも時間が止まって数日の頃は何時になってほしいなんて思ってな—」


その瞬間、あることを思い出した。


野菜ジュースを両手で抱えた不格好な今思い出すことではなかったと思う。


ただ、おそらくコレはとても重要なのかもしれない。


「隕石が衝突する日の前日、地球が滅亡しても5時30分に目覚ましだけなったら面白そうって思ったな……」


あそこがこの空間の起点になっている可能性がある?



「……一旦持ち帰るか」



野菜ジュースも、その可能性も。


とりあえず家に帰ってから考えることにした。



家に到着。


冷蔵庫の中に野菜ジュースを入れる。

これをお風呂上りに飲むのがおいしいんだよね。


「さてと……」


一旦落ち着いたので、そろそろ考えてみようかな。


「いや、一旦シャワー浴びてから考えよう」


身体もすっきりしたほうが考えもはかどるはずだ。



シャワーを浴びてすっきりした。


「さてと……」


流石にそろそろやった方が……


「いや待てよ?」


普通にお腹が空いている。


腹が減っては戦ができぬ。


一旦ご飯を食べてから考えてみるか。


食事中。

食事終了。


「なんか眠くなってきたなー」


もう今日色々したし寝ても……


「いや、流石にちょっとは手を付けておきたいな」


せめて何に疑問を感じたのかくらいは言語化しておきたい。

重くなってきた瞼を擦りつつ、テーブルに向き合う。


「地球滅亡の前日の日の話だよね」


その日に私がした行動と、思ったことというのが大切なのかもしれない。


会社の外に出てからのことを思い出しながら箇条書きに整理してみた。



1. 同僚に地球滅亡のタイプの動画を見せられる。

2. 同僚と別れる。

3. 帰宅途中にコンビニでカップラーメンを購入。

4. 帰宅

5. シャワーを浴びる

6. 隕石の動画を見る

7. 目覚まし時計をセットする

8. 寝る



「この7. のときに『誰もいなくなった地球で目覚まし時計だけなってたら面白そうって思った』んだよね」


この眠りに落ちたタイミングから時間が経過して絶対時間が午前2時で停止し、相対時間は午前5時30分まで進んだのでは?


「もし目覚まし時計セットしてなかったら地球滅亡してたのかな」


今となっては分からない。

ただ、私の行動一つで世界を救った可能性もある。


今後どうなるかわからないから、保留状態でもあるけど。


とりあえず私は全生命体の命の恩人。

そのことに満足してチラシをクリアファイルの中に入れ、悠裕とベッドに向かった。


桜の雨が公園に浮かぶことをイメージしながら瞳を閉じた。

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