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地球滅亡の直前に時間操作の能力を獲得したので、したいこと全部してから地球を救います。  作者: 夏野恵


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第15話 某レースゲームで虹色に身体が発光しているのと同じ。

「そういえば私ってなんのために生活してるんだっけ?」


食パンを齧りながらふと考えた。


散歩したり、

自転車乗ったり、

人間観察をしてみたり。


色々やってたけど、言うならばそれは暇つぶし。


本当にしたいって思うほどのものはそもそもないんだけど、

そういえば何かを忘れているような……


「ああ、そうだ隕石だ」


隕石があった。


今から落ちますけど何か? みたいな顔のヤツが上空に一匹いるらしい。


そしてそいつをどうにかした方が、人類的には喜ばれるらしい。


正直、私がどうにかできる問題ではないとは思う。

とは言え、せっかくなら「頑張ったけど無理でした……」みたいな雰囲気は出したい。


それなら地球上にいる生命体のみんなは許してくれるでしょ。


一応結論づけて、昨日買った野菜ジュースを飲む。


「『一日分の野菜』ねぇ……」


パッケージに印刷されてる宣伝文句を読み上げる。


コイツを7本飲んだら私はどうなってしまうんだろう。


野菜の過剰摂取で全身緑色になったりするのかな。


「ちょっと興味出てきたぞ」


マジレスの声がどこからか聞こえそうだが、何事も経験。

今日はコンビニに言って野菜ジュースを多めに買ってこよう。



朝食を済ませて後片付けを終わらせる。



「実際、私が隕石をどうにかできるってなったらどうしようかな」



すべて私の機嫌次第ってわけだ。


注目されるのは困るけど、交渉材料としては好都合。


今まで私に無礼な行いをしたヤツ全員を集めさせて神輿担ぎをしてもらおう。


その上に載せるのは我が国の総理。


自分の状況を飲み込めずてんやわんやして欲しい。

そして私は観客と同じように手を叩いて煽る。



完璧だ。



ソファに座って、軽く伸びをする。


「この生活から抜け出せなくなりそうだよなー」


朝起きて、ゆっくり朝食を食べて、気が済むまでソファでごろごろする。


以前の社会人生活に戻れる気がしない。


「いっそ地球滅亡してもらった方が助かるなー」


死ぬことは怖い。


ただそれ以上に堕落した自分を周りの人に見られるのが恥ずかしい。


これまで私はそれなりにしっかりした人間で通ってきた。

通ってきたと思ってる、と言った方が正しいかも。


親からはいつまでも子ども扱いされてるけど、その他大勢の人からは「しっかり者の環さん」とみられている。


しっかり者と言えば私。

私と言えばしっかり者。


しっかり者の、と検索すればサジェスト機能の最初に「環さん」と出るのと同じ。


ちょっとやってみよう。


しっかり者の___


⌕ しっかり者のすずの兵隊

⌕ しっかり者の女性

⌕ しっかり者 英語で



「……隕石のせいで検索機能までバグってるかも」


太陽フレアで精密機器が誤作動するって話を聞いたことがある。

詳しいところは良く分からないけど、多分そう言うことなんだろう。



「あれ、これ何の話だっけ?」


さっきまで何を考えていたのか出す。


「そうそう、地球滅亡したほうが良いよねって話だ」


言っていることはどこかの作品の大悪党みたい。


ただ、私個人の都合で地球を滅亡させてもいいのかという疑問も出てくる。


親とか友人とか同僚のあの子とか。

そういう人たちも同じように死んでしまうと考えると申し訳ない気持ちになる。


「うーん、面倒だな……」


私も時間停止の状態で何も考えない状態が良かったんだけど。


こういう時、自分の運の悪さをつくづく実感する。


現段階の人口が数十億人であるならば、確率は相当小さいはず。

そこに選ばれる私は全人類で一番運の悪い人間だと言えるのでは?


「まあ見方にもよるか」


どこかの偉大な経営学者もコップ半分の水がどうこうって言っていた。



その話を聞いたのは大学生のときの講義。


偶然一番前の席しか空いてなかったので、最前列に座ったときに講師に尋ねられた。


「あなたはコップ半分の水を見てどう思いますか?」


1. 半分の水しかない

2. 半分も水がある


どちらか選ぶように言われた。


その時私は、「中身の水はいらないんで、とりあえずコップだけいただきます」と答えた。


講師は苦笑いしてから有名な経営学者の話を始めた。


いまだにアレは正解だったと思っている。


ほら言うじゃん、コペルニクス的転回って。

コップを真逆に傾けたら水が零れるでしょ?


そういうこと。



散歩がてらコンビニに行き、野菜ジュースを買えるだけ買って家に戻る。



「少なくとも、7日分の野菜ジュースを飲めば、七日間は野菜食べなくていいでしょ?」


それはわかってる。


だって企業側が一日分の野菜がこの一本に入ってるって言ってるんだもん。


間違っているはずがない。


問題はそれによって健康になりすぎること。

いきなり翼が生えました、とかは困る。


とりあえず、3日分の野菜ジュースを飲んでみた。


しかし、600ミリリットルの野菜ジュースが胃の中に納まっただけだった。


「まあ消化に時間かかるだろうし、とりあえず効果が表れるまで待とうかな」



とりあえず、効果が表れるのを待ちながら掃除を開始した。


「なんかいつもより視力が良くなっているような……?」


いつもなら見過ごしがちな隅のホコリまではっきり見える気がする。


即時性のあるヤツから効いてきたみたいだ。


数時間後には空中浮遊ができていてもおかしくない。


私は身より実を取る。

翼はいらないけど、空中浮遊はしてみたい。



「あ、そういえばこれもやったな」


一応ファイルにまとめているチラシの裏には以前やった実験結果の条件分岐がまとめられていた。


掃除機を止めて眺めてみる。



時間: 絶対/相対


絶対時間: 操作不能?


相対時間: 目覚まし時計有/無


有→時間は進む

無→時間は不変


目覚まし時計有: どの目覚まし時計でも同じ(その行動自体が重要?)



「相対時間は今、目覚まし時計の行動が関係してるんじゃないかってところで止まってるんだな」


非常にわかりやすい。


他のチラシの裏には二重スリット実験からの考察的な、ちょっと賢い雰囲気を出したかった時の内容があったが見ないフリをする。


普通に恥ずかしい。


「これも同時並行で進めたいな」


二つ趣味があれば、一日に二倍の時間を趣味で使うことができる。


その方が都合がいい。


「真面目に考えてみるか」


いつも真面目な顔してふざけていたけど、たまにはちゃんとしとかないと愛想をつかされる。


それは困る。


しかも今日は野菜ジュースを3日分摂取している。


言ってみればチート状態。


某レースゲームで虹色に身体が発光しているのと同じ。


「うーん、それはちょっと嫌だな」


せめて単色にして欲しい。

周りからイルミネーションのカラーチェンジかよ、って思われるのは恥ずかしいし。



「さてと」


掃除を済ませてテーブルに向かう。


卓上にはペンとチラシ、そしてスマホ。

そして野菜チートの私。


まさに鬼に金棒、環にスマホだ。


「やば、また別のこと考えてた」


今日は本当に真面目にするつもり。

目の前の問題に対してのみ思考したい。


「まず問題は、相対時間の目覚まし時計セットがきっかけになってるってことだよね」


それがなぜなのかって話だ。


私が以前考えた可能性は、目覚まし時計のセットという行動を分解したものの中にきっかけがあるか、それとも目覚まし時計をセットする行動と共に生じる行動にきっかけがあるのか、というもの。


「とりあえず、目覚まし時計をセットする行動を分解してみよう」


頭の中で自分が目覚まし時計をセットする行動をイメージする。


1. ベッドに行く(流石にそろそろ寝ないとヤバい)

2. 目覚まし時計を手にする(この目覚まし時計、音最小にしてるのにうるさいんだよな)

3. 時間を設定(毎朝5時30分起きって頭おかしいでしょ)

4. 目覚まし時計を置く(うるさいしちょっと遠めに置いとこ)

5. ベッドに入る(今日の仕事疲れたな、マジで。 ていうかあの男どうなってるのほんとに、お前も謝りに来いよ。なんで私だけ悪い感じになるわけ? いや別に良いんだけどさ、本当に申し訳ないって思ってるんだったらお前から謝りに行……)

6. 枕を抱いてゴロゴロ

7. 目を閉じる

8. 入眠


「何もおかしなところはなさそうだぞ……?」


強いて言えば、目を閉じてから入眠するまでが早すぎるってところか。


今わかっていることは、相対時間が目覚まし時計をセットすると変化するということ。


「……相対時間が、目覚まし時計をセットすると変化する?」


あれ?


「目覚まし時計をセットして変わるのって時間だけ?」


今私がやっているように時間に付随するものを分解するとどうなる?


「時間に付随するものと言えば、天気だよね……」


天気。


ずっと前から気になっていた。


こういうこともあるか、くらいに流していたが今考えるとやっぱりおかしい。


「時間止まってから、雨降ったのって一日しかないんだよね」


それ以外の日は気持ち悪いくらいの快晴。

気持ちのいい天気ともいう。


「で、その雨の降った日っていうのが……」


まさか、とは思う。

普通はそんなことあり得ない。


でも、普通じゃないこの状況なら全然あり得る話だった。



「私が『雨降らないかな』って思った翌日に雨降ったんだよね……」



誰も聞いていない私の声は、いつもの日本晴れの青空に飲み込まれた。


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