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第13話 フィファレス・ローランズの話/その1

第13話となります。

今回から15話までフィファレス・ローランズの時戻りの前の話となります。

ご意見ご感想などお待ちしております。

私は婚約者だったガブリエルが大嫌いだ。


でも、誰にもその理由は言っていない。


もしその誰かにどうしてガブリエルが大嫌いかと聞かれても言えるはずもなかった。


私、フィファレス・ローランズは<時戻り>の者だから。



前世で私が覚えているのは二十歳まで生きたと言う事実だ。


私はローランズ家の一人娘として生を受けてから家族の愛を受けて育った。


そんな私たちに不幸が訪れたのは婚約者だったガブリエル・スプリンゴラが起こした事件が原因だった。


その日、私は王都で行われた高等学園の同窓会のパーティー会場にガブリエルと参加していた。


私たちはこのパーティーが終われば三か月後には結婚式を挙げる予定だった。


ただ、私は彼の態度に不安に駆られていた。


何故なら私はガブリエルの様子に疑念を抱くようになったからだ。


ガブリエルとは幼少期からの幼馴染であり、中等学園に入る頃にはお互いの両親の元で婚約を結んでいた。


ガブリエルは性格に多少だが難があった。


自分より立場が弱い者や気にいらない者には冷たい態度を取ることがあった。


私に対しても優位な立場にいたいのか、私が彼より成績が良いと拗ねてしまう。


なにより私に想いを寄せる男子や憧れを抱く女子の存在をすると近寄らせないばかりか高圧的に振舞った。


ガブリエルの嫉妬は年々酷くなっていった。


やがてガブリエルはパルダビュー・アリンガローサ王子と出会ったことで完全におかしくなってしまった。


彼はパルダビュー王子と同じクラスメイトになると取り巻きの一人となり王子に付き従った。


ガブリエルは得意絶頂だったのかもしれない。


王子の側近のような立場になれたのだから。


そのせいで彼は私や私の家族にまで見下し軽んじ始めた。


ガブリエルの両親も彼を諭したが彼は聞く耳をもたなかった。


それと共にガブリエルが王子と共にある人に言いがかりをつけてつきまとっていると知った。


その人の名前はグヤコールス・ペパリッチ君。


グヤコールス君はこの国の農業に従事する豪農であり評判の良い一族の次男だった。


グヤコールス君も大人しく将来はこの国の文官として働くと聞いていたし素敵な婚約者もいると聞いていた。


私の印象は悪くなかった。


そんな彼にどうして王子やガブリエルがつきまとうのか私には理解できなかった。


私はガブリエルにその理由を尋ねると彼は激怒して私の頬を叩いた。


私は茫然自失となった。


私がガブリエルに暴力を振るわれたのが初めてだった。


彼は私を睨みつけると「あの男は王子の愛を理解していないんだ!」と訳の分からないことを言った後、その場から離れていた。


・・・王子の愛を理解していない?


その時の私には理解できなかった。


だが、このパーティーで私はその真意を知った。



パーティーの途中でガブリエルは「少し離れる」と言って王子や取り巻きたちと共に奥の控え室へ消えていった。


その様子を見ている私は一人の女性がいるのに気付いた。


エミーナ・・ナイトレイ嬢だった。


何故、彼女がいるのかわからなかった。


彼女はグヤコールス君の婚約者で今日のパーティーは彼にエスコートされるはずなのにどうして彼女がここにいるのか?


周囲を見回してもグヤコールス君はいない。


私は一気に怖くなってしまった。


・・・これから何か起きるかもしれない。


不安に駆られた私はパーティー会場から退場しようとした。


でも、意志に反して体がどうしても動かなかった。


そして、あの断罪劇が始まった。


パーティーの後半になり進行プログラムでは王子からの挨拶が行われる時間帯になった。


すると王子はガブリエルやエミーナ嬢、取り巻きたちを連れて私たちの前に現れるとグヤコールス君を呼び出した。


グヤコールス君は絶望した表情を浮かべながら王子たちの元へ行った。


その様子に私は異様な違和感を感じた。


そもそもどうしてエミーナ嬢が王子の隣にいるのか?


ガブリエルや取り巻きたちがどうして剣を携帯しているのか?


全く理解が追いついていない私の後ろでは同級生たちが口々に、


「エミーナさんはどうして王子の隣にいるんだ?」


「ここはパーティー会場なのにどうして武器の所持が許されているのかしら?」


と私と同じ疑問を口にしていた。


私は言い知れぬほど嫌な予感がした。


王子はグヤコールス君に対して婚約者のエミーナ嬢に暴行を働いたと告げた。


・・・あれ、エミーナ嬢はグヤコールス君の婚約者ではなかったの?


私は唖然としてしまった。


周囲の同級生たちも「嘘でしょ?」とか「王子は何を考えているの」と言っていた。


グヤコールス君は毅然とした態度で王子の断罪のすべてを否定した。


そして、運命の瞬間が訪れた。


「無礼者!」


突然、ガブリエルが抜刀して前に飛び出すとグヤコールス君に剣を突き刺さした!!


グヤコールス君は胸から血を流しながらその場に倒れた瞬間、周囲にいた皆があまりのことに悲鳴を上げた。


私は暴挙に出たガブリエルに目を向けた。


彼は倒れているグヤコールス君を見ながらが笑みを浮かべていた


「ざまあみろ」


その言葉が聞こえた瞬間、私はその場に崩れ落ちてしまった。


あまりにも酷すぎる。


これが私の婚約者かと思うと悲しみしか感じなかった。


でも、ここからが私や私の家族の悲劇だった。


王子がグヤコールス君に駆け寄り彼を介抱すると会場を警備する衛兵たちにガブリエルの拘束を命じた。


「私は王子のために正義の鉄槌を下したのですよ!!」


「黙れ!貴様は私の愛する者を害したのだぞ!!」


私は目の前で行われいる二人に会話についていけなかった。


「くそ、お前のせいでグヤコールスを塔へ幽閉できなくなったではないか」


「そんな・・・私を抱いて下さったのにどうして・・・」


・・・抱いて下さった?


その時、私の脳裏にはガブリエルの言葉が蘇っていた。


<あの男は王子の愛を理解していないんだ!>


ああ、そう言うことなのね。


私はガブリエルと王子がが肉体関係にあったことを知った。


誰がどう優しく見てもガブリエルは嫉妬のあまりグヤコールス君を斬ったことになる。


いや、私は男に婚約者を寝取られた。


私はガブリエルがどんなに酷い態度を取ろうが彼を愛していた。


その愛も脆くも崩れ去ってしまった。


私は涙を流しながら王子たちの様子を見続けた。


王子はグヤコールス君の頬に口づけをしていた。


男が男を愛する。


そんなことが本当にあるのか。


私には理解できなかった。


「・・・許さない」


不意にグヤコールス君の声が聞こえた。


私は注意深く彼に耳を立てる。


「・・・お前を許さない」


「な、何を言っているんだ?」


「・・・お前のものに・・・お前のものになんか・・・なるもの・・・か」


グヤコールス君が王子を睨み付けたかと思うと急に体が沈み込んでしまった。


そして、彼の右手にあった銀色のブレスレットが外れて床に転がると私の前まで流れてきた。


・・・死んだ。


私は瞬時にグヤコールス君が亡くなったと気付いた。


・・・グヤコールス君。


彼は生気を失った瞳をその場に漂わせながら。


パルダビュー王子が涙を流しながら何度も何度もグヤコールス君の名前を叫んでいた。


私は床に落ちたブレスレットを手にした。


・・・どうしてこんなことに。


私はグヤコールス君のブレスレットを見ていると王子が急に顔を上げて私に目を向けた。


「衛兵、あそこにいる女も拘束せよ!女の家族もだ!後ろにいる奴らもみんな拘束して地下牢に入れるんだ!」


・・・嘘でしょ!?


唖然とする私は衛兵に拘束さてしまった。


銀色のブレスレットも王子に無理やり奪われてしまった。


「お待ち下さい!」


私は弁解をしようとしたが王子は聞く耳をもたなかった。


私は無理やり地下牢に入れられてしまった。


そして、この後起こる王子の暴挙に私は悲観しか抱くことができなかった。

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