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第16話 フィファレス・ローランズの話/その4

第16話となります。

これで一度、フィファの回は終了となります。

次回からグヤコールスの回に戻ります。

ご意見ご感想などお待ちしております

私が送った手紙はグヤコールス君を動かした。


グヤコールス君は私の意図を感じ取ったようで、学園内で私の存在を探し始めていた。


もし彼が時戻りでないなら私の存在を探そうとはしない。


私の手紙も無視するだろう。


でも、グヤコールス君は手紙の主である私を探そうと学園内を一人で歩いたり放課後遅くまで教室や図書室に残ったりした。


グヤコールス君は私の意図を察してくれていると思うと嬉しくなる。


だから私は一刻も早く彼と接触しようとした。


でも、そんな時に限って私の邪魔をする人が現れた。


私がグヤコールス君に接触しようとするたびに、いつも彼の側に女の子がいた。


・・・エミールさん。


私はその人の姿を見て驚いてしまった。


前世でグヤコールス君の元婚約者だったエミール嬢が何故か彼の側にいたのだ。


それも私が接触しようとするたびに彼女はグヤコールス君と一緒にいることが多かった


当然、私は焦った。


秘密を誰も知らないようにしているのに、どうして彼女は私の邪魔をしてくるのか。


・・・もしかして、彼女も時が戻ったの?


もしそうなら彼女はグヤコールス君と元の鞘に収まりたいのかもしれない。


あれだけのことをグヤコールス君にやったのになんてワガママな人だ。


私は無性に彼女に腹が立ってしまった。


でも、焦っても仕方ない。


私はグヤコールス君と接触できる機会を待つことにした。


するとグヤコールス君がエミール嬢と一緒に市場へ行くと知った。


偶然にも私が廊下を歩いていた時にエミール嬢がクラスメイトにその話していたのを耳にすることができた。


私は自然な感じで立ち止まると靴紐が解けたのを結び直す仕草をしながら彼女の言動を注意深く聞くことにした。


「週末のお昼に彼と一緒にホットケーキを食べにいくの」


「良かったじゃない」


「でも、あの優等生をよく説得できたわね」


「だって、毎日根気よく誘ったのよ。彼だってさすがに折れるでしょ?」


「それは言えてる」


エミーナ嬢と友人たちはころころ笑いながら楽しそうに話を続けていた。


私は無言のまま立ち上がるとそのまま歩き出した。


その時、隣からは視線を感じていた。


・・・エミールさんは私を見ているかもしれない。


いけない。


私は焦る気持ちを隠しながらその場から離れる。


そして、廊下の角を曲がると足を止めた。


・・・もう大丈夫ね。


でも、あの視線は確実にエミール嬢のものだと私は思った。


女同士だからこそ、わかることもある。


エミール嬢の視線から逃れて安心した私は息を整えながら教室へ戻った。



週末になった。


私は家の馬車に乗ると先回りしてグヤコールス君とエミール嬢が訪れるカフェの近くで待機した。


カフェが営業を開始してからしばらくして二人はカフェにやってきた。


私は馬車の中から二人の様子を見つめる。


エミール嬢はメニュを見ながら笑顔でグヤコールス君と話をしていた。


・・・嫌な感じね。


二人の姿を見れば誰だって恋人同士に見える。


グヤコールス君もグヤコールス君だ。


嫌ならちゃんと断ればいいのに。


でも、彼は私と接触するために無理をしていると私は考え直した。


二人がカフェに入店すると、私は家宰を使ってカフェの従業員にグヤコールス君にメモを渡すようにしてもらった。


「お嬢様、グヤコールス様にメモを渡すことができました」


家宰が私に経過を報告してくれたので私は二人が解散するまで馬車の中で待ち続けた。


そして、グヤコールス君と接触する機会が訪れた。


グヤコールス君はエミール嬢と別れた後に私が指定された路地裏までやってきた。


「グヤコールス・ペパリッチ」


私はグヤコールス君に声をかけた。


彼は私の方に顔を向ける。


「やっと会えたわ」


そう言うと彼は頷いた。


彼も私に会いたかったのだとすぐにわかった。


「グヤコールス君って呼べばいいかしら、時戻りさん」


私はさっそく率直に尋ねることにした。


彼がどういう返しをするのか期待する。


「何の事かな?」


グヤコールス君はわざとらしく疑問を呈してきた。


「隠さなくても大丈夫よ。私もあなたと同じ<時戻り>だから」


「じゃあ、証拠を見せて」


そう返してくるのね。


私は楽しくなってきた。


「そうね、証拠は必要よね」


私も本題に入るとしましょう。


「こう言えばいいかしら、あなたの断罪劇を見たと」


私はさっそくあの日の断罪劇の話を切り出した。


「断罪劇って何?」


「へえ~、断罪劇ってだけじゃいけないんだ」


なかなか彼は心を開いてくれない。


「それくらい否定しないと相手を信用できない、あなたのその気持ちはわかるわ」


私は自然と右手を当てるとグヤコールス君を下目使いに見ながら頷いた。


「これならどうかしら、パルダビュー・アリンガローサ王子はあなたに想いを寄せていたこと」


これでどうかしら?


私が笑みを浮かべるとグヤコールス君は目を大きくして驚いた。


「ほら、反応した」


私の予想通りね。


あなたがこの名前を言えば必ず反応すると思った。


「あの断罪劇の場にはあなたの婚約者だったエミーナ・ナイトレイや王子の取り巻きたちもいた。あなたを斬ったガブリエル・スプリンゴラもね」


「そこまで覚えているんだ」


彼はさすがに観念したようだった。


「ええ」


「でも、君の事は覚えていない」


「そうね。でも、関係者なのは事実よ」


「君は誰の知り合いなんだ?」


そう尋ねられるた私は「ガブリエル・スプリンゴラ」と答えた。


予想通り、グヤコールス君はさらに驚いた。


「どういうこと?」


「あいつは私の婚約だったわ」


「あいつ、婚約者がいたんだ」


「ええ、面白いでしょ?」


私も今更ながらこの事実には笑うしかなかった。


私だってあいつと婚約していたことが黒歴史だし考えたくもなかった。


「中等部であなたの姿を見た時、正直言って驚いたわ。だって、断罪劇の頃よりも体格が数段良くっていたんだもの」


「これでも自分の身を守るために剣術を学んでいるんでね」


「でしょうね。そんな動機がないと剣術を学ぼうなんて思わないもの」


私の推測は正解だった。


彼も断罪劇から逃れようともがいている。


「だから、私はあなたを試すことにしたわ。あいつを使って」


「もしかしてガブリエルと手合わせのことか?」


「ええ。その手合わせをあいつに唆したのは私」


「どんな理由をつけたんだ?」


「あいつに言ったのは<グヤコールス・ペパリッチがカッコいい>、ただそれだけよ。でも、あいつは私があなたに心を寄せていると思ってあなたに絡んだわ」


私はそうは言うもののさすがにグヤコールス君には申し訳ないと思った。


いくら時を戻ったかどうか確認するためとはあいつを使って挑発させた。


私も酷い女だ。


「まだ何も知らないガブリエルが可哀想だ」


グヤコールス君は苦笑している。


「おかげであいつはあなたに負けて逃げた。でも、まさか王都へ転入するとは思わなかったわ」


「それは僕も同じさ」


そこは私もグヤコールス君も同じ気持ちだった。


「あなたには申し訳ないことをしたわ。だから、あなたに会って話したいことがあったの」


やっと本題に入れる。


私が彼に伝えるべきことを話せる。


「それは何?」


「断罪劇の後のこと」


これは私の義務だ。


私はグヤコールス君に断罪劇の後のことを話した。



パルダビュー王子の暴挙によって私や私の家族が死を賜ったこと。


私が十二歳の頃に時が戻ったこと。



私の話を聞いたグヤコールス君は顔を歪ませた。


「最初はね、これは夢だと思って信じなかったけど現状を把握してたら私は時が戻ったと確信したわ。だから私はこう思ったの、あなたやガブリエルに関わらないようにしようって。あなたの断罪劇に関わらないように生きようと思った。でも、時戻りの影響は私の想定の超えていたわ」


「何があったの?」


「あいつ・・・ガブリエルとの出会いが早くなったことね。本来なら王都の高等学園で出会うはずがこの中等学園で会うなんて思いもしなかったわ」


私は嫌な気分になりため息をついた。


「それだけじゃない。まさかあなたの婚約者だったエミーナ・ナイトレイまであなたの側にいるじゃない。何この状況って思ったわ」


それが今でも疑問に思う事だった。


これも時が戻った影響だと思えてならない。


「僕はどうなの?」


「あなたのことは中等学園から知ってたから学園で話さなければいいと思っていた」


「確かに接触しなければいい」


「そう。でも、ガブリエルが問題だった」


「あいつが?」


「ええ。性格がさらに捻くれていたわ」


「それはどういうことかな?」


「時戻りの前よりも嫉妬深くなっていたのよ。私がクラスメイトの男の子と話すだけでも怒るし、私の兄と話すだけでも不機嫌になるから呆れてしまったわ」


「で、ガブリエルは<時戻り>ではなかったのか?」


「ええ、違っていたわ。私が様子を見ててもそんな感じではなかった」


私は続ける。


「でも、まさかあなたのことを褒めただけで手合わせを申し込むなんて思いもしなかった」


「それは僕もさ。おかげでいい迷惑を被った」


「だから、そこは謝らせて」


私は素直にグヤコールス君に謝罪した。


誰がどう見ても私が悪い。


「いいよ。むしろ、こっちが感謝している」


「そうなの?」


私は少し驚いてしまう。


「うん。だって、あいつに復讐できたからね」


そうか、グヤコールス君もあいつのことが嫌いなのは同然だ。


あいつはグヤコールス君を直接手を下した罪人。


時が戻っても許せるはずはない。


それは私も同じ。


「それで君の望みはなんだ?」


「共犯ってところかしら」


「共犯?」


「ええ。私はガブリエルとの婚約を避けたい。きっと王都にあいつがいても家の事情で婚約するかもしれないし」


私はあいつとの婚約を避けたいと思っている。


「じゃあ、何をすればいい?」


「そうね、私はガブリエルの情報をあなたに与える。あなたはエミーナの情報を教えて」


私はエミール嬢が時戻りかもしれないと疑っている。


可能な限り、彼女の情報は手にしておきたかった。


「それだけでいいの?」


「ええ、まだ私たちは十三歳よ。できることは限られているわ」


私たちはやっと共存関係になった。


私とグヤコールス君は誰にも知られないように密かに手紙でのやり取りで情報交換をすることを決めた。


「そうだ、君の名前を聞いていない。君の名前は?」


不意にグヤコールス君が私の名前を聞いてきた。


そう言えば私は名前を言っていなかった。


失念していたのが恥ずかしい。


「フィファレス・ローランズ。フィファでいいわ」


私が名前を告げるとグヤコールス君は頷いてくれた。


こうして私はグヤコールス君と共存関係を結ぶことに成功した。


私にとってこれほど嬉しいことはなかった。



その後は私はグヤコールス君にあいつの情報を知らせた。


ガブリエルはパルダビュー王子と知り合い取り巻きのようになっていた。


・・・時間の流れはなかなか変わらないのね。


ガブリエルは一体何を考えているのかしら。


グヤコールス君への復讐がそうなら別にパルダビュー王子と関わる必要なんてないと思う。


でも、あいつはパルダビュー王子と一緒にいる。


すでにあいつはパルダビュー王子に恋心を抱いているかもしれないと思うとぞっとしてしまう。


一方でグヤコールス君もエミーナ嬢の情報を送ってくれた。


エミール嬢は相変わらず彼に積極的に関わりたいようだ。


もし彼女が時が戻っているのならグヤコールス君に罪を償いたいと思っているかもしれない。


でも、今は逆効果だと気付いていないと思う。


グヤコールス君の心はまだ癒えていないし、断罪劇がない時までは彼は彼女に心を許すはずもない。


そんなことも考えられないエミール嬢が憐れだと私は思わない。


むしろ自業自得だと思うほどに。


私は相変わらず捻くれている。



私が十四歳になった頃、グヤコールス君は王都へ向かうことになった。


王都で開催される剣術大会に参加することになったのだ。


あいつからも私宛に手紙が届いていた。


あいつも剣術大会に出て優勝して帰ってくると書いてあったが、私は全然彼に期待していない。


さっさと負けて欲しいと思った。


だから私はグヤコールス君に手紙を送った時にこう付け加えた。



<ガブリエルを負かせてきてね>



これが私なりのグヤコールス君へのエールだった。


そして、私はグヤコールス君が帰るまで大人しくするつもりだった。


こんな時こそ油断はできない。


特にエミール嬢は何かしらのリアクションを起こすかもしれない。


でも、エミール嬢が私の遥か予想もしない方向へ舵を切ってきた。


完全に油断していた私はとんでもないことに巻き込まれてしまうことになったのだ。

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