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第22話 14歳/困惑

第22話となります。

ご意見ご感想などお待ちしております

大会が終わった後、私はグライシンとともに賞を授与された。


とは言え、青年の部なので賞金もなく記念品となる銀の剣を授与されるだけだった。


グライシンも私と同じように銀の剣を授与された。


表彰式が終わった後、時間はすでに夕方となっていた。


周囲には人影はなかった。


さすがに私も疲労を感じずにいられなかった。


・・・今日はさっさと寝よう。


勝利の余韻に浸ることもなく私はべラック先生と一緒にゲストハウスに戻ろうとした。


「ちょっといいか?」


そんな中、ガブリエルが声をかけてきた。


また絡まれるのかと思っていたが、ガブリエルの態度はいつもと違っていることに気付く。


彼の表情を見るときっと睨む顔つきがなく、弱々しい表情を見せていた。


「うん」


私が認めるとガブリエルは少し声が小さめに話し始める。


「・・・優勝おめでとう」


「あ、ありがとう」


突然のガブリエルの言葉に私は驚いてしまった。


おいおい、どうしたんだ?


急に勝利を祝ってきて何かあったのか?


私はガブリエルの心が大会に負けたことが余程ショックだったと知る。


「お前に聞きたいことがある」


「なに?」


「俺・・・俺は強くなれるのかな?」


ガブリエルの問い掛けに私は困ってしまった。


困ると言っても彼の強さに対する答えではない。


ガブリエルがここまで打ちのめされて心が折れてしまっているとは思わなかったからだ。


「どうしてそう思うんだ?」


私はあえてその意地悪な切り返しをした。


「いや、だって、俺はあのグライシンと言う奴に簡単に負けた。あんな負け方をしたのはお前と戦って以来だった」


「あれはグライシンが強すぎたからだと思うよ」


「そうじゃないだ」


そう話してくるガブリエルの中には心の中に何か蟠りのようなものがあった。


「お前とグライシンの試合を見て俺はショックだった。お前もグライシンも俺の予想もしない戦い方をしていたし、二人とも強すぎて俺の実力が及ばないこともわかった」


なるほど、ガブリエルもそう見てたのか。


無駄に剣術の鍛錬をしていた訳ではない。


ガブリエルもそれなりに成長していた訳か。


「俺の何がいけないのか教えて欲しい」


また何とも困る質問をしてきた。


ここはもう強く言っても問題なさそうだ。


「ガブリエル、お前の弱さの原因はその性格だと思うよ」


「性格?」


「うん。お前はプライドが高く負けず嫌いなのはわかるよ。でも、相手を見下したり馬鹿にしたりするよね?そのせいで相手がどんな人間か知ろうともしない。僕に対してもそうだ。僕の実力も知らないまま後先考えずに挑んできて負けた。今回も僕に負けたくないと思ってグライシンのことをよく見ないで戦ってあんな負け方をした。それって自業自得だと思わないか?」


「・・・そこまで言うなよ」


ガブリエルが気持ちが沈んでしまい落ち込む。


・・・打たれ弱いな。


ここまで弱弱しいガブリエルを見るのは初めてだ。


「そう思うのなら人を見下す態度は止めるんだ。それだけでも剣術に向き合えて結果が出ると思うよ」


「・・・強くなれるか?」


「うん。でも、強くなるだけじゃ駄目だ。僕の師匠は腕だけじゃなく心も強くならないと教えてくれた」


「そうなのか?」


「ああ。だから、お前も自分の性格を見直して一からやり直せば強くなれると思うよ」


私は嘘を言うつもりはない。


ガブリエルが己の行いを反省して一からやり直せるなら彼は強くなれると思う。


「ありがとう。頑張るよ」


ガブリエルが私に頷きながら感謝する。


これで話は終わると私は思っていたが、その後はまた面倒だった。


ガブリエルにはまだ私に話があった。


「最後に一つだけいいか?」


「何?」


「フィファのこと、好きなのか?」


「はい?」


私は思わず聞き返す。


「だから・・フィファが好きなのか?」


「なんでそんな話になるの?」


「だって、フィファがお前の名前をいつも出すから・・・」


ああ、これがガブリエルが私に突っかかる一番の原因かと知る。


ガブリエルはフィファが好きなのは気付いていたが、どうやら私に彼女を取られたと思っていたようだ。


実際、フィファがガブリエルに対して冷たいのは理解している。


そもそもフィファが時戻りであることをガブリエルは知らないし、彼女は時戻りの運命に抵抗している。


さらに前世の時にフィファが死んだ原因がガブリエル本人は知らない。


彼女に嫌われているのはわかっているがその理由は知らない。


・・・でも時戻りの話はできないな。


もし時戻りの話をすれば私の秘密もばれてしまうのも嫌だ。


「フィファがお前を苦手にしているのは、先にも話したけどお前の態度が原因だと思う。そもそも俺は何もしていないし、フィファが俺に好意があるかどうかも俺は知らない」


「でも、フィファはお前が好きだと思う」


「だったら、それでいいの?」


「えっ?」


ガブリエルが調子のはずれた声を出した。


「お前、フィファが好きなら自分をうまく見せようと思わないの?」


「いや・・・だって・・・」


「お前、そんなんじゃずっとフィファに振り向いてもらえないぞ」


「それは嫌だ」


「そう思うなら、自分を磨けよ。それしか方法はないと思うぞ」


これが恋に落ちた者の姿か。


あのガブリエルがここまで戸惑わせるとは・・・。


フィファも罪深いな。


「少しでもフィファのことを思うのなら頑張れよ」


なんで、私がガブリエルを応援している?


ガブリエルが嫌いなのに私自身が甘くなっていることがおかしく思ってしまう。


「そうか、そうだよな」


ガブリエルの気持ちに元気が出る。


「俺、頑張るよ」


「ああ。頑張って」


私は苦笑を隠しながら笑みで応じる。


ガブリエルは話を終えるとその場を駆け足で走り去っていった。


・・・なんか違う気がする。


ガブリエルの様子を見て私は色恋沙汰が面倒なものだと思った。


「話は終わったかい?」


また、相手にしたくない人が声をかけてきた。


舌が蕩けそうな香りとその声で誰かすぐに理解した。


声の方に振り向くとそこにはグライシンがいた。


「いやね、君は結構はっきりと物事を言う人なんだ」


グライシンがクスクスと笑う。


「ねえ。フィファって誰?」


この人も変わっている。


私とガブリエルの話を聞いていたのに、フィファの話を聞いてくる。


この人も色恋沙汰が好きなのかもしれない。


本当にどうしてこんな時にこういう人が絡んでくるんだろう。


「そんなこと聞いてどうなの?君には関係ないでしょ?」


私は冷ややかな声で返す。


グライシンがどうしてフィファを気にするのかわからない。


彼女のことを聞くのさえ、私に対して失礼だと思ってしまう。


「そんなこと言わないでほしいな」


グライシンは相変わらず笑みを浮かべたままだ。


「君とガブリエルって彼の間にそのフィファって女の子がいるって面白いじゃないか」


「それって考えすぎでしょ」


この人は何を言いたいのか。


フィファのことを知っても何もある訳でもないだろう。


私はより戸惑いを覚える。


するとグライシンは私の近くに寄ると耳元で呟いた。


「<時戻り>でしょ、君も?」


「なっ!?」


私は思わずグライシンを見やる。


驚きを隠す暇もなくその瞬間だった。


グライシンの顔が私に一気に近寄るとそのまま口づけをした。


あの甘い香りが媚薬のように口元にも漂う。


しかもグライシンは舌まで入れ込んできた。


・・・こいつ!!


私はグライシンを突き飛ばす。


「お前・・・いい加減にしろよ」


私は男に口づけされた怒りとグライシンの妖しさに怒りを覚える。


「やっと感情を出してきた」


グライシンは私の反応に満足していた。


「思った通りだ。君は<時戻り>だね」


<時戻り>の言葉が頭の中で重複して響き渡る。


何故、グライシンは私の秘密を知っている?


私の頭の中はより混乱する。


「・・・お前、何者なんだ?」


私はさらに警戒を強める。


グライシンは何を知っている?


私は心を落ち着かせようと躍起になる。


「同類」


嫌な予感がした。


その答えは・・・まさか・・・。


私の胸が否応なしに高まる。


「君と同じ<時戻り>さ」


グライシンが自分の胸に手を置く。


「僕も君と同じあの場にいた一人さ。でも君は知らないだろうね。僕だって君のことはあの場所で初めて知ったから」


「断罪の場にいたのか?」


あの断罪劇が脳裏によぎる。


ガブリエルに斬られて場所や王子に口づけされた頬が痛くなる。


「ああ。だから君に何があったかも知っているし、むしろ、君がガブリエルとあんな話をするとは思わなかったよ。でも、これで確信できた。君が<時戻り>だとね」


グライシンは嬉しそうにしている。


「どうしてそんな話をするのか気になるようだね」


「当たり前だろ」


「それもそうか・・・僕だけ何があったか教えないのはおかしいか」


グライシンは私にまた近づく。


「だって、僕はある貴族の令嬢だった」


「令嬢?」


グライシンが何を言っているかわからない。


「僕は<時戻り>のせいで性別が変わってしまったんだ」


「なんだよ、それ・・・」


また、私は驚愕してしまう。


駄目だ。


理解が追いつかない。


時戻りの影響は性別にまで関係してくるのか。


「おいおいと君には私の正体は教えていくよ。でも、今じゃない。数年後に君が王都に来た時まで楽しみにして欲しいね」


「もし王都へ来なかったらどうするんだよ?」


「君は必ず来るよ。君は運命に抗うために生きているんだろ?」


グライシンの言葉がさらに私の胸を貫く。


そんな私を見て満足したのか、グライシンは「初めてをもらってごめんね」と言い私の前を去った。


私はグライシンに口づけした場所を拭う。


初めての口づけなんてどうでも良かった。


前世で経験しているからそこまでのダメージはない。


それよりも・・・それよりもだ。


ここにもまた一人、私と同じ道を歩んだ人がいたことが驚きだった。


そればかりか、グライシンは性別が変わって時が戻っていた。


グライシンは女性から男性として生きてきたと言うことになる。


もしそれが本当ならグライシンの人生は私の予想もしないものになる。


だから私に接触してきた。


私が本当に<時戻り>かどうか。


私が<時戻り>と確証を得た今、その後はどうするのか・・・。


まだ、グライシンの思惑は予想できない。


一つ言えるとするなら、グライシンも命に抗うために生きていると言うことだ、


そして、フィファにグライシン以外にも<時戻り>がいてもおかしくない。


その時、彼らは私とどう接すればいいか。


私はただ困惑するしかなかった。

〇登場人物


・グヤコールス・ペパリッチ

この物語の主人公です。

グライシンからとんでもない秘密を聞いて動揺してしまっています。


・ガブリエル・スプリンゴラ

主人公に敵対心を抱いていた青年です。

今回の大会で初めて自分の弱さを知り反省しています。


・グライシン・フェネシン

隣国の留学生です。実は彼も時戻りでした。

しかも前世は女性と言う事実を主人公に伝えてきましたがその狙いとは?

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