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第28話 14歳・15歳/遺恨

第28話となります。

ここで第一部として終わる形となります。

次回からは王都編となります。

ご意見ご感想などお待ちしております

私が自領ロジクールへ戻ると、両親から挨拶もそこそこにフィファのいるローランズ家から私を婚約者候補して推薦したいとの連絡があったと教えられた。


<ガブリエルとの婚約は解消するため、両親にあなたとの婚約を願い出るかもしれない。その時はエミーナとの事も覚悟して欲しい>


あの日、フィファからもらった手紙通り、彼女は彼女なりに事を進めようとしていた。


私もフィファの提案には同意していたので、彼女の婚約者候補に推薦されたことには驚きもしなかった。


次男である私には実家を継ぐのは兄になるので、どこかに婿入りするのが実質が最も良く適切な提案であるのか変わりない。


両親としても私は候補に推薦されたのも王都での剣術大会で優勝した結果だと喜んでいたが、実際は時戻りから逃れたい願うフィファの考えだと当然知る由もなかった。


私は両親に「ありがたいので前向きに考える」と先方に伝えて欲しいと話した。


両親は当然喜んでくれたので、今後はフィファのいるローランズ家とは交流が始まる。


問題はあるといえばある。


フィファに片想い中のガブリエルだ。


・・・許せ、ガブリエル。


これも時戻りの影響だともっともな理由をつけながら私はガブリエルに心の中で謝った。


こうして、私とフィファの関係性は深まったのだがまさかこの話が思いがけない事態を起こすとは思いもしなかった。


それは私が王都から戻り中等学園に登校を始めてからすぐのことだった。


私が学園に登校するとすでに私は話題の人になっていた。


私が王都での剣術大会で優勝したをみんなが知っていた。


特に決勝での戦いは凄いと噂になっていたほどだ。


おかげさまで同級生やクラスメイトから私に優勝した時の様子を聞かれたので、私は優勝までの過程を簡潔に答えるとみんなが感嘆の声を上げて喜んでくれた。


その話の流れで王都の様子も聞かれたのだが、みんなが口々にこんなことを聞いてきた。


クラスメイトのある女子生徒たちは、


「王都にはどんなカフェやダイナーがある?」


「素敵な服があるお店はあった?」


「素敵な男性はいた?」


と周りの女子を巻き込んで興味津々で聞いてきた。


また、別のクラスメイトの男子生徒たちは、


「可愛い女子はいた?」


と年頃の男子ならではの話を聞いて来た。


そんな話を聞くと私は自領に戻ったと嬉しくなり、みんなに色々と王都で見てきたことを惜しみなく話した。


ただ、隣の席にいるエミーナだけが浮かない顔をしていた。


エミーナは隣で私の話を聞いていたが、いつものように私と積極的に関わろうとしなかった。


どうしてかニコリともしないで冷ややかな表情でいた。


何が気にいらないのかわからないが、私は彼女の態度に触れないことにした。


時戻りの件がある限り、できる限り彼女とは距離を置く方が良いと思ったからだ。


一方で私はフィファとの関係を深めていた。


フィファとの手紙のやりとりはいつもよりも増えておりほぼ毎日のようにやりとりを交わした。


最近だと手紙が知らぬ間に学園の机の中や靴箱の中にあったりと、私の気付かないところでフィファが近くで手紙を入れに来ていることが増えていた。


フィファも少しずつだが大胆になってきた。


その流れでフィファの噂も耳にするようになる。


フィファは男子生徒には人気があるようだが、女子生徒にはあまり好かれていないようだった。


近くにいる女子生徒の話に耳を傾けると「男子に媚びている」とか「あの態度が気にいらない」と言った感じでどうも物言いを唱えていた。


きっと同性ならではの嫉妬から来るのだろう。


ただ、女性間の優越感と劣等感とかは私には理解できない。


この辺りはフィファ自身が解決するしかない問題だと思う。


私はフィファに王都であった出来事をすべて話した。


もちろんグライシンのことも口づけ以外のことは話した。


いくら前世が令嬢であっても今は男性。


口づけされたと知ればフィファにからかわれるのは確実だからこれは絶対に言えない。


するとフィファから直接会って話をしたいと提案してきた。


私はどうしようか迷った末に、前と同じように彼女が指定した場所なら応じると伝えた。


・・・そろそろフィファと会うか。


私としてはフィファと普通に会っても問題が起きるとは思わなかったし、ガブリエルのこともそれほど影響があると思わなかった。


だから、私もフィファも油断してしまった。



フィファは私との話し合いの場所を学園にある記念講堂を指定した。


普段なら最初に出会った路地にすれば良かったのだが、私やフィファはそこまで気が回らなかった。


私は放課後になると誰にも気付かれないように剣術の鍛錬があるとクラスメイトと別れて屋敷に戻った。


その後、様子を見た私は頃合いを見て学園に戻ると裏門から誰にも気付かれないように記念講堂へ移動した。


記念講堂が学園の敷地の奥にあるので密会には適した場所だった。


この記念講堂の奥には備品室があり、私は講堂の中に誰もいないと確認した後に備品室に入る。


備品室は学校独特の匂いと言うべきか、木の床から感じる独特の香りが籠っており私の鼻をくすぐる。


「久しぶりね」


中に入るとすぐに制服姿のフィファが姿を現した。


最初と出会った頃と変わらない。


背中まで伸びたあの銀糸のロングヘアが印象強いままだ。


「剣術大会で優勝したんでしょ?」


最初に話しかけてきたのはフィファの方だった。


「うん、なんとか」


「おめでとう」


フィファの顔に喜色を浮かんだ。


他愛のない会話だが、何故か安心感がそこにはあった。


「あいつからの手紙であなたが凄かったって書いてた」


「そうなんだ」


ガブリエルも細かいことをするものだ。


私は変化を続けるガブリエルを褒めたくなった。


「問題はその後。あなた、あいつに何かした?」


フィファが疑いの目を向けてきた。


「別に何もしていないけど」


「あいつ、私に謝ってきたんだけど?」


フィファが<どうせ何かしたんでしょう?>と言いたげな視線を向けてくる。


「あれかな、フィファに振り向いて欲しいならその人を見下す態度を改めろって言ったことかな」


「何それ?あなた、あいつにそんなこと言ったんだ」


フィファが呆れてしまった。


「仕方ないよ。だって、ガブリエルがあそこまで心が弱いとは思わなかったからさ」


「何々?どういうこと?」


そう尋ねられてた私はフィファにガブリエルとの話を教えた。


すべてを話し終えた後、フィファは苦い笑みを微かに口元に浮かべる。


「じゃあ、私があなたに婚約者候補してもいいって相談したことは話してないんだ?」


「話す必要はないだろう」


私は否定する。


今、心が弱りきったガブリエルに教えたらどうなることやら。


「あいつもあいつね。どうしてあなたに<私が好きなのか?>なんて聞くのかしら」


「わざとらしく答えた方が良かった?フィファのことが好きだって?」


「面白いわね。そしたらあいつも私のことを諦めてくれると思うわ」


私もフィファが自らを嘲るように意地の悪い微笑みを浮かべる。


これはお互いが今の話が冗談だと分かった上での話。


なにせ二人とも今は十四歳の姿だが、実年齢が二十歳の私たちはある意味、その手の話は達観していた。


だから、外からこの会話を聞いている者がいたら不快な思いをするだろう。


「でも、驚いたわ。あなたが暴漢に襲われて怪我をしたって」


「もしかして怖かった?」


「あら、私に心配して欲しいの?」


クスクスと笑い出すフィファ。


すると扉のところで何かが動く音がした。


私はフィファと顔を見合わせた後、私が音のした扉を開いた。


そこには見知った人が両手を口に当てて立ちすくんでいた。


「エミーナ、どうしてここに?」


「えっと・・・その・・・」


ああ、このパターンはあれか。


「まさか僕たちの話を聞いていたのか?」


エミーナに尋ねると彼女は体裁が悪い表情で頷いた。


「いいんじゃない、せっかくだから聞いてもらっても」


フィファがすげない態度で私に提案をする。


「いいのか?」


「どうせ私たちの関係もみんなの知るところとなるわ」


「そうか」


フィファがそう言うなら仕方ない。


私はエミーナを備品室に入れた。


「いつから聞いてた?」


「・・・ガブリエルの話の辺りから」


私に尋ねられたエミーナがぼそっと低く小さな声で答えた。


「あなた、フィファレス・ローランズでしょ?」


今度はエミーナが奥にいるフィファに名前を尋ねる。


・・・二人とも怖いな。


この辺りから二人の様子がおかしいことに私は気付き始めていた。


フィファもエミーナも互いを忌避しているようだ。


「そうなんだ、私のこと知ってるんだ」


フィファが意味ありげに笑う。


「ええ」


今度はエミーナがふふっとせせら笑い出す。


「だって、あなたって学園の女子たちに嫌われていることで有名だし」


「あら、嫌味かしら?でも、私もそれくらい自覚してるわ」


フィファも負けていない。


彼女も自分の立場を理解している。


「つまり、あなたも私のことが嫌いって訳ね」


「そうよ、男に媚びを売る女は嫌い!」


エミーナがはっきりとフィファに告げる。


・・・なんだ、この状況は。


まったく理解が追いつかない。


エミーナがフィファに嫉妬している。


フィファもエミーナを嫌っている。


そんな二人だからお互いが許せないようだ。


「私は媚びてるつもりはないけど?」


「じゃあ、どうしてグヤコールスに近付いてるの?」


エミーナがフィファに詰め寄る。


「へえ、あなたってグヤコールス君に興味あるんだ」


「悪いかしら?」


エミーナがよりフィファを睨む。


「悪くはないわ。でも、あなたも陰険ね」


「なんですって!?」


フィファの挑発にエミーナが激高する。


かなり酷い言いようだが、私はフィファを止めるつもりはない。


こんな時はお互いに感情をぶつければいい。


「だって、私とグヤコールス君の話を裏でこそこそ聞いてたじゃない」


「それは・・・だって、グヤコールスが帰ったはずなのに裏門から入るのを見たから・・・」


「・・・そう」


その話を聞いたフィファが私を見なが私の不手際を責めて来る。


「あなた、もしかして私の家がグヤコールス君に婚約者の候補にしたことが許せないのかしら?」


「当たり前じゃない」


「どうしてそんなことを言うのかしら?」


「それは・・・」


エミーナが口籠る。


「何?今更話すのを躊躇ってるの?本当にあなたって最低ね」


フィファが完全に怒っている。


曖昧な態度を見せるエミーナが許せないでいる。


「・・・私だってグヤコールスに婚約をお願いしたかったから」


ようやくエミーナが理由を話した。


「でしょうね。でも、私が先に申し込ませてもらったわ」


フィファは自分の立場を明確にさせる。


その行為はエミーナの心に怒りを走らせた。


エミーナがフィファの左頬を平手打ちした。


叩かれたフィファはエミーナを冷ややかな瞳で見ている。。


「おい!」


まさか、エミーナが暴力行為に走るとは思わなかった。


私はすぐにエミーナを止めようとする。


「勝手なことをしないで、グヤコールス!」


フィファが声を上げると、今度は彼女はエミーナを平手打ちした。


まさかの逆襲だったがエミーナが頬を押さえながら睨み返す。


私も二人の姿に言葉がでない。


「やり返したいならさっさと行動に移しなさい。私はいつもで受けて立つわ」


今回は誰がどう見てもフィファの方が上手だった。


余裕あるフィファの態度にエミーナは「あなたには負けない」と呟いた後、備品室を出ていった。


帰り際、エミーナが私のことを睨んでいたことは忘れることにしよう。


「彼女もまだまだね」


フィファがいじわるな含み笑いをする。


「あれ、時戻りの影響かな?」


私はその場を取り繕うようにフィファに尋ねる。


「そうかもね、あの歪んだ感情が今の彼女の中に残っているかもね」


確かにこれまでのエミーナの行動を考えれば納得できるかもしれない。


それより他に気になることがあるんだが・・・。


「フィファ、なんでそんなに強気でいれるの?」


まさかの平手打ちに平手打ちで返すその心情はどこから生まれるのか知りたい。


「時戻りの影響のせいじゃない?」


「それだけ?」


「それ以上は答えない」


フィファにそう言われると私はもう尋ねることは止めた。


「今日はここまでね。仕切り直しましょう」


「そうだね」


「でも、あなたも無理しないでね。私だってあなたの同志なんだから」


「ありがとう」


私はフィファの心遣いに感謝した。


ただ、思うところはある。


・・・女性同士の喧嘩は怖い。


今後は彼女を怒らせないよう気を付けよう。


特にフィファもエミーナも怒らせないようにしよう。



この出来事の後、私とフィファはエミーナ以外に密会していることがバレないようにした。


手紙でのやり取りを増やしながら、最初に出会った路地で会うことで人目を避けるようにした。


エミーナも私に積極的に話しかけて私を誘うことが増えた。


あの準備室の手前、さすがに彼女が可哀想なので受け入れる回数は増やしたのは言うまでもない。



十五歳になった。


中等学園も残り1年で卒業となる。


十五歳になるとべラック先生の修行も過酷さを増していった。


私は実戦を経験を積むためにべラック先生と共に冒険者ギルドの依頼をこなし出した。


ついに私は本格的な実戦を知る時がきた。


ギルドの依頼の多くが盗賊退治だったが王都での実戦経験があったので経験を積むたびに精神的にも余裕ができて相手と戦うことにも慣れてきた。


実戦を経験するたびに多くの盗賊を倒すことで今では3人ほど相手と対峙しても戦えるようになった。


もちろん怪我もしたが、最初の実戦の怪我が大きかったせいか痛みなど気にならなくなっていた。


「君は経験を積むほど強くなっていきますね」


べラック先生も私の成長に顔を綻ばせてくれた。


十五歳の時期は波乱に満ちたものはなかった。


こう言う時もあってもいいと私は思いながら私は卒業までの日々を過ごした。



そして、私は卒業を迎えた。


クラスメイトや同級生たちが卒業に心を躍らせる中、私は首席として挨拶をした。


結局、私の成績は上位を保ったままだった。


前世の記憶が成績を良くした事実は変わらないのでその辺りはみんなには秘密にしよう。


その後、私はエミーナに呼び出された。


「絶対に振り向かせるから」


エミーナから告白はされなかったが、フィファとの戦いには勝つと宣言されてしまった。


それはむしろフィファ本人に言って欲しいと思う。


フィファからもいつもの路地で会ってこう告げられた。


「ガブリエルにはちゃんと伝えておいてわ」


フィファも彼女なりの覚悟を伝えてきた。


フィファからガブリエルの反応を聞いたが、私と彼女の関係を知った後もガブリエルは「わかった」と納得した上で自分が改めて彼女に選ばれるように頑張ると返信した。


「いよいよ、王都ね」


「ああ」


「王子に勝てるかしら?」


「もちろん勝つよ」


私は逃げるつもりはない。


フィファも同じだろう。


「そうね」


フィファが私の胸に拳を当てる。


「お互いに頑張りましょう」


「うん」


私たちは王都での再会を約束して別れた。




私はいよいよ王都へ進学を果たすことになる。


私が断罪されるまで残り5年を切った。


私の戦いの場は変わる。


私はそこで何が待ち受けるかを想像しながら戦いに備えた。

〇登場人物


・グヤコールス・ペパリッチ

この物語の主人公です。

王都の剣術大会を優勝したので学園で人気者になりました。

今回、正式にフィファの婚約者候補になりました。

フィファとエミーナ、女性の喧嘩が怖いと実感中です。


エミーナ・・ナイトレイ

前世で主人公の元婚約者です。

彼女も相変わらず捻くれた想いを抱いていますが、今回ようやく自分の気持ちを伝えました。

ライバルのフィファのことが大嫌いです。


・フィファレス・ローランズ

主人公と同じ時戻りの一人です。

前世ではガブリエル・スプリンゴラの婚約者でしたが、今回は主人公を婚約者候補にしています。

前世の件もあり今回もフィファが嫌いです。

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