表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/15

第9話 ありがとう消費税、はじめて君に感謝したかもしれない。

「この世界のメカニズムを把握するっていっても、どうすればいいの?」


おしゃれな作業用BGMを流しながら腕を組む。


昨日、この時間が停止した世界を調べることを趣味にすることに決めた。


その一日目だけど心が折れそう。


「私、正解のない問いを考えるのって、あんまり好きじゃないんだよね」


だから思考実験とか考えたら、出題者に逆ギレすることになる。


「うーん、まずは明らかにしたいことを明らかにするところからかな…」


投函されたチラシの裏に書き込む。



目標: この世界のメカニズムを明らかにすること



「で、『この世界』の『この』が、何なのかっていうのをはっきりさせるべきだよね」


『この』を丸で囲い、線を引く。



この世界 → 時間の停止した世界



「さらに、『時間の停止した世界』の時間には二種類あるってことが今の段階で分かっている、と…」



時間: 絶対/相対


絶対: 午前2時 (多分、動かせない)

相対: X (なぜか動かせる)



「おーなんか賢そうに見えるぞ」


未完成だけどそれっぽい。


大学の卒論のテーマはこれにしておけばよかった。

珍しく真剣に考えているから、頭が痛くなってきたな。



一旦休憩。



「やっぱり一番簡単なのは、相対的な時間が本当に寝ている間に動いているかを確認することだよね」


どのように確認するかと言えば、


1. 寝る前にスマホアプリのストップウォッチをポチ

2. 睡眠中…

3. ジリリリリ!! 起床→ストップウォッチをポチ


である。


とっても簡単。



これが目覚まし時計で設定した時間だけ動いているのであれば…


「…だから何がいえるの?」


実際やっているのは、当たり前のことを確認するだけ。


わかりやすく言えば、めちゃくちゃ疲れているときにベッドに入って朝になるまでの時間が明らかに短いと考えた人が、本当に時間が同じスピードで過ぎているのか疑問に思っているのと同じ。


「まあ、これでもし違うってなったらびっくりだけど」


本当は2時間しか寝てないのに外の光景は8時間後みたいな。

それなら平日に寝ても全然眠気がとれない理由も分かる。


「とりあえず、それは寝る前にしてみよう」


ストップウォッチを設定するだけなら簡単。


「で、あとは絶対的な時間が本当に止まっているのかを確認することだよね」


昨日の散歩で疑問に思ったこと一つに、太陽が出ているのに、昼になっても暑さを感じなかった、というのがある。


気温の上がる主な理由は太陽の入射角と持続時間。

持続時間以外の条件はすべて同じである場合、温度が常に同じというのはおかしいのでは?


「それは温度計があれば確認できるかな」


玄関に置いてあるデジタル時計に内蔵された温度計を道路に置いて、散歩で帰るときと比較しよう。



「よーし、色々することが出てきぞ」


ごちゃごちゃしているけど、するべきことがあるのは嬉しい。

散歩の準備を済ませ、デジタル時計を手にする。


「…ていうか、午前二時で止まってるこの時計はちゃんと使えるの?」


でもその心配は不要だった。

外に出るとわずかに温度が上昇した。


ちゃんと温度計は機能しているみたい。

とりあえず温度が一定になるまで待つことにする。


「それにしても、良い天気だな」


日差しを手で防ぎつつ呟く。


雲一つない晴天。

まさに日本晴れ。


「もうそろそろいいでしょ」


デジタル温度計は29.5度を示して数分が過ぎた。


地球温暖化の影響でどのくらいが普通かわからないけど、七月にしては少し涼しいくらいだろう。


一応、現在の気温をスマホで撮影してから散歩を始めた。


今日は気温が変わるかどうかを調べるために外に出てるわけだから、できるだけ長いほうが良い。


そのため、以前行ったショッピングモールの足を運ぶことにした。



ショッピングモールに到着。



「やっぱ静かだな」


その呟きも少し反響する。


大きな無人の施設を歩くというのはやっぱり気持ちが良い。

一階から二階へ、店舗の中をくまなく見ながら時間を潰す。


そして本日の目的地へと到着した。


「営業時間なのに、BGMが全く聞こえないってなんか不思議」


私の視線の先にあるのはゲームセンター。


このゲームセンターは初めて来た。

子どものころはメダルゲームをして時間を潰した記憶がある。


そして周りからつけられたあだ名が『ハイローラーの環』。

一回にかけるメダルの量がめちゃくちゃ多いからそういう名前になった。


ちなみに技術の高さを示す二つ名ではない。



ゲームセンターに行ったのは、高校生が最後。

そのときは友だちと一緒にプリクラを撮った。


友だちがSNSのアカウントのアイコンをプリクラのツーショにしていたので、私も空気を読んでそれにしていた記憶がある。



「なんかいい感じのないかなー」


呟きながらあたりを見回す。


「お、コレとか良さそう」


私はクレーン台に近づいた。


泣き目のウサギのぬいぐるみだった。

泣いてるところがポイント。


「めっちゃ可愛いじゃん」


君を私の家に招待しよう。

100円を入れていざ初陣。


ピコピコしたBGMの中、アームはウサギの耳を掠った。

ちょっと方向がずれてたみたい。


アームは元の軌道を辿り、空の存在を手放す。


一回目、失敗。



「ボタンを押すのに時間制限はなさそうだから、別の角度から確認してから決定しよう」


100円を再び投入。


角度は良かったものの、ウサギの胴体にアームを押し付けるだけになってしまった。

ちょっと痛そう。



その後何回も繰り返し、あともうちょっとで落ちそうなところまで来た。

アームの片側で押せば、穴に入り込みそう。


ここまで来て諦めることはできない。


100円を入れて、慎重に角度を調整し、ボタンを押す。


気の抜けたBGMに少し遅れてポスッっと落ちる音。

ついにぬいぐるみを手に入れることができた。


「意外とお金かかったな…」


合計で1,200円くらい?

でもまぁそのくらいの価値はあるだろう。


興味が出たので、画像検索で価格を調べてみた。


税抜き1,100円だった。

税込みならギリ得してる。


ありがとう消費税。


初めて君に感謝したかもしれない。



ウサギのぬいぐるみを片手に、ゲームセンターを後にした。



その後は最上階まで歩き、下りはエスカレーターを使った。


ショッピングモールから出る。


「やっぱり、入ったときと時間は変わってなさそうだな…」


2時間以上はショッピングモールにいたはず。

でも太陽は動いていなかった。


そして元来た道を戻り、行きに置いたデジタル時計の温度を確認する。



29.5度。



温度は変わっていない。


「これっておかしいよね…」


アスファルトって熱がたまりやすいって話を聞いたことがある。

黒色であるため熱を吸収しやすいとか、風通しが悪いとかで、一度温まると冷めにくい性質があるらしい。


それ以前に直感的として、行きと気温が変わっていない感覚があった。


「てことは…?」


何が言えるんだろ、と呟き腕を組む。


「…太陽の熱は地球に届いていないってこと?」


光は届いているけど、その届いた瞬間に時間が止まっているって感じかな。


だから気温が一定になっている?


「そこからわかることは…」


この空間では、太陽も止まっているということが言える。



少し整理してみよう。


今のところ止まっていると確認されているのが、


1. 時間

2. 私以外の人

3. 自然(川の水、風、太陽)


の3つ。


そして動けているのが、


1. 私

2. 機械系

3. 目覚まし時計


の3つ。



「基本的に動けてるのが機械だったら、私も機械の可能性ある?」


人間が動けていない中で私だけ動くことができるという例外があるより、実は私が機械で他の機械と同じように動けている、と考えたほうが自然な気がする。


にしては低性能か。


マシン環説は一旦脇に置いて、これからどうするべきか考える。


「やっぱり、相対時間の動く瞬間がどうなっているかだよね」


静止画みたいに切り替わっている可能性が高そう。

普通に時間が過ぎているのであれば、隕石が降ってこないとおかしいし。


「それを確認するのってどうすればいいのかな?」


一番簡単なのは、外の様子をスマホで録画し続けること。

でも、何時間も撮影することってできるの?


「いきなり動画が切れてもおかしくないよね」


なんなら撮影後、スマホの動作がめっちゃ重くなる可能性もある。

それは困る。


とりあえず今日したいのは、相対時間の流れをストップウォッチで確認すること。

動画撮影は明日以降に回そう。


ウサギのぬいぐるみとデジタル時計を抱えて、私は自宅に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ