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第21話 14歳/決勝

第21話となります。

ご意見ご感想などお待ちしております。

いよいよ私は出番を迎えた。


まず、準々決勝の対戦相手は私よりも背が低いが筋肉質の体格の持ち主だった。


考えてみれば予選を突破してきた相手だからこれまでの予選とは違いそれなりの実力を持っている相手だと分かる。


ただし、相手の剣の構えを見ればまだ実戦慣れはしていない。


片手で剣を持ちながら肩まで水平に上げて剣先を出す。


この国では定石の構えだったが、対戦してきた多くの人たちは真っ直ぐに構えるものの実際は剣が不安定でふらふらと揺れていた。


つまりは構え方に均衡がとれていない証拠であり、戦い慣れしてた私やグライシンと雲泥の差だ。


グライシンの構えは重心がしっかりしているので下半身の動きも自由が利く。


当然、私は決勝で当たるであろうグライシンの前で考えた技を出すつもりはないので選会と同じ戦い方をすることに決めた。


私と対戦相手の試合が始まる。


やはりと言ったところか。


対戦相手は実戦経験がないので攻撃を優先して私に向かってきた。


走りながら剣を振ってくる対戦相手。


私はその剣を受け止めると思いっきり前に押し出した。


対戦相手はバランスを崩したところで私は側面を剣で薙ぐと対戦相手は腹部を押さえながらその場に膝を崩した。


「そこまで!」


立会人の声と共に私は勝利を収めた。


この後の準決勝も私は同じ戦い方をすると相手から勝利を収めて決勝へと駒を進めた。



そんな中、私が決勝へ行く前にガブリエルとグライシンの試合が行われた。


私はもちろん二人の試合を見学した。


当然、グライシンの戦い方をより知っておきたかったからだ。


ガブリエルにも別の意味で期待をしていた。


私としてはガブリエルがこの試合に健闘してもらってグライシンンの戦い方を長く観察させて欲しいと思った。


だが、ガブリエルは残念ながら期待外れだった。


ガブリエルは相変わらず大声を上げながらグライシンに突進していった。


ガブリエルが突きが得意なのは理解できるがあまりにも剣術としては隙が大きすぎた。


グライシンは自らの剣を下から上に振り上げるとガブリエルの剣が宙を舞いながら遠くへ飛ばされた。


そして、逆にグライシンの突きを喰らったガブリエルが試合場の外へ吹き飛ばされた。


ガブリエルは強烈な突きで呼吸ができなくなりその場で蹲ってしまった。


「それまで!」


立会人がグライシンの勝利を宣言する。


彼の圧倒的勝利だ。


そして、彼がこれまでどんな鍛錬を積めば生まれるのかそちらも気になる。


やはり、グライシンは強いのだと改めて私は実感した。


・・・やっぱしダメか。


その反面、少しでもガブリエルに期待した自分が愚かだった。


ワンパターンな攻撃しかできないなんて。


こんな奴に私が斬られたのかと思うと悲しくなってくる。


癪に障るので後でフィファに手紙を送る時に彼女に教えてやろう。


グライシンは礼を言うと試合場から離れた。


相変わらず落ち着いているのだが、周囲にわからないように私を見るとウインクをした。


思わず鳥肌が立ってしまう。


あの耳元での口づけと言い、私に秋波を送るのは止めて欲しい。


・・・もしかして私はその手に好かれるのか?


それはさすがに・・・それ以上は考えるのは止めよう。


試合に集中しよう。



いよいよ決勝戦となり、私はグライシンと対戦することになった。


私たちが試合場で対峙すると、グライシンが「よろしく」とさっそく挨拶をしてきた。


私も「はい、こちらこそよろしく」と軽く返答をする。


観客にはべラック先生やファートマン団長がいた。


二人とも身振り手振りで何か楽しそうに話をしていた。


その奥では何故かガブリエルもいる。


グライシンに負けた影響か、私を睨むことを止めて試合が始まるのを待っている。


他の参加者たちも同様に私たちの試合を見学に訪れていた。


「構え!」


立会人の指示の元、私とグライシンはお互いに向かい合うと剣を構える。


私はいつものように上段で剣を構える。


べラック式剣術の構えと言うべきか。


対するグライシンは予選と同じように右下に剣先を向ける独特な構え方だ。


その構えを改めて見るとグライシンが場慣れしているのが分かる。


「始め!」


立会人の合図と共に試合が始まった。


私はべラック先生の言葉を思い出す。


<彼と戦う前に答えを出なさいといけないんですね>


その答えをここで証明する。


私はさっそく動いた。


私は迷う事なくグライシンに向けて剣を振り落とした。


外から見れば単純な攻撃だと思うだろう。


でも、狙いは違う。


グライシン本人にではない。


私の狙いはグライシンの持つ剣だ。


そこで彼の握力に少しでも奪う。


乾いた音が試合場に響くとグライシンが私の剣を受け止めていた。


一瞬だが彼の顔が歪むのを見逃さない。


ここから私とグライシンの鍔迫り合いが始まった。


私が上から押すとグライシンも下から押す。


だが、私の方が力が強いのでグライシンの体は少しずつ後ろへと下がっていく。


そのたびに二人の藁の剣がミシミシとねじれる音がする。


「驚いたね。私の剣を狙うなんて」


不意にグライシン・フェネシンが私に声をかけてくる。


「これでも打ち込みには慣れているもので」


私の狙いは間違っていなかった。


「僕に口づけをしたお返しだ」


「それほど私の行為が良かったですか?」


「女性だったらね」


私はさらに押し込むとグライシンの膝が地面についた。


これで先手を取った。


でも、油断はしない。


きっと、すぐにグライシンは反撃に転じて来る。


「では、これはどうですか?」


グライシンが落ちた膝を起こすと私の剣を滑らすように外すと私の体勢を崩そうとする。


私は体勢を崩すことなくグライシンの剣を動きを追うと、私と彼はバインド(剣が交差)させたまま試合場を四方八方に走り回る。


お互いが攻撃をさせまいとするたびに、私とグライシンは肩をぶつけ合ったり突き飛ばそうとしたりした。


それでもどちらも体勢を崩さないのは鍛錬の賜物だろう。


私も隙あらば攻撃に転じようとするのをグライシンはそれを防ごうとするのでバインド(剣が交差)は続いていた。


この状況が終わる時が次の攻撃の切り替えとなる。


当然、グライシンも同じ考えのはず。


ここからは技量比べだ。


私とグライシンは走るのを止めると、私はすぐに剣を袈裟斬りで上段から下段へ振り落とした。


その攻撃をグライシンは剣で受け止めずに上半身のみで避けると、今度は私に向けて同じように上段からの攻撃を加えた。


私もその攻撃を上半身のみで避けるとさらに逆袈裟斬りで剣を振り上げた。


これもグライシンに躱されると彼も同じく逆袈裟斬りで反撃する。


私もその攻撃を躱す。


これ5回ほど続くと私たちは一旦、距離を置いた。


私とグライシンはお互いに剣を向け合ったまま乱れた呼吸を戻すことに努める。


これほど剣を躱し続けたのは初めてだ。


「なんだよ、あれ」


「やばくないか」


観客から私たちの戦いに感嘆の声が上がる。


だが彼らの表情を見る余裕はない。


隙を作ればグライシンに有利になる。


すると私はグライシンの呼吸はまだ乱れていることに気付く。


今ならあの技を使うチャンスだ。


私は勝負に出ることを決めた。


・・・ここで決める。


私は剣を両手で握ると剣先を前へ水平へ向けて構える。


グライシン・フェネシンも右手で剣を持つと左手を胸元に沿える。


彼の呼吸はまだ乱れている。


・・・今だ!


私は上そのままグライシンへと突進した。


完全な突きの体勢だ。


グライシンは私の攻撃に対してそのまま素早い動きで私の突きを躱そうとする。


・・・ここだ!


私は突きの寸前に背を向けながら大きく回転する。


私の予想もしない動きにグライシンの動きが鈍くなる。


私の剣は回転の際に一瞬だけ姿を消す。


そして、両手から右手に持ち替えた剣を体の回転を加えたまま水平に薙いだ。


「はっ!」


私の剣がようやく視界に入ったグライシンがすぐに剣を受け止めようとする。


だが、私の剣の動きの方が早かった。


「しまった!」


グライシンが叫んだ瞬間、私の剣が彼の胸部に打撃を与えた。


グライシンはその場で唖然としたまま立ち尽くす。


「なに、その技?」


グライシンは剣を振り終えた私を見ながら呟いた。


「それまで!」


立会人が声を上げる。


「勝者、グヤコールス!」


この瞬間、私の勝利が宣言された。


「やった」


私は思わず声を出す。


まさかこんなにうまく自分の編み出した技が決まるとは思わなかった。


それは大会に優勝したよりも嬉しかった。


自分が剣術使いになる一歩をようやく踏み出せたと実感できたからだ。


「ほら、二人とも試合が終わったから挨拶をしなさい」


立会人に促された私とグライシンはすぐに試合後の挨拶をした。


挨拶が終わった後、グライシンはまだ私の技に驚いているようで胸を押さえたまま立ち尽くしていた。


「ねえ、君はいつこの技を習得したんだい?」


グライシンは私に尋ねてきた。


「昨日、考えた」


「昨日ってそんな短期間で?」


「うん」


「君は凄いね」


グライシンは私の話を聞いて笑みを浮かべる。


色気のある微笑みがそこにある。


「僕を負かせたのは君が初めてだよ」


グライシンが握手を求めてきた。


私も素直に握手に応じる。


「僕はさらに君に興味を持ったよ。今後が楽しみだ」


グライシンは私を抱擁した。


また舌が蕩けそうな香りがする。


「いつか君を手に入れるためにね」


私は彼の言葉に目を大きくしてしまう。


グライシンは誰にも見えないよう私の耳たぶに口づけをしたのだ。


「期待しててね」


そう言うとグライシンは颯爽と会場を後にした。


なんでそんなことをするかな。


私はグライシンに触れられた耳たぶを触る。


私の勝利の余韻はどこかに消え去ってしまった。


変な人に目をつけられてしまった。


頭が痛くなりそうだ。


そして、さらに私の心を揺さ振る出来事が待ち受けていた。


私は一番会いたくない人と再会してしまうのだ。

〇登場人物


・グヤコールス・ペパリッチ

この物語の主人公です。

同性に好かれるタイプなのかと悩んでいます。

大会の決勝でグライシンを破り優勝しました。

ただ、この後に時戻りの影響を知ることになります。


・グライシン・フェネシン

隣国の留学生です。

主人公が認める強さの剣術使いです。

決勝で主人公と死闘を演じました。

どうも主人公に興味(?)があるようです。


・ガブリエル・スプリンゴラ

好きな女の子を奪われたと思い主人公を嫌っています。

準決勝でグライシンに負けた上、主人公の強さと自分の弱さを知りショックを受けています。

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