第55話「色を重ねる」
第55話です。
少しずつ広がり始めたFirstDayの音。
その中で、新しい役割と次の目標が見えてきます。
紬の立ち位置、そしてアルバム制作のスタート。
ここからまた、新しい動きが始まります。
デビュー曲の配信から数日。
リビングには、いつものメンバーと紬がいた。
「……伸びてきてるね」と美月。
「最初より勢いが違うな」とはじめ。
あのとき投稿した動画をきっかけに、再生数はゆっくりとだが確実に伸びていた。
「コメントも増えてる」とれいじ。
ふたばは画面をじっと見ていた。知らない誰かの言葉。でも、それがちゃんと届いている証拠だった。
「……すごい」
小さく呟く。
「これ、紬のおかげだな」とはじめ。
「ほんとだね」と美月。
紬は少し照れたように笑う。
「いえ、そんな……」
「いや、本当に助かってる」とれいじ。
その一言に、紬は少しだけ戸惑う。
「……それじゃあ」
少し間を置いて、軽く笑う。
「私をマネージャーにしてもいいですよ?」
冗談っぽく言った。
「……いいね」
美月が即答する。
「え?」と紬。
「それ、普通にいいじゃん」とはじめ。
「むしろ、もうやってるようなもんだしな」
紬の表情が変わる。
「いや、でも……今の冗談で……」
「こっちも探してたんだよ」と美月。
あっさり言う。
「ちゃんと動ける人」
はじめも頷く。
「今の感じ、めちゃくちゃ助かってるし」
紬は一瞬、言葉を失う。冗談のつもりだった。でも――。
「……どうだろう?」とれいじ。
「無理にとは言わないけど」
静かな声だった。
紬は少し考える。本当は、もっと関わりたいと思っていた。でも、それを自分から言うつもりはなかった。
「……少し、考えてもいいですか?」
「もちろん、いい返事待ってる」とれいじ。
みんなウェルカム状態だ。
「じゃあ次の話をしよう」
れいじが切り替える。
「ファーストアルバム、作るそれからライブをする」
空気が少し変わる。
「まずテーマ決める。俺としてはFirstDayの色を出す。四人の色を全部入れていきたい」
シンプルだった。
「だから全員、5曲以上考えてほしい」
「5曲?」とはじめ。「マジかよ」
「完成してなくていい。イメージだけでもいい。鼻歌でもいい。そこから、みんなで仕上げるから」
ふたばは少し驚いた顔をしていた。
「私、曲は……」
「それでいい」とれいじ。「そこから作る」
「……ハードル高いな」とはじめ。
「だからやるんでしょ」と美月。
「ミニアルバムの5曲と、そのあと作った3曲。そこに今回の曲を足す。その中からいい曲を12曲選ぶ」
「多いな……」とはじめ。
「その分、選択肢が増える」とれいじ。
やることは決まった。
その日の夜、はじめは一人、ドラムの前にいた。
「……曲か。作ったことねぇって」
スティックを回し、軽く叩く。リズムを刻む。少し変える。また叩く。
「……ん?」
ふと手が止まる。今の、ちょっといい。もう一度叩く。少し変える。
「……これか?」
小さく笑う。
一方で、ふたばは部屋でノートを開いていた。ペンを持つ。でも、止まる。
「……曲……」
歌詞なら書ける。でも、曲になるとわからない。
「どうしよう……」
小さく呟く。そのとき、ふと口ずさむ。メロディ。不完全。でも――自分の中から出てきた音。
「……これ?」
もう一度。今度は少し長く。ノートに書き留める。
まだ形にはならない。でも、確かに始まっていた。
ファーストアルバム制作。それは、新しい挑戦の始まりだった。
第55話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は紬の存在が一歩前に出た回になりました。
冗談のような一言から始まった“マネージャー”という可能性。
まだ確定ではありませんが、これからのFirstDayにとって大きな存在になっていきます。
そして、いよいよファーストアルバム制作がスタート。
それぞれが曲を作るという新しい挑戦に向き合うことになります。
特に、はじめとふたばにとっては初めての作曲。
ここからどんな音が生まれるのかが、次の見どころです。
引き続き応援していただけたら嬉しいです。




