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第10話 キレッキレのレビューを投稿したい。

「デジカメって意外と安いんだなー」


某価格比較サイトで調べながら呟く。


やっぱり長時間撮影に向いているのはデジタルカメラ。

寝ている間の景色の変化を把握するんだったらこれしかない。


まずは価格が高い順に並び替えた。


「え、40万近くするのもあるの?」


ぱっと見はいたって普通。

でもレビューサイトでは『やっぱコレだね!』とどこかのCMのキャッチコピーみたいなコメントがあった。


「流石に高いのは無理」


せめて1万円以内のものが良い。


できればフリマアプリを使いたいんだけど、出品者が発送するのがいつになるかわからない。そのため、新品を近くの家電量販店で買いに行く必要があった。


「とりあえず、行ってから調べてみるか」


欲しいのが店に必ず置いてあるとは限らない。

もしかしたら思わぬ逸品が見つかることもあり得る。


散歩の準備をして家を出た。



現在は16時。



夏だから全然明るい。


「結局、ストップウォッチで測った時間と睡眠時間は同じだったんだよなぁ」


つまり睡眠中に変化する相対時間は同じスピードで動いているということ。

当たり前のことがわかったところで何の進展もない。


「よく考えたら、これもお金のかかる趣味ではあるよね」


外の景色を確認するためにデジカメを買うなど、色々お金がかかる。

貧乏性の私がそうやすやすとお金を出すと思わないで欲しい。


「とりあえず、使い終わったらフリマサイトで売るか」


こういう説明文にしよう。



コンパクトで使いやすいと評判の《商品名》です。

動作確認済みですが、素人目線ではわかりかねます。


お値下げにいたしましては、常識の範囲内であれば対応させていただきます。


また付属品として収納するケースを、そしておまけとして、


『持ち主が変わるまで周りに怪異をもたらす呪いの人形』


をお付けさせていただきます。


おまけについてはご購入された場合は必ずついてくるので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。



これがバンドル販売ってヤツだ。


どれか一枚に日本人形がこちらを覗いている写真があればさらに良いかも。



そんなことを考えているうちに家電量販店に到着した。


かなり昔からやっている店舗で、大学入学をきっかけに引っ越してきたタイミングで、家電を買いそろえたのもここだ。


自動ドアを抜けて店内へ。


「久しぶりに来たなー」


最後に来たのは、数年前。

電子レンジの買い替えでこの店に訪れた。


謎のポイントカードをめぐる攻防戦を繰り広げた記憶がある。


吊り下げた看板をたよりにデジカメの販売ブースを探す。


販売ブースに到着。


そこそこの種類のデジカメが展示されてあった。


高額商品は盗難防止用のセンサーが付けられているため、そもそも買うことが不可能。安いものの中から、長時間撮影が可能なものを選ぶことにした。


スマホで撮影可能時間を調べながらデジカメに触れる。


「とりあえず、景色が変わるレベルってなると3時間くらい?」


夕方に寝てすぐ起きる想定であれば、そこまで長時間でなくても良い。

少なくとも180分は撮影可能なものに焦点を商品を選んでみた。


「あっ、これが一番いいかも」


私が手に取ったのは4,000円前後のデジカメ。


お手頃価格なのになんと撮影可能時間は210分。

これは買いだ。


私がいきなり案件っぽい説明を始めたら面白そう、と思いつつレジに向かう。


この世界での精算は基本的に現金。


セルフレジであればクレジットカードが使えることもあるけど、あまり期待しすぎない方が良い。

トレーに5,000円札を置いて外に出た。



「レビュー的には賛否両論って感じか」


帰りながらこの商品のレビューを読んでいた。


A:

高品質

⭐⭐⭐☆☆

大変綺麗に撮れます。


B:

音が…

⭐☆☆☆☆

品質は問題ないのですが、操作音がうるさいです。


C:

スマート!

⭐⭐⭐⭐⭐


書道の先生から文鎮を買うように言われて購入しました。

非常にスマートなフォルムですので、動きのある線画に挑戦される方にピッタリかと。


先生からは人生を切り取った、一つの芸術だと褒められたのでオススメです。



D:

概ね満足

⭐⭐⭐⭐☆


過去の失敗を悔やみ、望んでいない未来が来ること。


生きること、それすなわち苦。


そんなことを考えていた時期が俺にもあった。


だがこのカメラを手にして、俺は『今』を生きるようになった。


過去でも未来でもない、今。

レンズ越しに映る景色こそが人生。


この商品のおかげで、『今』にフォーカスすることができるようになった。


ただオートフォーカスに時間がかかる。

その点を考慮して星四とさせていただいた。



E:

最高!

⭐⭐⭐⭐⭐


まだ箱から取り出していませんが、最高の商品です!!!




レビューサイトのタブを消して、スマホをポケットに入れた。


家に到着。


シャワーを浴びてから、カメラをいじってみた。

何回か録画してみて、品質を確認する。


「まあ普通のカメラだよね」


それでも、外の風景を確認することは可能。

丸テーブルの上に載せて撮影することにした。


「これくらいなら、外の風景撮れるかな?」


荷物を何個か載せて高さを調整し、デジカメを載せる。

ベランダの柵が邪魔にならない、丁度いい高さだった。


「じゃああとは、寝る直前に録音開始すればいいか」


オッケー、と呟いて部屋に戻る。

ある程度時間を潰してから寝る準備をする。


目覚まし時計を動かさないと、なぜか時間がすすまないので19時に設定した。


今から3時間後だ。


「よーしじゃあスタート」


録音開始。



RECのマークが出たのを確認してベッドに向かった。


枕を抱きしめてゴロゴロする。

リラックスできた頃に目を閉じた。




ジリリリリ!


アラームを消して時間を確認してみた。


現在時刻は19時。


軽く伸びをしてから、ベランダに出た。

外はすでに薄暗い、19時頃の雰囲気。


「一応4時間連続で撮影可だったから、まだ撮影中になってるな」


デジカメは若干熱くなっているけど、許容範囲内。

すぐに録画停止ボタンを押した。


私もキレッキレのレビューを投稿しようと考えながら、リビングに戻って映像を確認する。


「やっぱり全然変わってなさそうだな…」


最初の1分を見てから倍速にしても変わっていない。

シークバーを操作して確認することにした。



30分経過。


「変わってないな」


右に動かす。



1時間経過


「まだ変わってないな」


右に動かす。



2時間経過


「え、まだ変わらないことってある?」


そろそろ暗くなってもおかしくないのに。


右に動かす。



3時間経過。


後ろ側からドアをスライドさせる音が聞こえた。


「一応4時間連続で撮影可だったから、まだ撮影中になってるな」と私が呟き撮影終了。




その時の空の景色はずっと明るかった。




「え、どういうこと?」


ベランダに出て外の様子を確認してみる。


やっぱり暗い。


でも撮影された映像は明るいまま。



「ちょっと待って…」


明らかに現実離れしたことが起きていた。

リビングに戻り映像を再確認してみる。


「映像の中の景色は変わってないんだよな…」


でも、実際の景色は変わっている。



分かりやすく言えば、


目覚めたときの景色: 19時まで進んだ

撮影を続けた景色: 16 時のまま停止


ということ。


「私、SFとかそんな興味ないんだけど…」


この空間の謎が深まった。


「ねっむ…」


さっきまで寝ていたので、とにかく瞼が重い。

とりあえず謎は明日考えるとして、再びベッドに戻った。

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