第43話「次のステージへ」
第43話です。
関東での対バンツアーを終え、CDもほぼ完売。
少しずつ結果が形になってきたFirstDayですが、ここからさらに次のステージへ進もうと動き始めます。
そして、バンドにとって新たな変化の兆しも――。
ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
関東での対バンツアーが終わった。
スタジオのテーブルの上には、ほとんど空になったCDの箱が置かれている。
「……残り、これだけか」
はじめが中を覗き込む。
「ほぼ完売だな」と、れいじが静かに言う。
「やったね」と美月が軽く笑う。
ふたばはその箱を見つめていた。自分たちで作った音が、ちゃんと誰かの手に渡った。その実感が、今さらのようにじわじわと広がってくる。
「次、どうする?」
はじめが言う。「ライブ増やすか、それとも……」
「新曲だな」とれいじが迷いなく答える。「もう一段上に行くなら、曲増やすしかない」
「だね。今のままだと、まだ“いいバンド”止まり」と美月。
その言葉に、ふたばの背筋が少しだけ伸びる。
「……やろう」
自然と声が出た。
数日後。スタジオに、新しい音が流れていた。
れいじが持ってきたデモは、これまでよりも前に出るようなアップテンポの曲だった。
「どう?」と再生が止まる。
「いいじゃん。ノれるしライブ向き」と、はじめ。
「ちょっと攻めてるね。でも嫌いじゃない」と美月。
ふたばは少し考えてから言う。「……歌詞、どうしよう」
「書けるだろ。前より全然いける」とれいじ。
「……うん」
前よりは、少しだけ自信がある。
そのときドアが開いた。
「お疲れ様です!」
白石紬が顔を出す。
「また来たのか」とはじめが笑う。
「来ちゃいました」
すっかり馴染んでいる。
「ちょうどいい、聞く?」と美月。
「いいんですか!?」
デモを流すと、紬は真剣な顔で最後まで聞いた。
「……どう?」とれいじ。
「かっこいいです。でもサビ、もうちょっと印象強くてもいいかもです」
「ほう」と美月が興味を示す。
「なんか、一回で覚えきれないというか……ライブで一緒に乗れるポイントが、もう少し欲しいなって思いました」
少しの沈黙。
「……なるほど」とれいじが呟く。
「言われてみれば」と、はじめも頷く。
「いいね、そういう一般目線」と美月が笑う。
「すみません、偉そうに……」
「いや、助かる」とれいじが言った。「俺らだけでやってると偏るから」
ふたばも頷く。自分では気づけないことがある。
「あと、SNSもっと使った方がいいと思います」と紬が続ける。
「SNS?」とはじめ。
「ライブ情報とか、短い動画とか。更新もう少し増やしたら広がると思います」
「……詳しいな」とれいじ。
「ちょっとだけです」
照れながら笑う。
「いいじゃん、もうそのまま担当しなよ」と美月。
「え!?」
「広報担当」
「いやいや無理です!」
「向いてると思うけど」とはじめも笑う。「今日からスタッフ二号な」
「軽いんですよ!」
スタジオに笑いが広がる。
でも、どこかで全員が気づいていた。
この子は、ただのファンじゃない。
「……やってみるか」と、れいじが呟く。「サビ、もう一回考える」
「いいね」
空気が少し変わる。もう一段、上へ進むための空気に。
そのとき、れいじのスマホが鳴った。
「……店長?」
電話に出る。「……はい」少しだけ表情が変わる。「……マジですか」
電話を切る。
「どうした?」とはじめが聞く。
「別のライブハウスから。SHIBUYA VORTEXってとこ。イベント出ないかって」
「え?」
「名前、聞いたって」
一瞬、静寂が流れる。
「……VORTEXって、あそこ有名なとこじゃん」
はじめが驚いたように言う。
「来たじゃん」と美月が笑った。
ふたばの心臓が少し速くなる。ちゃんと届いている。そして、見つかり始めている。
音は、確実に広がっていた。
第43話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は「成果」と「次の一歩」、そして「外からの評価」を描いた回でした。
CDの完売という結果に加え、ライブハウスからのオファーという形で、FirstDayの音が確実に広がっていることが見えてきました。
また、紬の存在も少しずつ変わり始めています。
ただのファンではなく、第三者としての視点を持ち、バンドに影響を与える存在へ――。
そして何より、ふたば自身の変化。
自信と覚悟が少しずつ積み重なり、次のステージへ進む準備が整いつつあります。
ここから物語はさらに加速していきます。
FirstDayがどこまで進んでいくのか、ぜひ引き続き見守っていただけたら嬉しいです。
よろしければ感想や評価もお待ちしております。




