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討伐同行は、多くの怪我人を出したが死者を出す事は無かった。
魔獣の異常発生はすぐに国王陛下に報告され、魔素浄化のために聖魔法の使い手達が派遣される事が決まった。
そして、異常発生の原因解明のために多くの騎士隊が派遣される事も同時に決まった。
ラシェル達、学園生が被害に遭った事から討伐同行に参加した学園生達は暫くの間療養のため、短期休暇が認められた。
王都に住む貴族の子息・子女達は生まれて初めて魔獣との戦闘を行ったのだ。
心身ともにしっかり休むように、と通達されたのは学園長及び陛下の心配りだろう。
だが、陛下から登城の命を受けた学園生もいる。
それが──。
ラシェル・スタシータだ。
公爵家の人間である事を加味しても、今回ラシェルがいなければ被害は甚大であっただろう。
また、ラシェルの兄シュタルも同日に呼ばれており、ラシェルとシュタル。そしてレオも国王陛下への謁見のため、王城にやって来ていた。
王城・謁見の間。
スタシータ公爵家当主、オルディオ・スタシータを先頭に、シュタルとラシェルが一歩下がった所に並び、更にその一歩後ろにレオが控える。
「スタシータ公爵家が当主、オルディオ・スタシータでございます。陛下の命によりシュタル・スタシータ、ラシェル・スタシータ。そしてレオ──……レオナルド・オル・ディアルガ、参りました」
「──うむ。楽にしてくれ。まずは、此度の討伐同行の際、ラシェル嬢には窮地に陥った学園生達の命を救ってくれた事、感謝する」
「勿体ないお言葉でございます」
「そして、討伐同行の最中、騎士隊を纏め学園生を守るために尽力してくれたシュタル殿にも、感謝を」
「有り難き幸せでございます」
国王の言葉に、ラシェル、シュタルが言葉を返す。
国王は二人の返事に満足気に深く頷いた後、最後方で控えているレオに視線を向けた。
「──最後に。レオナルド・オル・ディアルガ殿。我が国の学園生及び、スタシータ公爵家の面々を守っていただき、感謝します」
「……とんでもございません。……今の私はただのレオ、でございます。……スタシータ公爵に命を救っていただき、ラシェルお嬢様に生きる希望を与えていただきました。……今の私は公爵家の一侍従でございます。ただの使用人に、陛下が頭を下げる必要はございません」
レオの言葉に、国王は困ったように眉を下げる。
「ですが……あなたはかの大帝国──ディアルガ帝国の皇族──」
「レオナルド、と言う皇子は帝国では既に死んだものと思われております。……継承権も無いただの私は使用人でございます」
「そうですか……、いや、そうか。ならば、そのように……」
国王は一度俯き、息を吸うと顔を上げた。
「さて……今回の討伐同行で愚かな事を引き起こした愚息について、改めて話を聞かせてもらおうか」
国王がそう言葉を発した瞬間、途端に謁見の間の空気がピリッと緊張感に包まれる。
ラシェルの父、オルディオがシュタルに視線を向けると、シュタルが胸に手を当て一歩前に出る。
「陛下。私、シュタル・スタシータからご報告させていただきます」
「うむ。頼む」
国王がこくり、と頷く。
シュタルはゆっくり口を開き、今回の討伐同行で起こった事。
そして、アンドリューの行動について。
それらを包み隠さず、あった事をありのまま報告した。
シュタルの報告を聞いている国王の顔色に変化は無い。
だが、玉座の肘掛けに腕を置いていた国王の手にみるみる力が入って行き、肘掛けから「バキリ」と嫌な音が聞こえた。
国王の後ろに控えていた宰相が青い顔をし、謁見の間に控えている近衛兵も冷や汗を流す。
怒り心頭、と言った様子の国王だがシュタルは報告を止める事なく、最後まで報告をしきった。
「──以上となります。……のちほど、第三騎士隊からも同様の報告書を提出させていただきます」
「……分かった。報告、ご苦労」
シュタルが再度胸に手を当て、一礼してから元の場所に下がる。
報告を聞き終えた国王は、片手でこめかみの辺りを抑えながら低く重い声音で唸るように告げる。
「──監視から聞いておったが、あの愚かな息子は……これほど堕ちたか」
国王はゆったりとした動作で玉座から立ち上がり、続けた。
「アンドリューに関しては、こちらで進める。魔獣の異常発生についてだが、第三騎士隊隊長シュタル・スタシータは明日、カンドラの森に行き先行している調査隊及び聖魔法の使い手達と合流し、護衛を」
「──はっ」
国王の命に、シュタルが胸を手に当て返答する。
次に国王はラシェル、レオに顔を向けると口を開いた。
「次に、ラシェル・スタシータ。及び侍従レオ。両名もシュタル・スタシータに同行し、調査隊及び聖魔法の使い手の護衛をせよ」
まさか自分まで命を受けるとは思わなかったラシェルは、驚きに目を見開いたがすぐにラシェルとレオは、兄シュタル同様返答した。
「──拝命いたします!」
「──はっ」
ラシェルとレオに満足気に頷いた国王は、最後にラシェルの父オルディオに視線を向ける。
「──オルディオ・スタシータは残るように。後の者は下がって良い。ご苦労だった」
国王の言葉にラシェル達は頭を下げると、謁見の間を退出した。
謁見の間を出たラシェル、シュタル、レオの三人は王城の廊下を無言で歩いていた。
誰もが声を発する事なく、三人の表情は硬いままだ。
そのまま三人は険しい表情のまま馬車に乗り込み、公爵邸へと帰って行った。




