第二百三十二話~制圧~
第二百三十二話~制圧~
漸く俺は、シュネを筆頭とした仲間たちとの再会を果たしたわけだが、まだこの惑星でしなくてはならない事案が残っている為に離れるわけにはいかないのであった。
シュネたちと合流を果たした後、大魔王の城を徹底的に探索することを目的としたドローンの使用を開始した。それから暫く、表向きどころか城内の隠し部屋といった類いのものまで探り終えると、地図を作成する。その地図に従って作戦を立てた俺たちは、いよいよ大魔王の城の制圧を始めていた。そして、割とあっさりと大魔王の城の制圧を完了したというわけである。しかし、よく考えればこの結末も当然だと言えるかもしれない。仮に俺とアーレとリューリだけで大魔王の城の制圧を行ったとすれば、かなり苦労をした筈だ。もしかしたら、可能性は低いだろうが失敗という結末だってあり得たかも知れない。しかしながら今回の場合、シュネが率いてきた部隊を用いての制圧戦となる。使用する規模としては、一個中隊くらいの人数だ。
「強襲揚陸艦を連れてきたんだから、数としては妥当か、うーん。いや。少ないぐらいか」
「大丈夫だとは思うけど、もし失敗する可能性が見えてきたら、さらに部隊を投入するわ。ただ、そうはならないと思うけど」
適宜投入ね。逐次投入とならなければいいけど。
などと不安も感じたが、幸いなことにシュネの連れてきた兵数はある程度の余裕がある。だからこそ、彼女が悲観していなかったのかもしれない。まぁ、補給さえしっかりしていれば問題ないだろうとは俺も思っていたのだ。そして何より、シュネやマスターコンピューターであるネルテュースことネルがその辺りのことを疎かにする筈がない。事実、制圧に十分すぎるぐらいの物資をシュネたちは持ってきていたこともあって、俺たちが勝利するという形で城の制圧を終えたというわけであった。
「とはいえ、流石に当初は進捗が遅かったよな」
「仕方ないわ。流石は魔族、と言ったところなのでしょうね」
そうなのだ。
実は制圧戦を始めて少しの間、城制圧のタイムスケジュールは遅れを見せたのだ。その理由だが、シュネが言った通り相手に魔族がそれなりにいたからである。少なくとも、この惑星に住む魔族は魔術の扱いに長けている。その一方でシュネが連れてきた部隊の者は、魔術が扱えない。そうなると不利となるが、その辺りはシュネも考えていた様で、魔術を扱えない代わりに魔道具が潤沢に支給されているのである。その為、魔術を扱っている状態とほぼ変わらないという結果が生まれているのだ。つまり魔族と違って自身の能力に寄って引き出されているわけではない。その結果、制圧戦当初は制圧への進捗が遅れるという自体が発生してしまったというわけであった。
「時間が経てば味方に有利とはなることは分っていたが、それでも抵抗は無視できなかった」
「一応、想定されていた事象ではあるけれど」
時間が経つことで状況に慣れることもさることだが、俺たちの率いる部隊の強みは継続性と各人の持つ技能の高さだ。一端、部隊としての戦闘が始まると、長期間開戦当初と同等の戦力を維持できる。根本的に個人の持つ能力ではなく、潤沢な道具(これは魔道具を含む)と部隊に所属している兵というかアンドロイドとガイノイドとの連携によって結果を生み出しているからであった。
そして今回の場合、それだけではない。敵である大魔王側にも、理由はあった。それは他でもない大魔王と、大魔王に続く力を持つとされているいわば大魔王の側近と言える者たちの不在の影響が大きいのである。これにより、彼らは本格的に組織だった抵抗が出来なかったのだ。制圧戦開始して間もなくの頃は、魔術の扱いが上手いという魔族自体が持つ特性により彼らは比較的優位であったものの、それは前述した様に時間経過と共に戦力が低下していったのだ。その一方で俺たちはと言えば、前述した様に戦力の継続性と各人の技能にある。要は戦力の維持によって当初の不利を拭い去り、そして一度逆転した後は主導権を渡さずに制圧戦も終えたと言うわけであった。
「どうやら、無事に大体は終わったみたいね」
俺やシュネたちがいる場所を仮に本部として大魔王の居城を制圧する部隊を派遣したわけだが、やがて魔王の城の制圧はほぼ完了していた。そうは言うが、完全に城内部を制圧し終えたわけではない。それでも、判明している城内部の構造から主要な部分と思われる箇所については制圧が完了して支配下にある。あとは警戒を怠らず、虱潰しに城内の探索と制圧に注力していくつもりであった。その為にも、今日は休んでおく。明日には本部を大魔王の城近にまで移動させ、現地で指揮を執りつつ城内部を押さえていく予定だ。恐らくあるだろうと思っている隠し部屋や隠し通路などと言った施設をも暴き、それこそ丸裸にする。少なくともシュネはそのつもりであり、妙に楽しげな雰囲気が滲み出ているのは印象的だった。
そのことに突っ込んだ方がいいのか、それとも突っ込まずにスルーした方がいいのか迷ったが、最終的に俺はスルーすることに決めた。下手に突っ込んで藪から蛇を出すよりは、流してしまった方がいい。それに、誰かが迷惑を被るわけでもないのだから、なおさらにスルーしておいた方がいいのだ。
「それじゃ、明日だな」
「ええ。明日よ」
取りあえず、明日に備えて今日は寝てしまおう。そう考えた俺は、夕食後には早々と眠りについたのであった。
本部を移動しながら、改めて大王の拠点だった城内外の捜索を再開する。徹底的に探索を終えて安全が確保できた俺たちは、いよいよ城の内部へと移動していた。城内へ移動後に本部としたのは、謁見の間という名のホール近くのある一室である。城内のほぼ中央に謁見の間があるので、その近くにある部屋ならば何があっても動き易いだろうという判断である。最も、部屋とは言えかなりの広さを持っているので、狭いとは思わなかった。
「では、お願いね」
「承知致しました、シュネーリア様」
シュネからの命令を受けて、制圧の終わった城内の探索が再開された。探索用の機器も使用して行われており、正に徹底的にと言う表現が相応しいだろう。そしてその甲斐もあって、ドローンを使った制圧前の探索では判明しなかった隠し通路や隠し部屋、そして隠れていた一部の者たちなどが詳らかにされていった。そしてついに、探索の終わりと同時に大魔王の城の完璧な見取り図が作り上げられたのだった。
「ふーん……長い時間を掛けて、増改築された城なのね」
完成した見取り図を眺めていたシュネだったが、唐突に言葉を漏らす。どういうことなのかと尋ねると、彼女は見取り図上に存在する幾つかの場所を指さした上で説明をしてくれた。果たしてシュネが指し示した幾つかの場所だが、一見すると分らない。いわゆる隠しエリアに該当する様な場所だ。しかし同時に、隠している理由が分らない場所でもあった。どういうことかというと、大魔王の城の構造上では全く必要がない場所に見えるからである。つまり、隠している理由が分らない上に、そもそもの問題としてそこに隠しスペースがある必要がない。要するに、利用価値がない、または低い場所となっているのだ。
「分らないな。何で、そんな場所を作ったんだ? まさか、隠れ家が欲しかったとか言うわけじゃないだろう?」
「さぁ。私は大魔王じゃないから、彼の考えなんて分らないわ。だけど、件の場所が出来た理由は推測できるわよ」
「シュネ! 本当か?」
「ええ。多分、意図的に作ったわけではないのよ。長い時間を掛けて、それこそ世代を超えて増改築をした結果、半ば偶然に生まれてしまった。そんなスペースだと思うわ」
「そんなこと、あり得るのか?」
「あり得たのでしょうね。だからこそ、こうして目の前にある」
まぁ、確かに彼女の言う通りだ。
あり得ようがあり得なかろうが、現実として居城内部に存在している。これほどにまで、説明もいらない説得力はないだろう。ただ、説得力があろうがなかろうが、話を聞いた者が納得できるかどうかとなれば、話は別となる。しかし、そのことについて指摘をしたところで、何かが変わるわけでもないのも事実だ。それゆえに俺は、シュネに対して肩をすくめる様な仕草をすることで、彼女の裾区に対する返答代わりとしたのであった。
ご一読いただき、ありがとうございました。
別連載「劉逞記」
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