表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/70

第51話「契約」

第51話です。


ついに迎えた契約の日。

FirstDayが“プロ”として歩き出す瞬間を描いています。


これまでとは違う空気、違う世界。

その一歩の重みを感じてもらえたら嬉しいです。

数日後。


 FirstDayの四人は、AIDAレコード本社を訪れていた。


 重厚なエントランス。


 磨かれた床。


 行き交う人間たちの空気も、どこか違う。


「……すげぇな」とはじめ。


「完全に場違い感あるわ」と美月。


 ふたばは無言だった。


 ただ、周りを見ている。


 ここが――プロの世界。


 そう思うと、少しだけ足が重くなる。


「行くぞ」


 れいじが言う。


 迷いはなかった。


 


 案内された会議室。


 広いテーブル。


 すでに数人のスーツ姿が待っていた。


「お待ちしておりました」


 立ち上がる一人。


「本日はよろしくお願いいたします」


 丁寧な挨拶。


 空気が一気に引き締まる。


「……よろしくお願いします」


 れいじが答える。


 四人が席につく。


 そのとき――


「来たか」


 扉が開く。


 相田守が入ってきた。


 場の空気が、さらに変わる。


「社長」


 周囲の人間が軽く頭を下げる。


 その一言で、この場の重さがはっきりした。


 守は何も言わず、席につく。


 れいじと目が合う。


 それだけで十分だった。


 


「それでは、契約内容の最終確認をさせていただきます」


 代理人が資料を開く。


「DAYBREAK RECORDSは、FirstDay専用レーベルとして設立されます」


 淡々と説明が進む。


「制作、活動方針、楽曲に関しては、基本的にバンドの裁量に委ねます」


「……」


 ふたばは資料を見ている。


 文字は理解できる。


 でも、どこか現実じゃない。


「また、プロモーションおよび流通については、当社が全面的にサポートいたします」


 はじめが小さく息を吐く。


「すげぇな……」


 美月は腕を組んだまま聞いている。


 冷静に、内容を整理している。


「なお、本契約は正式なプロ契約となります」


 その一言。


 ふたばの手が、少しだけ止まる。


 ――プロ。


 改めて突きつけられる。


「ご不明点はございますか?」


 代理人が顔を上げる。


 少しの沈黙。


「……ない」


 れいじが答える。


 迷いはなかった。


「問題ありません」


 美月も続く。


「大丈夫っす」とはじめ。


 ふたばは、少し遅れて頷く。


「……はい」


 それだけだった。


 


「それでは、契約を」


 資料が差し出される。


 テーブルの上に置かれた契約書。


 DAYBREAK RECORDS所属契約。


 現実だった。


 れいじはペンを取る。


 一瞬だけ止まる。


 そして――


 サインする。


 迷いはなかった。


 続いて、美月。


 はじめ。


 そして、ふたば。


 ペンを持つ手が、ほんの少しだけ震える。


 名前を書く。


 それで終わりだった。


 


「これで正式に、DAYBREAK RECORDS所属となります」


 代理人の声が響く。


 拍手が起こる。


 軽く、でも確かに。


 


 そのとき。


「これからが本番だ」


 守が口を開く。


 全員がそちらを見る。


「プロになった以上、結果がすべてだ」


 静かな声。


 でも、重い。


「甘えは許さん」


 視線がれいじに向く。


「……わかってる」


 短い返事。


「それでいい」


 守はそれ以上何も言わない。


 


 会議室を出る。


 扉が閉まる。


 その瞬間。


「……はぁぁぁ」


 はじめが大きく息を吐く。


「疲れた……」


「緊張しすぎ」と美月。


「お前もだろ」


「まあな」


 少しだけ笑う。


 ふたばはまだ何も言わない。


「どうした?」とれいじ。


「……いえ」


 少しだけ間があく。


「まだ、実感なくて」


 正直な言葉だった。


「だろうな」と、れいじ。


 あっさり言う。


「俺もだ」


「え?」


「でも」


 少しだけ前を見る。


「やることは変わらない」


 シンプルだった。


「いい曲作って、いいライブやる」


 それだけ。


 はじめが笑う。


「それしかねぇな」


「だな」と美月。


 ふたばも、小さく頷く。


 


 ビルの外に出る。


 空気が少しだけ軽い。


 でも――


 確実に何かが変わっていた。


 


「……プロか」


 はじめが呟く。


「実感ねぇな」


「そのうち嫌でもするだろ」と美月。


 


 ふたばは空を見上げる。


 いつもと同じ空。


 でも、少し違って見えた。


 


 FirstDay。


 プロとしてのスタート。


 もう戻れない場所に来た。


 


 それでも――


 


「……頑張ります」


 小さく、でも確かに。


 ふたばはそう呟いた。


 


 新しい物語が、ここから始まる。

第51話を読んでいただき、ありがとうございます。


ついにFirstDayはプロとしてのスタートを切りました。

ここまでは勢いもありましたが、ここからは“結果が求められる世界”に入っていきます。


守の言葉にもあった通り、甘えは許されない。

だからこそ、この先の一つ一つが大きな意味を持ってきます。


まだ実感のないふたば、冷静に受け止める美月とはじめ、そしてブレないれいじ。

それぞれの立ち位置も、これから少しずつ変わっていきます。

引き続き、応援していただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ