第二百三十一話~逢着 四~
第二百三十一話~逢着 四~
ついに俺はシュネたちとの再会を果たしたわけだが、その際になぜかシュネがリューリとの一対一の会話を望む。しかもなぜか、俺に許可を求めてきたのだ。意味が分からない俺は首を傾げつつ、そんなことは本人に聞けばいいと告げたのであった。
シュネとリューリとの間で、どんな会話がなされたのか俺は知らない。だがあえて、俺は聞かないことにした。勿論、気にならないわけではない。ならばなぜに尋ねないのかというと、俺の直感が警報を鳴らしているのだ。この直感というやつは、決死で馬鹿にしたものではない。だからこそ俺は、二人の会話には一切触れないことにしたのだ。だからといって、何も話さないというのも不自然だ。そこで俺は、別の話題をシュネたちへ提供したのである。と言うか、そもそもの話では、今からする話の方が本命なのだ。
「ところで、シュネ。どれくらいの数を連れてきたんだ?」
「曲がりなりにも城を制圧するわけだから、それなりな数を揃えているわよ」
「となると今は上空……いや、宇宙空間か」
「ええ。私たちが搭乗していた戦闘艦とは別に、強襲上陸艦が同行しているわ」
どうも連れてきた兵力だが、どうやらそれなりの数を連れてきている様だ。確かに制圧対象が大魔王の居城なのだから、侮るのは良くないだろうな。だが、大魔王が既に鬼籍へと入っている現状では、過剰なのかもしれない。ただ、数が多い分、早く制圧できると言われればその通りではあるのだが……まぁ、いいか。戦闘時間や制圧時間が短ければ短いほど、味方の受ける損害は小さいものになる。その点を考慮すれば、これはシュネの英断だったのかも知れない。
「具体的には、どう動くんだ?」
「まず連れてきた戦力を、多い人数を割り振った二つの集団と一つの少なめの集団に分けるわ。そして夜明けの時間に合わせて、強襲揚陸艦で直接大気圏外より惑星に降下。多数の兵力を割り振った二つで一気に城を制圧するわ」
「そうなると、もう一つは予備兵力なのか?」
「いいえ。私たちの護衛という形よ」
正直なところ、俺たちに護衛などが必要だとは思えなかった。しかし今のシュネの話を聞く限り、俺たちが制圧戦に参加するとは考えていないことが分る。そうでなければ、俺たちの護衛など残す必要などないからだ。と言うことは、この場所かもしくは別の場所で俺たちは待機するのだろう。確かに大魔王の勢力は、戦闘能力が高い者が多い。しかし、彼らの実力では、デュエルテクターや俊たちが自分たちで所有していたオリハルコンを提供した上で制作されたデュエルテクターの防御力を抜くことが出来る程の実量があるとも思えない。実際、大魔王ですら、俺のデュエルテクターを一撃では壊せなかったのだ。その大魔王より実力が間違いなく劣る大魔王配下の者たちの実力では、デュエルテクターを壊せるわけがない。その俺たちに対して護衛など、やっぱり必要だとは思えないのだ。
「シーグ。考えていることは想像できるけど、受け入れて。彼らの矜持に関わることみたいだから」
「まぁ。シュネがそこまで言うのであれば、吝かではないけれど」
別に必要ないからと頑強に突っぱねる気など、元から無い。ただ必要がない兵力を作るより、攻撃部隊の兵力とした方がいいと思っただけなのだ。ゆえに俺は、それ以上言葉を続けず黙って受け入れることにした。その旨をシュネに告げると、彼女は小さく笑みを浮かべる。その後、シュネはどこかに連絡をした。するとそれから間もなくして、俺たちの近くに転送の光が幾つか現れる。やがてその光が消えるとそこには、幾人かのアンドロイドやガイノイド。それから、バイオロイドたちが武装状態で現れたのだ。
「久しぶりに見たけど、やっぱり違和感があるよな」
「今さらでしょ?」
「セレン。それは、そうだけどな」
この場に現れた彼、彼女たちだが当然銃などを身につけている。しかもその全員が、メイドや執事の服装なのである。通常の日常生活ならばまだしも、揃いも揃って武器で武装したメイドや執事というのはこう、なんとも表現しづらい気持ちを抱えてしまうのだ。最も、当初に比べたら大分慣れてはいる。何より、セレンが言った様に、今さら感はその通りであった。
兎にも角にも、転生してきた彼や彼女たち。即ち、俺たちの護衛としてメイドや執事の服装をした者たちが現れたわけだが、その中より一人が俺に近づいてくる。それが誰なのかというと、俺付のガイノイドとなるビルギッタだった。彼女は俺の前に立つと、きれいなカーテシーを行う。そんな彼女に俺は、小さく笑みを浮かべながら言葉を掛けた。
「久しぶりだな」
「はい。シーグヴァルド様。今日この日を、一日千秋の思いで待ち続けておりました」
よく聞くと、彼女の声だがかすかに震えている様に聞こえる。さらに言えば、彼女は目に涙をも浮かべていた。確かにビルギッタはガイノイドであるが、涙を流すことが出来るのである。ただ、涙を流せるのは彼女だけではない。他のアンドロイドやガイノイドやバイオロイドの全員が、涙を流せるのである。その理由は単純で、シュネが創造する時に、涙を流す様にしたからだった。
何はともあれ、俺が行方不明となったことで彼女に心配を掛けたことは紛れもない事実である。俺は誤魔化す、もしくは照れを隠す様に自分の頭を少し掻いた後、ビルギッタの肩に手を置きながら詫びの言葉を告げていた。
「幾ら俺付きだとは言え、大げさだな。しかし、心配を掛けてすまなかった」
「いえ。ご無事でのご帰還、何よりにございます」
ご帰還、か。そういえば、戻ってきたわけだよな。だったら、家へと戻った時の言葉を掛けるべきだよな。そう考えた俺は、ビルギッタへ同意の言葉に続く形でその言葉を紡いでいた。
「ああ。ただいま」
「お帰りなさいませ、シーグヴァルド様」
いっそ、綺麗と表現できる表情を浮かべながら、ビルギッタは答えていた。
その後は、彼らの護衛の元で夜を明かす。そしていよいよ、作戦の時を迎えた。とは言うものの、戦力では圧倒的に俺たちの方が上だと思う。しかも大魔王側の戦力だが、大魔王だけでなく上級幹部も綺麗さっぱりいなくなっている様子だ。どうやら、俺たちが城に潜入した際に部屋に集まって四人が、いわゆる四天王的な肩書きを持つ大幹部に当たる者たちだったらしい。だがその全員を俺とアーレで倒しているので、現状の大魔王の城内部には良くて上級と言えるかも知れないクラスの幹部が数人いるだけの様だ。そんな状態であるにも関わらず、良くも勢力を維持できていると半ば感心してしまう。それだけ大魔王に、カリスマ性などと言った統率力があったのだろうか。たとえ大魔王が強制的に相手を従わせることが出来る能力があったとしても、それだけで勢力を維持できるとは思えないからだ。しかしながら、現状では戦力が落ちしていることも間違いないわけである。その様な状況で彼らは、突如上空から現れた強襲揚陸艦から現れた兵力に奇襲を受けたというわけであった。
「しかし、こうも早く決着するとは思わなかった」
幾ら勢力を維持しているとは言っても、彼らを統率する大魔王は勿論、上級幹部すらもいない状況では持ちこたえることは難しかった様で、一日も経たないうちに大魔王の居城は、俺たちが投入した戦力によって制圧されたのだ。こうして大魔王の居城を制圧した俺たちであるが、これからが本番となる。城内を探索し、俺の抱いた懸念が取り越し苦労かそれとも現実にあり得ることなのかを確かめなければいけないからだ。
「それで、端から地道に探索といくか?」
「やめて。効率が悪すぎるわよ」
「それなら、どうするんだ?」
「上空からスキャニングするに決まっているでしょ」
そう言うとシュネは、連絡を入れている。多分、宇宙に停泊させている戦闘艦か大魔王の城制圧に使用した強襲揚陸艦に対してであろう。そしてどちらの艦からかは分からないけれど、連絡を受けた艦艇から探査機を飛ばすのだろう。そういう風に思っていると、暫くした後に大小様々な機器が大魔王の城近辺を飛来してきた。それらはドローンであり、シュネに尋ねると探査機器を組み込んであるらしい。それら探査機器が搭載されているドローンに対してシュネが指示を出すと、待機中のドローン全機が城の内外問わずに探索へと向かったのであった。
ご一読いただき、ありがとうございました。
別連載「劉逞記」
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